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(仮)アルドの異世界転生  作者: ばうお
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451.バルザ part2

451.バルザ part2





空から後を付けていると、爺さん達の馬車は無事に王城の中へ入っていった。

ひとまずはホッとしたが、問題はここからだ。オレが王城の中へ入っていけば騒ぎになるのは確実で、爺さんの覚悟が無駄になってしまう。


万が一、そんな事態になったら、幾ら爺さんでもキレるのは間違いない。


「困ったなぁ。王城の中を歩き回るわけにはいかないし、局所ソナーも何度か打てば魔法使いに見つかるだろうし……」


そんなオレの言葉に反応したのは、意外な事にライラであった。


「私が王城へ忍び込む。アルド君のお祖父様は私が守る」

「忍び込むって言ってもなぁ……」


「以前にアルド君が教えてくれた。「木を隠すには森の中」って。メイドの服を着れば紛れ込めるはず」

「あ、なるほど。メイドに変装すれば、怪しまれないのか……。でも王城のメイドって地方の貴族の娘ばかりって聞いた事があるぞ。貴族の礼儀作法なんて知ってるのか?」


するとライラは真っ直ぐにに立ち、貴族の淑女と見まがうような美しい礼を見せつけてくる。


「貴族の礼儀作法は知ってる。だいぶ忘れてるけど……ぼそ」

「え? 何か言ったか?」


「ううん、何でも無い。これでアルド君のお祖父様を近くで守れる」


ライラの言葉は、最後が少し聞き取れ無かったが、王城のメイドとして問題無い振る舞いが出来るかもしれない。

本当はライラに危険な真似をさせたくは無いのだが、断腸の思いで言葉を吐いた。


「ごめん、ライラ……本当はお前を危険な目に合わせたく無いんだ……でもお祖父様もオレにとっては大切な人なんだ……頼んでも良いか?」


オレの思いとは反対に、ライラは頬を染め満面の笑みで返してくる。


「うん! アルド君の願いが私の望み。絶対に守ってみせる!」


本当に行かせて良いのか……不安と共にライラへ爺さんの護衛を託したのであった。






ライラへ忍び込んでもらうため、最低限に必要な事。それはメイド服を手に入れる事である。

どこかのメイドから剥ぎ取るか……時間が無い中で、恐ろしい考えが浮かんできた。


しかし、それを誰かに見られよう物なら、オレの評価は反逆者に変態が追加されてしまうのだ。

最悪、反逆者だけなら良い。しかし、変態は流石にマズイ! 後の子孫が「やーい、変態の末裔ー」と虐められてしまう!


悩んだ末に考えた方法は、酷くありきたりな物だった。

それは誰かが脱ぎ捨てた物を借りるのだ。当然ながら、王城のメイドが何日も同じメイド服を着ている事は無い。


であれば、何処かに洗濯物として、大量のメイド服が脱ぎ散らかしてあるはずだ!

脱ぎたてのメイド服……男のロマンに思わずニヤついてしまったが、今は頭を振って考えを振り払った。


「ライラ、何処かに洗濯物があるはずだ。それを少しだけ借りよう」

「分かった。洗濯物なら水場と相場は決まってる」


直ぐに3人で水場へ移動すると、篭一杯の洗濯物を持ったライラと同じ年頃のメイドを見つける事ができた。


「ボクが睡眠を撃ち込む。絶対にケガはさせない」

「頼む、アシェラ」


案の定、少女メイドを眠らせると、篭の中には沢山のメイド服がある。その中の1着をお借りして、直ぐにその場から逃げ出した。

少女をいきなり眠らせて、メイド服を奪うとか……うーん、やってる事は完全にアウト、真っ黒だ……


心の中で「これはお祖父様の護衛に必要だから」「やむを得なかったんだ」「ごめん、見知らぬ少女」「魅惑のメイド服、ゲットだぜ!」と言い訳しながら空を駆けていくのであった。






ライラへ爺さんの護衛を頼んで、既に1時間が経過している。オレはアシェラと共に王城の中で見つけた、物置に潜伏している最中だ。

待っているだけの時間は、1分1秒が考えられないほど長く感じ、ライラへ全て任せたのを後悔しそうになっている。


「アシェラ、ライラは大丈夫かな? やっぱり局所ソナーでお祖父様を見張った方が良かったんじゃ……」

「大丈夫。ライラを信用する。ライラなら絶対に上手くやってくれる」


アシェラの謎の自信はどこから来るのだろうか。

オレの中のライラは、たまに驚くほどの冴えを見せるが、基本的にはポンコツ少女だ。


眼を閉じると、ネコの着ぐるみを着て、手を振ってくる姿が浮かんでくる。

あれもカワイイには違い無いんだよな……全く興奮しないだけで……思考が逸れた。


こうしてオレは、自分で決めた事ではあるが、悶々とした時間を過ごす事になったのであった。



◆◆◆



私は今、アルド君のお祖父様を護衛するため、王城の中をメイドに変装して歩いている。

アルド君が一度だけ使った範囲ソナーでは、お祖父様はルード卿と一緒に客間にいると聞いた。


先ずはお祖父様を見つけないと……

なるべく堂々と、しかし目立たず。2つの相反する態度に気を付け、私は客間へと歩いて行く。


こんな時こそ、ここにいて当然と言う顔をしなければ。オドオドしていると返って危険を呼ぶ。

かつてリュート領にいた頃を思い出し、足の指から頭の天辺まで貴族の所作を心がけるのだった。



◆◆◆



客間へは驚くほど簡単に辿り着く事が出来た。当の本人である私が一番驚いているかもしれない。

途中で何人もの騎士やメイドとすれ違ったものの、誰も私を怪しむ者はいなかったからだ。


騎士達は酷く殺気立っており、城内よりも外へ……特に空への警戒を優先させているのだと思われる。

これは恐らくお祖父様が、先触れも無くいきなり王城へやってきた事が原因なのだろう。


騎士や魔法使いからすれば、アルド君が襲撃をかけるなら、空を飛んでやってくると踏んでいるのだろう。


「これならコッソリお祖父様を守れるかも……」


そう安心した所で、お供に2人の騎士を連れた、隊長らしき人物から話しかけられてしまった。


「そこのメイド。こんな所で何をしている。ここは危ないぞ。聞いて無いのか?」


マズイ……1人なら一瞬で意識を奪う事も出来ただろうが、3人ではそれも難しい。

どうしよう……少しの逡巡に、騎士は更に声を上げた。


「どうした? そもそもお前はここで何をしている」


何とか誤魔化すしかない。最悪は口封じ……命を奪っても良いのであれば、一瞬で片が付く……

剣呑な思考とは裏腹に、私は怯えた少女のフリで言葉を返した。


「き、騎士様……お、王城へは来たばかりで……迷ってしましました……すみません」


貴族の子女としての気品を意識しつつも、相手の反応を事細かく観察する……


「迷子だと? まだ王城へ上がったばかりか……指導役は何をやっているんだ。その見目だと、まだ成人して数年だろうに……全く。しょうがない、おい、この娘をメイドの宿舎まで送ってやれ」

「はっ、了解しました」


隊長らしき男が、私へお供の1人を付けようとする……善意ではあるのだろうが、ここは是が非でも断らなければ。


「き、騎士様の手を煩わせるわけにはいきません。我が家の家訓に反してしまいます。私はどうにか1人で宿舎まで帰りますので、お仕事へお戻り下さい」

「ここでウロウロされる方が困るのだがな。しかし家訓か……お前は何処の家の者だ? 子女にもそのような教育をするのだから、さぞしっかりした家なのだろう」


家……頭にリュート伯爵家の名前がよぎるが、口に出した途端、大問題に発展するのは目に見えている。咄嗟に私の口から出た家名は、リュート領にある騎士爵家の物だった。


「キートン……リュート領のキートン騎士爵家であります……」

「キートン家か! まさか同郷の娘だとは思わなかった。私もリュート領の騎士爵家の出なのだ。トールマン騎士爵家のフリードだ。サリア殿は息災か?」


マズイ! まさかこの隊長がリュート領の出だとは……口を封じるべきか……今なら3人の首を刎ねるなど造作もない。


「どうした? サリア殿に何かあったのか……む? お前の面影……何処かで……いや、そんなはずは……年が……」 


隊長は私の顔を覗き込み、訝し気な顔の後、驚きながら何事かを呟いている。


「ま、まさか……しかし、似すぎている……こんな事、あり得るはずが………………ら、ライラ様?」


特大の警鐘が私の中で鳴り響く。コイツ、何故や私の名前を……身元がバレたなら殺すのはマズイか? いや、即死させれば……でも確実に騒ぎになる……

驚くほどの速さで思考が回るが、結論を出せずに立ち尽くしていると、この男は更に口を開いた。


「ま、まさか、やはりライラ様? わ、私です。トールマン騎士爵家のフリードです。幼い頃、何度かお声をかけて頂いて、お茶を振舞ってくださった。覚えてらっしゃらないですか?」

「フリード?……あ、私が学生の頃、屋敷へ剣を習いに来ていた男の子……」


しまった! アルド君の妻として正体がバレたかと思ったら、リュート領の頃の知人だったのか……驚きで、思った事をつい口に出してしまった……しかし、吐いた言葉を無かった事になど出来るはずも無く……

どうしようか途方にくれていると、フリードはいきなり2人の騎士達へ命令を下した。


「お前達、持ち場へ戻れ。この方は私の知人だった。念のため私が宿舎へお連れする」

「よ、よろしいのですか?」「はっ、直ぐに持ち場へ戻ります」


「良い。早く行け。これは命令だ」


2人はフリードから離れ、お祖父様がいるだろう、客間の方へ歩いていく。


「ライラ様……そのお姿……まるで私が子供の頃 憧れた、あの頃のままです。いや、それ以上にお美しい。驚きました」

「……この事は絶対に秘密にして。でないとアナタでも容赦できない」


「分かりました……このフリード、リュート家とトールマン家に誓って、他言しない事を約束します」


フリードは片手を胸に当て、真剣な顔で誓いを口にする。そして一転、驚くべき事を話し始めた。


「ライラ様、お姿の事は興味が尽きませんが、今は良いです。それより、いつから王城で勤務されていらしたのですか? リュート卿の指示でしょうか? やはりブルーリング家を利用するために?」


は? 何を言ってる? お父様の指示? ブルーリング家を利用? 私の勘が、「話を引き出せ」と囁いている。

であれば、私が口にするのは一つしかない、


「……ええ、そうよ」

「やはりそうでしたか……ラーハルト様の時間は短い。本当はこんな事をしている場合では無いのに……」


え? 今度はお兄様? 何がどうなってるの?

私はフリードから全ての情報を引き出すため、言葉を選びながら会話を続けていったのであった。





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― 新着の感想 ―
おお、ほぼないものとして扱われていた過去が追いついてきたか そうだな、実家に挨拶してないもんな
ライラのポンコツ展開からの、うまく情報ゲット〜 災い転じて福となすみたいな?
このフリードが余計なことしなければ、ちょっとした駆け引きの後に薬が下賜される筈だったのに・・・
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