〜崩壊した東京でのんびり創作活動をたのしむ〜
グラフィティ。街中にスプレー缶で描くアート。犯罪だが、今の世界では関係ない。
姉にもらった黒のリュックサックいっぱいに詰め込んだスプレー缶。
運動靴にオーバーオール。インクだらけの姿で坂道抹茶は、かつて通学理に使っていたトンネルを作品化していた。
「よし!小さなトンネルだから半日でできた!今日は、襲われずにすみそうかな」
私に言わせると、
左側と右側で、絵のテイストが異なるのがポイントだ。
左は美術コンテストで一位をとってもおかしくないような上手な、つまりクソみたいな絵。むろんワザと描いた。
右は、ピカソ的爆発力のある作品。血が飛び散っており、中にキラキラした大きな目を、大きすぎる目を持った少女が手を挙げて大喜びしている絵だ。
題名「プラスの絶望、血の充実」
我ながら完璧すぎる!!
汗は出ていないが、「ふう〜」と額の汗をぬぐう動作をして、時計を見る。
「うわ、やば!もう17時なの?」
日が落ちるとゾンビの活動は大幅に上がる。
季節的に18時には日が沈むため、あと1時間ほどで安全エリアに逃げ込む必要がある。
ちなみに今日の家はまだ見つけてない。
確かに作品に没頭しぎたせいもあるが、元々抹茶は計画を練るのが大っ嫌いだった。
明日の目次やスケジュールを入念にねる先生、修学旅行にもしおりがあるし、テスト週間だって勉強の計画表を書かされる。
「自分が総理大臣なら、スケジュールなんてものは撤廃しよう」
総理大臣が義務教育の方針を変える権限を持っているのかは知らないが、前々からそう思っていたのだ。
世界崩壊後の、ゾンビランドになってまで“スケジュール”それから“計画”とやらに惑わされたくない。
とはいえ、いいかげん時間配分考えないと死んじゃうな。自殺は簡単だとして、絵を描けなくなるのは嫌なんだよなぁー。
よし、今度ワッフルウォッチを手に入れよう!
完璧な解決案を思いつき満足した抹茶は、
使い終わったスプレー缶をリュックにしまい、抹茶は今晩をどう生き延びるかを次は考えることにした。
「さてどうしようかなー。実家はままゾンビが入りかもしれないし、友達はいないし、知らない家に泊まる気分でもないんだよなー」
うん、そうだ。学校に泊まってみよう!美術部があれば、また道具が見つかるかもしれないし、ゾンビの世界で学校に寝泊まりってなんだかエモい。
そうと決まれば出発と言わんばかりに、ポケットに入れてあるカロリーメイトを頬張りながら、母校へと足をすすめた。