魔王の犯した罪と呪い
「唯1人とは一体?
当時、反乱を起こした魔族は皆殺しにあったのですか?」
エドの言葉にルイスは首を振る。
「私たちはそんなことはしていない。
彼らは皆殺しにあったのではなく生贄に捧げられたのだ・・・魔王によって」
「生贄とは?」
エドの問いにルイスは思い出すのも辛いという感じではあったが少しずつ語り始めた。
「その前に語らねばならぬのだが、魔族というのは種族では無いし亜人という表現も少し違う。
彼らは私たちと同じ人間だ・・・ただ一つ違うのは魔族というクラスとして産まれるということだ」
「それはシーフやアサシン、マーチャントといったものと同じということでしょうか?」
「そうだ。
正式にはイービルというクラスでそれはその地に住まうものにしかなれぬ。
身体能力が大幅に上がり、魔法の適性も高い万能クラスではあるが、代償として肌が紫色や青色に変色し、人によっては目が爬虫類のように縦長になったり翼が生えたりと身体の構造まで変わる。
これが彼らが人間でありながら亜人と呼ばれる理由だ」
とても信じられない話の内容にエドは目眩を覚えたような錯覚に陥る。
どうにか落ち着かせて話を理解するとある疑問が浮かんだ。
「それではターニャの母親もそのような姿をしていたのでしょうか?
失礼ですが魔王を倒しに行くPTにそのような人物が混じっていてはスパイを疑われるのでは?」
「いや、先程も話したように魔族というのはクラスの一つに過ぎない。
クラスチェンジをする事で魔族の特徴はほぼ見えなくなるほどに抑えられる。
私達が出会った時には既に彼女はイービルというクラスを極め尽くして別のクラスのレベル上げに邁進していたよ」
ルイスはその時のことを思い出したのか楽しそうに笑った。
「それは・・・正にターニャの母親といった感じがしますね」
「ああ・・・全く。
ソフィアとターニャ君は一度も顔を合わせた事はないはずだが本当によく似ているよ」
「一度も顔を合わせたことがない?
出産の時に一目見る事はあったのでしょう?」
「いいや、彼女はおそらく自分の娘を一度も見ずに死んだはずだ。
それが魔王の呪いであり、この街にダンジョンが出来た理由・・・ダンジョンとは一体なんなのかという問いへの答え。
そして、ダンジョンの中で産まれた少女ターニャをブレットが拾い上げて育てたこと。
それらは全て一本の線で繋がっている話なんだよ」




