夜の話と増えた家族
「それで、なんでこんな会って間もない男を家に寝泊まりさせようと考えたんだ?
幾ら何でも警戒心が無さすぎるんじゃないか?」
「うーん、何となく・・・ですかね?
エドさんは純粋に力を貸してくれてるから信じてもいいかなって。
それにウチには盗られるようなものもないですし」
私がそう言うとエドさんは深いため息を吐いた。
「年齢が若いとはいえ君は女性で俺は男性だ。
何か間違いがあってもいけないのではないか?」
「エドさんが私を襲うってことですか?」
「物の例えで興味はないがな。
まぁ、そういう趣向の輩もいないとは限らんだろうに無用心ではないか?」
「ん〜まぁ、エドさんぐらいの実力なら返り討ちに出来ますから問題ないかと。
ドアに手を掛けられた時点で起きる訓練はしているので夜這いも成功させないですよ」
「まぁ、確かに・・・しかし、年齢の割に大人の事情にも色々詳しくないか?
正直、ターニャの年齢でこの手の話がここまで通じるとも思わなかったのだが」
エドさんの言葉に窓の外に見えている宿屋の方を指差す。
「あっちの方って冒険者さんがたくさん泊まってるから夜の方の商売も盛んじゃないですか?
そこでお父さんが懇意にしていた女の人が来て色々教えてくれたんですよ」
「何を考えてるんだ、その女性は!」
「いえいえ、お姉さんはお父さんに頼まれたらしくて悪くないんですよ。
多分ですけど、その時にはお父さんは自分の死期に気付いてたんじゃないですかね?
だから、1人残される私が生きていくのにそういう知識もいるって考えたんじゃないかと。
直接聞いたわけじゃないから想像ですけどね」
「確かにその手の仕事に就くか関係なく騙されないためにも知識は必要か。
それに俺がこの家に世話になっても特に問題ないことは理解した。
・・・世話になるか」
エドさんの言葉に私は笑顔になる。
「これからよろしくお願いしますね。
実はずっと一人で寂しかったもんだから嬉しかったりします。
家族が増えたみたいですね!」
「そうか、俺も世話になった人物ならいるが家族というのはいなかったから分からないな。
だが、ターニャと父親の話を聞いていると悪くないものだと言う気はしてくるな」
「ここで暮らしてて理解してくれるようになったら嬉しいですね。
じゃあ、ご飯作るんで部屋の確認しておいてください。
二階の一番奥が父のいた部屋です。
家具だけそのままにしているので自由に使ってくださいね」