商業ギルドの特典
「いい話ですか?
他の方の商売の邪魔になったりしません?」
私が尋ねるとギルド長は大きく首を振った。
「ターニャん所の店は商人ギルドに加盟してるから関係ねぇよ。
何せお前の親父さんは面倒くさいってギルドの年会費を持っていた素材で払ったんだが、その値段が年会費ウンビャク年分の代物よ。
だから、あそこの店からは商業ギルドの永久組合員に登録されてるんだが・・・ひょっとして知らなかったか?」
「はい、初めて聞きました。
父さんは自分のことはあんまり喋らない人でしたからよく知らないんですよね」
私がそう言うとギルド長は通りでという表情を浮かべる。
「多分知らなかったから弁当しか売ってなかったんだろうから教えるが、商業ギルドでは余った品物を買い取る制度があるんだよ。
まぁ、だいたい基本の半値だと思っていい。
それをギルド加盟者なら7掛けで仕入れることが出来る。
お前さんはそれを仕入れて元値で売っても3割の儲けだ。
何でそれをやらないか疑問だったがまさか知らなかったとはなぁ」
「ええ!?そんなの初耳ですよ!
でも、他の店の売れ残りなんですよね?
それが私の店で売れるかな?」
「お前さんのところはダンジョンの真ん前にあるんだぞ。
他のところじゃ見向きもされない装備でもターニャん所の店なら問題ないだろ。
何せウチで素材を売却して一番金を持った状態で来るんだからな。
まぁ、今日は遅いから明日ポーションの錬金頼みがてら覗いてみてな」
「色々とありがとうございました!
今後はダンジョンも利用させてもらうと思うのでよろしくお願いします!」
私はそう言ってギルド長に深々と頭を下げて冒険者ギルドを後にする。
腰に下げたクエスト報酬がじゃらじゃらとなる。
1000Aか。
明日はへそくりの1万A足して仕入れに行ってみようかな。
私が家に着くと扉の前でエドさんが待っていた。
「お待たせしてしまいましたか?
ごめんなさい」
「いや、気にしなくていい。
実際さっき来たところだしな」
「うーん、でも今後こうなったら困りますよね。
・・・ああ、そうだ!
エドさんってお家あるんですか?」
「いや、この辺りに宿を取ろうと思っていたが」
「それなら父の部屋が空いているのでそこを使ってください!
入り口の鍵も父の分がありますのでエドさんが持っていてくださいよ」
「はぁ!?俺と君は今日初めて会ったんだぞ。
そんな男を家に住まわせる気か?」
エドさんが思わずと言った感じで大声をあげる。
そのせいで周りを行き交う人たちの視線がこっちに向いてしまった。
「まぁ、ここで話す内容でもありませんし中で話しましょう。
あ、みなさーん。
何でもない会話ですからお気になさらずに!
ほら、エドさんも!」
「むむ・・・何でもないただの会話だから気にしないでくれ」
私が周りの人にそう叫び、エドさんもそれに続く。
そして2人で愛想笑いをしていると人の波はサッと消えていった。
そうしてから私は改めてエドさんを家の中に誘うのだった。