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エターニャへようこそ〜アマテラス伝説〜  作者: 古葉七
〜第一部 最強女店主編〜
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ラーベルの目覚め!?

最近の俺は伸び悩んでいた。


師匠直伝の技を教えて頂きそれを放とうとするがどうにも上手くいかない。


集中が途切れずにうまく技を出せたと思っても威力が半分程度しか発揮されていないらしい。


理屈を聞いても頭の悪い俺では理解出来なかったのでトマスに相談したが、彼曰く


「これは理屈を覚えても仕方のない技術だ。

だからターニャさんの動きを思い出して何度も繰り返す必要がある」


ということらしい。


俺は師匠の動きを思い出す。


左足を踏み込み、その力を逃さずに軸を回していき右手に伝えて放つ一連の動作。


その動きは非常に洗練されていて美しさを感じてしまうほどであった。


美しさ・・・おかしい。


最近、師匠の動きを思い出して美しいという感想が出て来るたびに胸がざわつく感覚に襲われる。


これは一体何なのだろうか?


こういう時こそ頼りになる幼馴染のトマスである。


俺はトマスにこの事を相談すると彼は真面目な表情で俺の顔を覗き込んだ。


「一番そういうことには無縁そうだったのに貴方もでしたか・・・全く、嫌になりますね。

自覚は無いみたいですが」


「どうしたんだ?」


「何でもありませんよ。

ターニャさんに直接稽古でもつけてもらえれば解消するんじゃ無いですかね?」


「なるほど・・・しかし、師匠も忙しい人だからな」


師匠はとても強いお方だが本業は商人だ。


その為に色々と動き回っているので個人的なお願いがしづらいのだ。


「私の方で頼んでみますよ」


「本当か!?

トマス、お前は本当にすばらしい友だな」


俺は喜びでトマスの手を掴みブンブンと上下に振る。


その日の夕方、早速師匠から稽古をつけてもらえることになった。


「トマスさんが伸び悩んでいるラーベルを見てほしいと言われましたからね。

良い友達を持ったことを感謝するんですよ」


「はい、師匠!」


師匠は俺よりも年下で身体も小さいが何よりも大きな心を持っている方だ。


この人の期待を裏切らないようにしなければ。


型は反復するしか無いそうなので、妨害が入っても姿勢を崩せずに撃てるかという特訓をする。


何度も失敗する中で段々と力を逃さずに撃つコツのようなものが掴めてくる。


最後に師匠は目の前に掌を突き出してここに合わせて撃ってくださいと言った。


俺は今までに習った事を全て出しきるつもりでその小さな掌に向かって鎧通しを放った。


入った!


と思った瞬間に同じだけの力が師匠の掌から伝わってきて相殺される。


よく見ると師匠の左足が地面にめり込んでいる。


自身の掌に伝わる強さを瞬時に判断して同じだけの強さを返して相殺したのだろう。


何という高い頂きだろうか?


その道のりの険しさに思わず目眩が起きそうになる。


しかし、師匠は


「今のは良くできていましたよ。

これからも精進してください」


と言って俺の頭を撫でた。


その瞬間に胸のざわつきや不安は全て吹き飛び俺の心は喜びに包まれた。


「ありがとうございます、師匠!

これからもよろしくお願いします」


「ええ、こちらこそ。

もう閉店時間ですしトマスさんにお礼を言ってきてはどうですか?」


「早速そうさせて頂きます!」


俺は店の中に入るとトマスの姿を見かけて駆け出した。


「トマス!分かったぞ、師匠を前にすると痛む胸の原因が!!」


俺が大声で叫ぶとエドワード殿は片眉をピクリと動かし、鍛冶場からテムが。


2階からはピエールと双子の兄弟が降りてきた。


「お前の痛みの原因が分かったのはいい事だが落ち着けよ」


その様子にテムは手で顔を覆い、ピエールは双子に何やらからかわれている。


エドワード殿は明後日の方向を向いているが、こちらに向いた耳がピクピク動いている気がする。


「これが落ち着いていられるか!

俺の胸の痛みの原因は師匠に認めて褒められたいという気持ちだったのだ!」


俺がそういうとエドワード殿以外の全員がズッコケる。


何か変な事を言ったのだろうか?


「念のために聞くがどうしてそうなった?」


「うむ、いま師匠からお褒めの言葉を頂き頭を撫でてもらったのだ。

そうすると胸の痛みも悩みも全て吹き飛んだ!」


「あ・・・ああ、そういう事でしたか。

テムさん、ピエールさん。

安心していいですよ。

まだラーベルには早い話でした」


トマスがテムとピエールにそういうと2人は明らかに安堵していた。


「何の話だ?」


「ラーベルにはまだまだ修行が必要だという話ですよ」


「それは正にその通りだな、はっはっはっ!!」


「はっはっはっです!」


「はっはっはっでヤンス!」


いつの間にか双子も俺の近くで笑っていた。


何だか分からないがいい気分なので俺たちは笑いあっていた。


夜中に騒がないと師匠にゲンコツを貰うまで・・・。



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