エドワードVSラーベル 前編
「決勝戦は奇しくも同僚である同じPTメンバーでもある2人の戦いに決まりました。
冷静沈着で様々な技術を見せ、いいえ、魅せてくれた『静かなる掃除人』の異名を持つ男エドワード選手。
真っ直ぐ行ってぶっ飛ばす!
熱き漢気と筋肉で立ち入る障害を全て排除した『熱血筋肉』の異名を持つラーベル選手。
ターニャさん、どのような試合展開を予想されますか?」
「あの、それよりも私も聞いたことのない2つ名が付いているのですが」
「ええっと、エドワード選手の方は紳士仮面と名乗る方からそのように呼んでほしいという要望がありました。
大会本部の方の話ではこの大会の運営に関わる方ということで便宜を図ってくれと」
「・・・まぁ、それはいいでしょう。
ラーベル選手の2つ名はなんなんですか?」
「こちらは私考案ですね。
バーニングマッスルとしか言いようが無いでしょう?」
「分からなくもないですが」
「あ、ひょっとしてターニャさんも何か付けて欲しいんですか?
私、張り切って考えちゃいますよ」
「いえ、要らないです。
それよりも試合が始まりますよ」
俺はいま闘技大会の決勝のステージに立っている。
相対するのはエターニャでは先輩であるエドワード殿だ。
自分は燃えに燃えていた。
司会もバーニングマッスルなどと素晴らしい2つ名を付けてくれたものである。
何せこの試合に勝てば憧れの師匠と戦えるのだ。
もちろん、模擬戦では何回も手合わせしたことがある。
しかし、対等な勝負はまだ一度もしたことが無い。
そんな初めての真剣勝負をこれほどの大舞台で行える。
こんな喜びがあるだろうか?
相手のエドワード殿は自分よりも遥かに優れた技術を持っている。
しかし、自分にも彼を超える肉体を持っているのだ。
この武器を前面に押し出せば決して勝てない相手では無いだろう。
自分はエドワード殿を睨み、視線を一時と離さない。
エドワード殿は緊張感なく手をブラブラさせたり屈伸したりしている。
普通の人には舐めた態度に見えるだろうがそんな事はない。
緊張感のない自然体。
彼の何処にも隙らしい隙は無かった。
それでも強引に自分の力で隙をこじ開けようとジッと見つめる。
そのまま試合開始の合図が鳴った途端である・・・片時も視線を外さずに見ていた筈のエドワード殿の姿が消えていたのだ!




