Aブロック第二試合
Aブロック第二試合の準備が整い、ステージ上には選手が上がる。
1人は筋骨隆々で自分の背丈ほどもある巨大な大剣を持った現役の冒険者ゲイル。
自分が拠点としているギルドで敵無しとなったためにわざわざこの大会に参加しに来たらしい。
ゲイルに対峙するのは黒いタキシードを着てマスカレイドマスクで目元と鼻を隠した男ジャック。
これは身元不明の死体に使う名前、ジョン=ドゥを崩した言い方であり偽名であろう。
手には武器の類を一切持たず、とてもこれから戦いに赴く人間とは思えない。
予選でエドさんと同じ勝ち方をした彼ではあるが、その不気味さからか黄色い声援などは一切飛んでいなかった。
「間もなく第二試合が始まりますがこの試合、どう見ますか?
解説のターニャさん」
「そうですね。
予選でジャック選手は明らかにエドワード選手を意識した戦い方をしていました。
しかし、ゲイル選手の武器は巨大な鉄の塊とも言うべき大剣です。
果てして同じようなことを狙うのかどうか?
その辺りに注目したいですね」
「なるほど。
対してゲイル選手はどのような戦い方をされると予想していますか?」
「予選で見せたように彼はその大剣を圧倒的な膂力で振り回して戦っていました。
ジャック選手が何も手の内を見せずに予選を突破した事から考えても、とにかく攻めるという方針でいくのではないでしょうか?」
「なるほどなるほど。
予想を聞いたところで今、試合が始まりました。
おおっと、ターニャさんの予想通りにゲイル選手。
突進していく!
そして、これはあああ!!
自分自身を軸にして独楽のように回転しているぞ!!」
「闘技場のステージはそれなりの広さがありますが、それでも直径が3メートルを超える危険地帯を持つ台風が近づいているようなものですからね。
これは回避が難しいのでは無いでしょうか。
・・・あれは!?」
「ジャック選手、僅かに届かない位置を見定めて後ろに下がっていくがそれでも限界か!?
遂にステージの端まで追い詰められ・・・あああああ!?
これは何ということでしょう!!
ゲイル選手の大剣が半ばからポッキリと折れてしまった!!
ターニャさん、これは一体!?」
「ジャック選手は円に届かないギリギリの範囲から大剣に向かって上下に挟むように掌底を叩きつけていたのです。
それも同じ箇所に向かって。
そうして同じ箇所に攻撃を受け続けた大剣は耐えきれずに折れてしまったというわけです」
「これは凄い!
そして折れた剣でも諦めずに独楽となって突っ込んでいくのではゲイル選手。
だが、これはあああああ!!
いつの間にかゲイル選手の頭の真上にジャック選手が立っています。
それに合わせてゲイル選手の動きも止まる!
そのまま背後に降り立ち、ゲイル選手の首に腕が入った!」
「回転する物質は真ん中を見極めてそこに力を加えると回転が止まりますからね。
そして、あそこまできっちり腕が入ると並の力では振りほどくことは出来ません。
決着ですね」
「ここでゲイル選手失神によりジャック選手の勝利が決まりました!
Aブロック準決勝はエドワード選手とジャック選手に決定しました。
今の試合どう見ますか、ターニャさん」
「ジャック選手はわざわざ大剣を折らなくても先程の技で勝てたはずなのです。
それを大剣を折ったというのは明らかにエドワード選手を意識してのことだと思います」
「なるほど、この2人には何か因縁があるのかもしれないですね。
その点を考えても楽しみな試合と言えるでしょう。
さて、ステージの清掃が終わり次第Bブロック第一試合が始まります。
皆さま、トイレなどは今のうちに済ませてから席でお待ちください」




