ピエールの改心と新たな火種
「あ、これがレアアイテムの指輪ですよ。
私は今日は護衛なのでお三方で誰が取るか決めるといいですよ」
あの後、80匹目くらいで双子コンビの体力と魔力も限界が見え始めたので残りは私が狩る事にした。
「いや、私達だけでは100匹のホブゴブリンを倒すことなど不可能だっただろう。
それは貴女に持っていてほしい。
お前達もそれで構わんよな?」
「もちろんですぜ、兄貴!」
「全部姉御のお陰でヤンス!」
3人がそう言うので遠慮なく貰っておくことにした。
「それにしても、随分と殊勝な態度になったものですね」
「ここまでされれば否が応にもそうなるさ。
如何に自分達が・・・いや、あいつらは俺に付き合わせていただけだな。
俺が無謀なことを言っていたのか理解したよ」
ピエールの言葉に私は頷きます。
「それは上々。
更に一つ付け加えるなら今日貴方達が使っていた魔法は全て構成・呪文の一語一句・魔力の練り方まで含めて研究科の人達の成果だという事も考えた方がいいですよ」
私の言葉にピエールはハッとした顔をした。
「そうか、俺が馬鹿にしていたものは俺たちも含めた魔法を含めていた者たちの得になっていたということか。
それに比べれば俺たちが学んでいたものがちっぽけに見えてくるな」
「一長一短だと思いますけどね。
魔法の研究は長い年月をかけるものですから成果が出ない人もいるでしょうし。
ソーサラーの数は少ないので、そういう人達を育成して絶対数を増やす戦闘科も必要なものですよ」
「大事なのは周りを見て損得を見極めることか。
今日は本当に勉強になった、ありがとう」
ピエールさんがそう言って手を差し出したので、私もそれに答えて握手する。
「あっしらも今までは自信が持てなかったんですが姉御のおかげで何とかやっていけそうですぜ!」
「姉御には感謝しかないでヤンス!」
双子コンビもそう言って握手を求めてきたのでそれに応えた。
「さぁ、それじゃ外に出ましょうか」
こうして、私達はダンジョンを脱出した。
反省したピエールさん達はギルドマスターに頭を下げて今までの非礼を詫びていた。
ギルドマスターも若人の過ちをいつまでもグチグチ言う人ではない。
謝罪を受け入れ、パーティを組みたくなったら斡旋すると言っていた。
先程も言ったが本来ソーサラーは何処のパーティでも喉から手が出るほどに欲しいものだ。
しかし改心する前のピエールさん達を紹介したのでは
、すぐに問題を起こしてギルドの評価に悪影響を及ぼすことは分かっていた。
それがこうして安心して紹介できる人材になったことは大きな事だったのだろう。
ギルドマスターからの護衛報酬は5万Aだったのだが、更に成功報酬で同額が追加されていた。
私はありがたくそれを受け取るとエターニャに戻る。
ピエールさん達は調合作業をしていたトマスさんを見つけるとすぐに頭を下げた。
「今まで本当にすまなかった!」
「申し訳なかったですぜ!」
「ごめんなさいでヤンス!」
「えーっと、何がどうなってるんですか?
ターニャさん、先ずは説明をお願いします」
そう言われたので私は今までの経緯を説明した。
ホブゴブリンと修行させた辺りで頰がヒクヒクと引きつっていたのはきのせいだろうか?
全ての話を聞き終えるとトマスさんはため息を一つついた。
「貴方達の気持ちは分かりました、謝罪を受け入れましょう。
これからは共に同じ学び舎を出た者としてより良いお付き合いをして頂けたらと願いますよ」
こうして魔法学校の確執とギルドの問題を一つ解決した事により私の名前が一気に広まった。
特にギルドマスターがこの街一番の冒険者と紹介したのが大きかったかもしれない。
そのせいでお店の客が増えたものの厄介な問題も増えてしまった。
それを解決するために私は新たな商売に着手する事になる。
ターニャの心の中では年上でもしっかりとした礼節がない人は呼び捨てです。
また、弟子やら何やらで下についたひとも呼び捨てです。
逆に今回のピエールのように改心すれば心の中でさん付けで呼びます。




