ターニャ チンピラに絡まれる
「それじゃ、今日はこの辺にして帰りましょうか」
本日4個目のゴブリン殺しの指輪がドロップしたところで帰還を提案する。
ラーベルの回避と受けも少しは形になっている。
まだまだ荒削りなのでこれからもジェネラル先生には頑張ってもらおう。
今日は二階層には行っていないので鉱石は無いが、裁縫に使えそうな植物や木工に使えそうな材木は持っているのでテムも喜んでくれるだろう。
「鉱石類は使い切れないほどにあったけど、この辺りの素材が不足してたから助かったぜ」
予想通り喜んでくれた。
今日はお店の用意をエドさんとラーベルに任せて私とトマスさんで仕入れに向かう。
実はアルケさんが研究したいからゴブリン殺しの指輪を買い取りたいという申し出があったのだ。
大金での取引となるので私が出て行った方がいいだろうという話になったのだ。
二人で談笑しながら歩いていると唐突に声をかけられる。
「おっ、よく見たら研究科の貧弱トマスじゃねぇか。
こんな所で女連れて歩いているなんていいご身分だな?」
そちらを見ると魔法学園の制服を着崩しながら髪がツンツンに立ってる明らかに素行の悪そうな男が立っていた。
その後ろには子分らしき男も二人いる。
「はぁ、また貴方達ですか。
私は戦闘科の人たちに構っているほど暇ではありません。
ターニャさん、行きましょう」
トマスさんはそう言って先に行こうとする。
しかし、子分二人が前に出て立ちふさがる。
「へへ、そんなつれねぇこと言うなよ」
「可愛い彼女ちゃんに挨拶させてくれよ」
私はウンザリとした顔でトマスさんに尋ねた。
「何なんですか?
この絵に描いたような頭の悪い人たちは」
「なんだと!」
「可愛いからって調子に乗りやがって!」
「おいおい、落ち着けよ。
きっと彼氏が頼りにならないから怯えて強気に出ちまってるんだろうぜ。
なぁ、そんな貧弱野郎より俺たちみたいに日々鍛えあげてる男と遊んだ方が楽しいぜ」
私はいい加減付き合い切れないと思い拳で黙らせるべきかと思案していた。
しかし、その前にトマスさんが私を庇うように前に出た。
「彼女にちょっかいをかけるのはやめてもらおう」
「なんだ、俺とやろうってのか?
いいぜ、やってやるよ」
チンピラリーダーはそう言ってトマスさんに右手で殴りかかった。
しかし、トマスさんは左手で弧を描く動作によるチンピラリーダーのパンチを跳ねあげた。
その時には彼らは密着しており、トマスさんの目線にはチンピラリーダーの鳩尾があった。
そこに右手で持っていた杖を鳩尾に叩き込む。
「お、おお、あ?」
チンピラリーダーは何をされたか分からないという顔で地面に蹲る。
「おお〜今のは完璧な捌き方からのカウンターでしたね。
ひょっとして見ていて覚えました?」
「ええ。
エドさんの動きが非常に美しかったもので。
実戦で使うのは初めてなので粗はあったと思いますが」
「見ただけでここまで出来るのは本当に素晴らしいですよ」
私たちがのんびり話していると子分達がチンピラリーダーに近寄る。
「兄貴〜しっかりしてくだせえ」
「ちくしょーお前ら覚えてろよ!」
子分二人はリーダーを抱えて逃げていった。
「何だったんですか、今の?」
「大した話ではありませんので帰りにでも。
先ずは先に仕事を片付けましょう」
トマスさんに促されたので私達は先を急ぐ。
後であの連中がどう言う存在だったのかじっくり聞かせてもらおうと心に誓いながら。




