ターニャ式特訓 特別講師はジェネラル先生
翌日からも店の仕入れからのダンジョン探索である。
朝目覚めた3人に食事のネタバラシをすると三者三様の反応であった。
しかし、全員が強くなれるならということで毒入り食事を継続する方向で一致した。
意外なのはトマスさんだが、魔力量に変化が出たというのが一番のきっかけらしい。
兎にも角にも毒反転まで獲得するには時間がかかるだろうが、毒耐性までは獲得してもらわねば三層以降は進めない。
そこで今回は一層でゴブリン殺しの指輪を稼ぎつつ、まだまだ荒削りなラーベルの技術を上げる事にした。
お相手は毎度お馴染みのジェネラル先生である。
エドさんとトマスさんにホブゴブリンの相手をしてもらい、ラーベルはジェネラルの攻撃をひたすらに捌いてもらう。
先ずはお手本として私から。
いきり立って手に持っている剣で切りかかってくる。
「先ず基本は回避です。
しかし、回避=攻撃できる隙なので大きくかわさずに紙一重で避けます。
また、両足を地面から離すと、その瞬間が大きな隙となりますので必ず片方の足は地に足をつけておくこと。
これが基本です」
「はい、師匠!!」
「次に受けです。
敵の攻撃をどれだけの力の流れを見極めて、その流れを逸らしたり断ち切ったりするのが理想です。
例えばこのように突いてきた攻撃は・・・ふん!
っと、今は下から蹴り上げて逸らしましたが、一直線の攻撃は横に逸らせば簡単に逸れていきます。
他にも、振り下ろして斬りかかる手を叩いて武器を落とさせるとか。
まっすぐ伸びている腕の肘部分を狙うなど。
戦いの最中は常に頭を使いなさい。
目で見て、頭に情報を入れて整理するのです。
さあ、代わりにやってみてください」
「分かりました、師匠!」
私はジェネラルの突きを紙一重で回避すると、そのまま後ろに回り込んで突き飛ばす。
自身の勢いもあってジェネラルはそのまま前に倒れていった。
その隙にジェネラルの前にラーベルが立ち塞がる。
後はジェネラル相手に勝手に特訓してくれることだろう。
実戦に勝る経験は無いし、危なくなれば割って入れば良い。
私はエドさん達の方を見る。
あちらもエドさんがゴブリンの注意を集めて攻撃を捌き、トマスさんが魔法を唱えて殲滅していた。
「いま何匹くらいですか?」
「36匹だ!」
私が問いかけるとエドさんが返してくれた。
「100匹になったら教えてください!
一旦出て再走するんで」
「了解した」
私はそのままエドさんの戦い方を見る。
彼は常に姿勢をまっすぐに保ち、安定した回避と受けを行なっている。
一か八かの回避を行うならともかく、安定して戦うなら軸は真っ直ぐにブレてはいけない。
その点、エドさんはその動きに一切の淀みが無く洗練されている。
技術面では完成されているのだ。
そして、回避や受けからの攻めへいく流れ。
確実に相手の急所を断ち切る一撃。
「まぁ、間違いはないんでしょうね。
それで何が変わるというわけでもないですけど。
ラーベル!
もっと回避は丁寧に!
常に大地に足をつける!!」
エドさんが壊滅したアサシンギルドの生き残りだろうことは、昨日の話と戦闘スタイルで確信が持てた。
だけど私のことを手伝ってくれるエドさんに変わりはないから気にしない。
私はラーベルを扱きながら何となくモヤモヤした気分を吹き飛ばすのであった。




