ビフラーイのダンジョン
私が店に戻ってくるとエドさんは既に帰ってきていた。
「エドさん、用事は終わったんですか?」
「ああ、問題ない。
ちょっと申請と装備の点検に行っていたのでな」
そう言ってエドさんは丁寧に手入れをされたナイフを見せてくれる。
そして紺色の外套の下から革で出来た鎧も見えた。
「それ冒険用の装備ですよね?
何処か行かれるんですか?」
「ああ、申請の話になるがダンジョンに行こうと思ってね。
あそこなら素材やアイテムが落ちてるから店の販売の足しになるだろう」
ダンジョン・・それはこの街、ビフラーイの名物にして中心産業。
日毎に構造が変わり中には様々なアイテムが落ちている。
また、中には魔物が多数存在するが、魔物の素材どころか稀に宝箱を落とすなど尽きぬことのない資源としてこの街を支えている。
入り口にはダンジョンを取り仕切る冒険者ギルドがあり、入るにはその許可が必要だ。
許可証を得るにはダンジョンの構造を解析して複製した簡易ダンジョンが使われており、ここをクリアーすると許可証がもらえる。
私も3年前にクリアーしたから懐かしくなった。
「わ〜ダンジョンに行かれるんですか!
私も久しぶりに行きたいから一緒に行ってもいいですか?」
「いや、ダンジョンとは許可を得ないと入れないから簡単には・・・久しぶり?」
「はい、そうですよ!
これ許可証です」
私は部屋の棚から許可証を取り出した。
「まさか、許可証を持っているとは・・・流石はブレッドさんの娘ということか。
・・・ん?この取得年月は間違いでは?」
「いえ、合ってますよ!
お父さんが10歳の誕生日に装備をくれて試験の許可をくれたんです」
「・・・ターニャの家が非常識なのはよく分かった。
それじゃ一緒に行こうか」
「はい!」
私達はダンジョン前の冒険者ギルドにやってくる。
とは言っても店の真ん前なのですぐだが。
「あら、エドさんと・・・ターニャちゃん!?
ひょっとして今日は久しぶりにダンジョンに行くの?」
「はい、そのつもりですよ。マオさん」
冒険者ギルドでも評判の美人受付嬢マオさんが私たちを見かけて話しかけてきた。
私が試験を受ける時の担当もマオさんだったんだよね。
「ちょっと待っててね!
ギルド長!ギルド長!!」
マオさんが大声で叫ぶと奥から2メートルを超える巨漢の男性が現れる。
スキンヘッドに左眼には眼帯をしており、海賊と言われればそうとしか見えないだろう。
「なんだなんだ〜ってターニャじゃないか!?
今日はどうしたんだ」
「お久しぶりです、ギルド長。
今日は久しぶりにダンジョンに入ろうと思いまして」
「おお〜そいつは嬉しいね。
それでそっちの坊主は?」
ギルド長がエドさんを軽く睨む。
普通の人なら腰を抜かす眼光だがエドさんはそれを軽く受け流して挨拶をした。
「先程登録させてもらったエドワードです。
今日はターニャと一緒にダンジョンに挑ませていただきます」
「ふん、新人だと心配だが俺の眼光を受け止めて腰抜かさないなら最低限は合格だ。
ターニャの足を引っ張るんじゃないぞ!
それじゃ、成果を楽しみにしてるからな」
そう言ってまたギルド長は奥の部屋に行ってしまった。
「やれやれ、君は一体どういう人物なんだ?」
エドさんは私を見て首を傾げるのであった。