巫女服と刀
野生化魔法使いという新作を始めました。
よろしくお願いします。
偶然連れ去られる私を見たイツキは何とか隙を見て私を救出しようと思ったらしい。
しかし、中からぶつかるような騒音がして慌てて中に入ってきたそうだ。
「お待たせしました。
これで合ってますか?」
「あ、ああ。
合ってるし、その……に、似合ってるよ」
イツキが顔を赤くしながら答える。
いったい何の話かと言うと、最初にもらった着物が余りに動きにくいので何か代わりの服は無いかと尋ねた。
するとイツキは今はこんなものしか無いけどと言って白い上着と赤いズボンを取り出した。
こちらの言い方では上着を白衣。
ズボンは緋袴という巫女という神職の女性が着る服らしい。
イツキは行商人であり、各町の特産品を仕入れては別の町に卸すという仕事をしていた。
こちらの流通事情を知るには絶好の機会だと考えた私は暫く彼の行商について行く事にした。
最初は渋っていた彼だったかが、目の前で自分の腕っ節を見せて役に立つ事を見せると了承してくれた。
一人で行商していると危険に遭うことが多かったようだ。
私達はこうして最初に訪れた町、脱島から栄の町まで旅をする事になった。
道中では盗賊に襲われるわ、魔物に襲われるわとトラブルだらけであり、普段はこんな事が無いのに悪い事が起こる前触れなのではとイツキが不安になっていた。
そんな栄の町に行く途中で1番の出来事は廃寺だろう。
野宿するのも何だからと途中でボロボロになった廃寺で宿を取る事にした。
夜間、何者かの気配を感じて目を覚ます。
最初はイツキかと思ったのだがそうでは無いらしい。
目を開けると目の前には体の透けた巫女服の女性が立っていた。
彼女はこちらに何かを訴えかけるようにじっと見つめ、そしてスッと動き出した。
足が見えない為に空中を水平移動しているようだが、そんな事もあるもんだという精神でついていってみる。
彼女は寺の外にある井戸まで行き、その下を指差していた。
「えっと……この中に何かあるのかな?」
私が問いかけるが何も答えてはくれない。
仕方なく灯りの魔法を唱えて井戸の中を降りていく。
井戸はかなり深くそこに辿り着いても横穴が空いていて先があった。
私は警戒しながらその場所を進んでいく。
10分ほど歩くとようやく突き当たりに辿り着く。
そこには何かを祀っている祭壇と、祭壇の上にある壊れた像。
そして白骨化した遺体と一振りの刀が落ちていた。




