エターニャのトレードマーク
私は街の行政機関に来ていた。
エドさんの話ではまず店と土地の所有権を父から私に変更しなければいけないらしい。
本当はエドさんにも来てほしかったが、彼は他にすることがあるらしく1人で来ていた。
ただ、受付にエドからの紹介できたタチアナと言えば全て伝わると言われていたのでその通りにすると本当に通じてしまった!
「ターニャ・アマリスさん」
受付の人に呼ばれる。
私は受付の人に教わりながら必要な書類に名前を書いていった。
何とか難しい作業を終えて一息つくと受付の人に問われた。
「そういえばお店の名前はどうしますか?
そのままでもいいですけど、折角ですから新しい名前をつけてみては?」
私はそう聞かれて悩んだ。
今の店の名前は単純に父の名前だ。
しかし、父はおらず私が経営するのにその名前というのも変かもしれない。
私の名前だけでもいいかもしれないけど、エドさんが手伝ってくれるって言うからなぁ・・・これでいいや!
「決めました!名前は『エターニャ』でお願いします」
次に私は商業ギルドに来ていた。
受付の人から貰った紹介状で店の看板を新たに換えてくれるらしい。
「すいませーん、親方いますか?」
私は近くで商品の搬送をしていた少年に声をかけた。
私と同じくらいの年頃の男の子だ。
「なんだ?ここは女子供のくる場所じゃないぞ」
ムカッ!!
「貴方だって私と同じ子供じゃないの!
それよりも親方に会いに来たんだけど、いるの?
いないの?」
「俺はここの従業員だからいいんだよ。
親方は忙しいんだからお前みたいなガキの相手する暇はねえよ!」
「従業員だったら尚更ちゃんと確認しなさいよ!
勝手にお客か判断して帰していいわけないでしょ!」
段々とヒートアップする口論に周りの目が集まる。
すると奥から頭に兜をかぶった髭面の小さな男の人が現れた。
「うるさいぞ、全く!
何の騒ぎじゃ!!」
男は怒鳴りながら周りに視線を向ける。
「テム!何を客と口論しておるんじゃ!」
と、男の人は少年に怒鳴ってから私の方を向く。
すると先程までの怒りの表情が嘘のようににこやかな笑顔に変わった。
「なんじゃ、ブレッドの所の嬢ちゃんではないか。
ブレッドの葬式以来かの〜全然顔を出さんからここの事を忘れてしまったのかと思っておったぞ」
「あはは〜親方、お久しぶりです」
和やかに会話する私の横でテムと呼ばれた少年は顔を青ざめさせた。
「お・・・お前、本当に親方の知り合いなのかよ」
そう言うテムの頭に親方はゲンコツを落とす。
「この馬鹿が!
ワシの客かどうかはワシが判断する。
見習いが見た目で勝手に判断するんじゃないわい!」
「だから言ったのに・・・親方。
私は気にしてないので大丈夫ですよ」
「うむ、嬢ちゃんがそう言うならいいじゃろう。
して、今日は何の用じゃ?」
「実は・・・」
私は店の相続のことを話した。
その時に受付の人から貰った紹介状も親方に渡す。
「なるほど、ワシとしたことが相続のことはすっかり忘れておったわい。
分かった!
店の看板のことは任せておけ!
テム、お前は先程の非礼の詫びに看板の作成を手伝え!」
「あ・・・ああ、分かったよ親方」
「ありがとうございます!」
「それでデザインは決まってるのか?」
親方は紙とペンをこちらに渡してくる。
そこにイメージでいいから描けということだろう。
「店の名前はエターニャになったので中央部に分かるように名前を。
そして、名前の横に猫の絵が欲しいんです」
「猫の絵?」
「最後のニャってのが猫の鳴き声っぽいからトレードマークにしたいんです。
お願いできますか?」
「ああ、テム。お前は絵が得意だったな?
黒猫の絵と文字入れはお前に任すぞ」
親方が支持するとテムは嬉しそうに頷いた。
「それじゃ、よろしくお願いしますね」
私は頭を下げてギルドを立ち去ろうとするがテムから声がかかる。
「待ってくれ・・・さっきは悪かったな。
あんたのお陰で見習いなのに仕事をもらっちまった。
何か困ったことがあったらなんでも言ってくれ」
「こちらこそ強く言いすぎてゴメンね。
困ったことがあったら相談するからよろしく」
私がにっこりと笑うとテムはしばし呆然としてしまった。
そんなテムの背中を親方がバン!と叩くとハッと気がついた。
「あ・・・ああ、そうだ。
俺の名前は知ってるかもしれないけどテムって言うんだ」
テムはそう言って私の前に手を差し出した。
「私の名前はタチアナ。
皆はターニャって呼んでるからテムも良かったらそう言ってね」
私も自己紹介してテムの手をギュッと握った。
手を離して別れるまでテムの顔が赤くなってる気がするのは気のせいだろうか?
ともかく、私は今日の用事を終えて店に帰るのだった。