第二階層ボス 白狼VS白虎
雷を纏い本気になった白虎はとてつもなく早く動く。
そのスピードは私達の中で一番早いガイをも上回っていた。
その電光のような動きで縦横無尽に駆け回りながら攻撃を仕掛けてくるので、私達はまるで反撃の糸口を掴めなかった。
「仕掛けてくる攻撃自体は単純だから向きを変えるだけで対応は出来るけど・・・これはちょっとジリ貧じゃない?」
「まさかここまでとはな」
ニーナとガイが諦めムードになる中で私はカエデの方を見る。
楓も同じ事を考えていたらしく、私の方を見て頷く。
「一つ試してみたい事がある」
「拙者たちに任せてほしいでござるよ」
私達の言葉にニーナが盾を構え、攻撃を抑えながら振り向く。
「任せたいけどまた倒れたりするなんて事ないんでしょうね?」
「大丈夫。
今度はそんな無茶しないから」
「・・・分かった。
何をやるつもりか知らないが任せた。
カエデ、何か危なくなりそうだったらお前が止めてくれ」
「任せるでござるよ。
決して以前のような危険な目に遭わせぬでござる」
「それじゃやるよ、カエデ!」
「心得た!」
私とカエデは手を繋いでお互いの魔力を同調させていく。
そして練り合わせた魔力をコマちゃんに送り込んだ。
この1ヶ月で私達の魔力に慣れて吸収率が上がった事。
そして、今までにない程の大きな魔力を受けた事でコマちゃんの姿がどんどんと大きくなっていく。
「ウオオオオオオン!!」
遠吠えを一つあげて生まれ変わった姿をアピールするコマちゃん。
小さな犬だったコマちゃんの姿は、私達よりも遥かに大きい白き狼へと変化していた。
「背を借りるでござる。
さぁ、マリー殿も」
コマちゃんの背に乗ったカエデが差し伸べてきた手を掴んで私も背中に登る。
「頼んだよ、コマちゃん」
私の声に応えるようにコマちゃんが駆け出す。
その速さは本気の白虎に勝るとも劣らないものであった。
白虎に並走してピタリと横についてくれるお陰で私達の攻撃は振るえば当たるという状況であった。
カエデは大太刀を振るい、私は炎の魔法を飛ばして攻撃を加えていく。
白虎はそれを嫌がって雷を落としてくるが、コマちゃんはそれらを察知して回避していく。
段々とボロボロになっていった白虎は咆哮をあげて距離を取る。
歯を噛み鳴らしながら苛立つように唸り声をあげてこちらを睨みつけてきた。
それと同時に白虎から電気が迸り辺りに雷を落とす。
「あっ・・・もしかして!?」
「何か気付いたでござるか?」
白虎の様子を見てある事に気付いた私はカエデの問いに頷いた。
「かなり危険かもしれないけど・・・コマちゃん。
白虎の口を狙える範囲に移動して」
「ワオーン!」
私のお願いに了解と言わんばかりに一声あげる。
「カエデは白虎の口の右側、私は左側を狙う」
その短い言葉で何を言いたいのか悟ったのだろう。
「任せるでござるよ」
「それじゃコマちゃん、お願い!」
私の声と共にコマちゃんは白虎に向かって一直線に駆け出した。




