繋がりと魔力の操作
「話は変わるんだけどコマちゃんは?」
ニーナに言われてカバンを開けるとコマちゃんはグッスリと眠っていた。
「ずーっと寝てるんだよね。
最初は何かおかしいのかと思ったけど、犬に見えてもコマちゃん精霊だし・・・そんなものかもって思ってたんだけど」
「そもそも精霊って寝るのか?
うーん・・・魔力が少ないから使わないように節約してるとか?」
「ふむ、どうせ寝たら回復してしまうので拙者の魔力を与えてみるでござるか」
カエデさんがそう言ってコマちゃんに魔力を送り込む。
何度見ても惚れ惚れとするような魔力の操作方法に感心してしまう。
魔力が注ぎ終わるとコマちゃんはパチっと目を覚ます。
そして元気に机の上を走っているのだが・・・何かアピールしているような気がする。
「マリー殿の魔力も欲しがっているように見えるでござるな。
一度注いでみては如何でござるか?」
「えっ?でも、私は制御できないからコマちゃん爆発したりしないかな?」
「精霊なんだから人間の魔力ぐらい受け止めるんじゃないか?
マジックポーションも用意してあるし試してみればいいさ」
「危なそうなら私達が止めるし」
みんながそう言うので試しにとやってみることにした。
魔力の操作は怖いけど仲間がいるなら使う勇気も出てくる。
私がコマちゃんに意識を向け、身体の中を循環する力をそちらに向ける。
すると身体中の力がズズッと流れていく気がして全身から力が抜け落ちる。
あ、やっぱり駄目だ。
抜けていく魔力に諦めを感じた瞬間・・・流れが少し弱まっている事に気がついた。
自分の力ではない・・・誰かがアシストしてくれている感じがする。
私はハッと気付いてカエデさんの方を見ると、彼女は汗を流しながら私の方を見て力強く頷いた。
「コマ殿を通して繋がっているからこそ出来た事でござろう。
さあ、拙者を真似て見てくだされ」
カエデさんが私に分かりやすく魔力の操作の仕方を伝えてくれている。
流れる川を堰き止めるように少しずつ少しずつ魔力の放出を抑えていく。
そして・・・私の中に僅かな魔力を残して流れを止める事が出来たのだ。
「・・・ふぅ」
「大丈夫か?」
「ポーション飲む?」
私が一息つくとガイとニーナが心配そうに声をかけてきた。
「ううん、大丈夫。
少しだけど動くには問題ないだけの魔力が残っているから。
カエデさんのお陰ですよ」
「拙者は少しお手伝いしただけでござるよ。
それもりコマ殿が」
カエデさんに言われてコマちゃんを見ると与えられた魔力をこねくり回して自分の周りに展開し始めていた。
「これって何してるんですかね?」
「繭のように見えるでござるな」
コマちゃんはそのまま周囲を魔力で覆って完全に見えなくなってしまった。
私が持ち上げてみてもウンともスンとも言わない。
「昔本で読んだ事があったのを思い出したけど、これは進化の準備じゃないかな?
暫く様子を見てみるといいよ」
ニーナが繭をツンツンと突きながら言う。
そんな様子を見てガイがパンパンと手を叩いた。
「今日は色々動いて疲れっちまったから解散にするか」
「そうだね、そうしよう」
ガイとニーナはそう言って席を立つ。
「拙者達も部屋に戻るとするでござるか」
「そうですね。
一度戻りましょう」




