ビフラーイの街の違和感
「それでマリー達はカイトに会ってきて鱗掃除してきたと」
宿に戻ると既にガイとニーナが帰って来たので先程の報告をしておく。
心なしかガイは呆れて、ニーナはニヤニヤしてるように見えるが気のせいだろう・・・そういうことにしておきたい。
「これは孤児院に送ろうと思うんだけど、一枚くらいは自分達で使ってもいいかな?」
カイトはポリタンまで来た時に度々私達を呼び出して鱗掃除をさせていた。
その時に出た古い鱗は孤児院の運営費に充てていたので今回も送ろうと思っている。
しかし、ドラゴンの鱗は素材として一級品であり、それを粉にして装備品に塗るだけでも強化する事が出来ると言われている。
それならば一枚くらいは貰って装備強化に使ってもバチは当たらないだろう。
私のそんな提案にガイは「ダメだ」と首を振った。
「やっぱり全部送った方がいいか」
私はそう言って手に持っていた一枚の鱗を袋の中に戻そうとしたのを、ニーナが腕を取って止めた。
「ああ、違う違う。
そういう意味じゃないんだよ。
何て言ったらいいのかな・・・この街にはドラゴンの鱗を素材に加工できるような鍛冶屋が無いんだよ」
ニーナの言葉に首を傾げてカエデさんの方を見る。
恐らく同じ事を思ったのであろう。
「それはおかしいでござる。
拙者が使っている大太刀はかなりの業物。
このような刀を打てる鍛冶士なら竜の鱗も加工できるでござろう」
私達が試験の時に貰った装備品もだが、素材は最低限のものしか使っていない。
しかし、これらの装備には見た目には分からない細工が施されていて、本来の同素材の装備品を遥かに超えた性能となっている。
これを作った者は間違いなくこの街の鍛冶士だと思う。
「俺たちもそう思って探し回ったんだが、さっぱり見つからないし情報も出てこない。
それにトマスさんが上級のマジックポーションを使っていたが、この街の錬金術の店には下級と最下級のポーション類しか無かった」
「これはガイが気付いたんだけど、この街には私達みたいな駆け出しの冒険者しかいないの。
ギルドに行ってみても二階層までの情報しか公開してないし・・・」
ニーナに言われて周りを見ると、確かに周りには駆け出しの冒険者しかいないように見える。
「つまり・・・どういう事ござるか?」
イマイチ意味のわかっていないカエデさんがこくんと首を傾げる・・・かわいい。
違う違う・・・そうじゃない」
「つまりこの街にはもつ一つの顔があるってこと?
高レベルの武具や薬を扱い、それに相応しいレベルの冒険者達が闊歩する町が」
私がそう言うとガイは満足そうに頷いた。
「そういうこと。
そして俺たちはその場所がダンジョンの二階層を突破したところにあると思ってる。
「ギルドの情報がそこまでしか出回ってないからね」
ガイの言葉をすぐさま捕捉するニーナが捕捉する




