魔法を使えない魔法剣士
お姉ちゃんを目指して冒険者になると決めてから自分の適正クラスを判別してもらった。
ガイはシーフで憧れの人と一緒である事を喜んでいた。
この頃から私達より大きくなっていたニーナの適性はフォートレス。
そして私の番・・・私に出たクラスはマジックフェンサーという非常に珍しいクラスであった。
マジックフェンサーとはレイピアを主武器として戦い、それを媒介に魔法をも操る。
魔法はソーサラーのように放つことも、剣に纏わせて戦うことも出来る。
初めは剣で戦うことも魔法で戦うことも出来るという万能さがとても嬉しかった。
だけど私は魔法を上手く操る事が出来なかった。
剣に魔法を纏わせようと炎の魔法を浮かべると剣が灰になってしまう。
氷の魔法を外に放つと孤児院の庭が氷漬けになってしまった。
それだけならば強い魔法が撃てるという事で良かったかもしれない。
その直後に必ず私は昏倒して魔力が枯渇して生死の境を彷徨うにことになった。
お姉ちゃんが言うには私は魔力の制御が全く出来ず、最大出力で出してしまっているそうだ。
自分が近くにいるならば何とでもなるが、いない所で魔法を使うと生死に関わる。
だから自分がいない時に魔法は使わない事と言われた。
そしてもう一つ。
私の魔力は非常に高く、出力が前回で出しているからといって何の訓練も積んでいない子供が剣を灰にしたり、庭を氷漬けには出来ないそうなのだ。
そんな事が知られれば厄介な人達・・・当時はよく分からなかったが犯罪者集団の事なのだろう。
そういった人達に目を付けられるかもしれない。
だから魔力を持っていることは隠す事。
この2つが私と姉が交わした約束である。
♢ ♢ ♢
ダンジョンから戻った私達は一旦宿の部屋に戻っていった。
そこで2人になった時にカエデさんに全てを話すことにした。
「黙っててごめんなさい!」
私は頭を下げて謝る。
しかし、カエデさんは笑いながら
「気にしないでいいわ」
と言ってくれた。
「お姉さんとの約束を守ってたんだから仕方ないわ。
それを責めることなんて私には出来ない。
でも、話してくれて嬉しかった」
そう言って普段の喋り方で答える。
髪を下ろし、浴衣と呼ばれる私服に着替えた彼女はまるで別人のようであった。
「そう言って貰えると肩の荷が降りた気分です」
「だいたい昨日会ったばかりなんだから、そのつもりは無くても話していないことの一つや二つあるものよ」
「カエデさんにもあるんですか?」
私が首を傾げて尋ねるとカエデさんはおかしなものでも見たというように笑った。
「ふふふ、そりゃあるわよ。
だってあなた達は私が何で旅をしていたか知らないでしょ?」
「あ、そう言えば!」
「話すつもりではあったけど話す暇がなかったの。
そんな大した理由もなく話せてないこともある。
私達は出会ったばかりなんだから少しずつ知っていけばいいのよ」
勢いでパーティ入りし、なし崩し的に宴会に突入して起きたらダンジョンだ。
確かにお互いを知る時間なんてものも無かったかもしれない。
「そうですね。
カエデさんの事をもっと知りたいし私の事ももっと知って欲しいです」
「それじゃまだ時間もあるし一緒に街を見てまわりましょう。
こっちの言葉で、ええっと・・・デート!
デートしましょう」




