ビフラーイの冒険者ギルドマスター
「ちょっといいか?」
私たちのいる医務室に身体の大きな男の人が入ってきた。
年は30くらいだろうか?
身体は全身が極限まで鍛えられているということが分かり、高位の冒険者であろうという印象を受ける。
「はい、何でしょうか?」
「君達だよな?
カイトに乗ってこの街の広場にやってきたっていうのは」
「ああ、俺たちで間違いないぞ。
何か問題があったのか?」
「まぁ、問題だらけではあるんじゃないの?
入口の検査も通ってないし」
ガイが男に何か問題でも言っている事に対してニーナがツッコミを入れる。
ニーナ・・・私もそう思う。
よく考えれば私達は不法に街に潜入した事になるのかもしれない。
「いや、それはカイトの口添えがあったから問題ない。
その時点で君達には街長から無期限の滞在許可証が発行されている。
先ずはこれを渡しに来たんだ」
男はそう言って私達に書面を手渡してきた。
「これって失くすと不味いですかね?」
「街の設備を扱う時に出す必要はあるかもしれんが・・・君達の事は既に噂になっているからな。
無くても問題は無いだろう。
しかし、分かりやすい形での証明というのは必要だろう?」
「確かにそうだな。
ありがたく受け取っておくよ」
「おじさん、ありがとーね」
私達は其々にお礼を言って証明書を受け取る。
「続いてなのだが、先ずは自己紹介だな。
俺はこの街の冒険者ギルドの長を務めさせてもらっているラーベルと言う。
よろしく頼む」
彼は中々に暑苦しい笑顔でそう言うと私達に手を差し出す。
「ポリタンから来たマリーです」
「同じくガイだ」
「私はニーナだよ」
各々が握手に答えて名前を名乗る。
しかし、彼がビフラーイのギルドマスターなのか。
ギルドマスターにしては若いが、ダンジョンのあるこの街では実力主義なのかもしれない。
「んん・・・アマテラス様・・・」
そんなことを考えていると寝ている少女から呻き声が聞こえる。
「おっと、ここでこれ以上騒ぐのは得策ではないな。
悪いがついてきてくれないか?」
ダンジョンに入るにはこの冒険者ギルドでテストを受けて資格を手に入れる必要がある。
その為にもギルドマスターと知り合いになれたチャンスは逃してはいけないと思うのだ。
女性は眼鏡の先生が大丈夫だと言っていたし、医務室の職員もいるので問題ないだろう。
お姉ちゃんの教えである損得勘定で考えるなら迷わずついていったほうがいいだろう。
私がそこまで考えて2人を見るとガイとニーナも同じことを考えたのが目で見て分かった。
「分かりました、よろしくお願いします」
「よし、いい返事だ。
なーに、損はさせないさ」
ラーベルさんは何気なく言ったのかもしれないが、私達は心の中を見透かされたようで一瞬ビクッとしてしまった。
しかし、何も気にせずにニコニコしているから私達の考えすぎだったのだろう。
私達は大人しくラーベルさんについていくのだった。




