ターニャ式修行法
ボス部屋に入った私は真っ直ぐにゴブリンジェネラルに突っ込む。
そしてエドさん、トマスさん、テムの3人はそれぞれがホブゴブリンに向かって行った。
エドさんが二匹、テムが一匹を引き受けてトマスさんが後方から援護を送る。
私は計画通りの形に持って行けたことに安堵する。
ダンジョン内では移動中は戦いの最中にいつ増援が現れるか分からない。
しかし、ボス部屋は敵が固定であり増援も出てこない。
ホブゴブリン一体程度2人がかりなら戦えるだろうし、私もエドさんも自分の担当を引きつけながら援護もできる。
何よりの利点が・・・
と考えていたところで2人が相手をしていたホブゴブリンが倒れる。
すると、今度はエドさんに付いていた二匹の片方に狙いを定めて倒しにかかる。
そうして三匹のホブゴブリンを倒してしばらくするとジェネラルが雄叫びをあげた。
突如、森の中のどこからか増援が現れて三匹のホブゴブリンが補充された。
エドさんたちは再び先程の形をとり一匹ずつ仕留めていく。
これらをずっと続けて100匹以上のホブゴブリンを倒した時だった。
トマスさんが魔力切れで倒れ、テムも限界が来たのか足をもつれさせて転んでしまった。
「この辺りが潮時ですかね」
それを見た私はジェネラルの着ている鎧に右の掌を押し当てる。
その状態で左足を踏み込み、腰を左に回して右手に移動した力を余すことなく鎧の内側に叩き込む。
「秘技・鎧通しです!!」
鎧を貫通した衝撃はジェネラルの命を易々と刈り取ってしまう。
そして、直後にホブゴブリン三匹は一目散に逃げ出してしまった。
「やれやれ、相変わらずターニャは規格外だな。
昨日の俺の苦労はなんだったのやら」
エドさんがナイフを納めてこちらにやってくる。
「昔、父さんと一緒に戦った敵の中に鉄で出来たゴーレムがいたんですよね。
父さんはこのくらい素手で倒せるようになれ!
と私の武器を取り上げて修行に利用したんですよね」
「ふむ・・・ん?ターニャは武器を使うのか?
格闘家か何かだと思っていたのだが」
「あればなんでも使いますよ!
私はバトルエキスパートですから。
あ、今はマーチャントにしてますけどね」
私がそう言うとエドさんは驚いた顔をする。
「バトルエキスパート!?
あらゆる前衛職をマスターしないとなれない?
確かこの世界に片手で数えるほどしかいないと聞いたが」
「父さんがそうだったから片手の指はへってるんじゃないですかね?
まぁ、そんなわけで何の武器でも使えますよ」
と私たちが話しているとテムが剣を杖代わりにやってきた。
「何でもいいけど進むか帰るかしようぜ。
トマスの兄貴は倒れっちまったし、俺も体力の限界だよ」
「ああ、ゴメンね。
そうだ、これ飲むといいよ!」
と私はテムにポーションを手渡します。
ダンジョン用に五本、棚に突っ込まずに持ってきたのだ。
「お、ありがてえ。
早速頂いて・・・エドの旦那はどうしてこっちを見るんだ?
旦那もポーションいるのか?」
テムの言葉にエドさんは大きく首を振る。
「い、いや・・・私はいい。
テムが全部飲みたまえ」
「お、そうかい?
じゃあ、遠慮なく・・・ごくごく、うめえ!!」
テムはそう言ってポーションを飲み干すと身体の動きを確かめ始めた。
「やっぱポーションは効くなぁ・・・旦那も飲めばよかったのに」
「俺は色々あってポーションを飲めない体質になってしまってな。
気にしないでくれ」
遠い目をし出したエドさんは無視し、魔力切れで動けないトマスさんもどうしようもないので放っておいて宝箱を開ける。
「ああ、前回ショボかったから忘れていたな。
今回も期待は出来ないな」
「そうですね〜ってええ!?
何か指輪が入ってる・・・マーチャントスキルで鑑定してみますね」
ゴブリン殺しの指輪:大量のゴブリンを刈り取った証。
この指輪を装備するとゴブリンに対する攻撃力が上がる。
「どうやら知らない間にレアアイテムの取得方法出しちゃったみたいです」
私は頭を掻きながらエドさんに報告した。




