大混乱
今日はあと一話、12時くらいにあげる予定です。
ロバートさんと共に屋敷に戻るとガルシア様自らが出迎えてくれた。
「我が民を危険から救い出してくれたこと感謝する。
本当にありがとう」
「偶々ですから気になさならないでください。
それよりも明日から大変なことになるのではないですか?」
「現役の商業ギルド長が逮捕されたわけだからな。
その口ぶりから察するにターニャ殿は既に商業ギルドについてご存知なのかな?」
「ええ、まあ」
私がそう答えてサラの方に手を出すと彼女は纏められた紙の束を渡してきた。
私はそれを確認しながら話す。
「今のギルド長に変わってから大きく路線変更したわけでもないのに業績が拡大。
それと同時にギルド長の権力も膨れ上がっていく。
今ではワンマンと呼ばれる程に全ての権限がギルド長に集まっているようですね。
拡大した理由は間違いなく今回のような裏の仕事が原因でしょう」
「よく調べあげている。
その2人も優秀なのだな」
ガルシア様の言葉に私は大きく頷く。
「ええ、私の所で働く従業員は全員自慢出来ますよ。
・・・しかし、これだけの力を持った人が何の準備も引き継ぎもなくいなくなるとどれだけの影響があるやら」
「間違いなくパニックになるであろうな。
そして一番被害を受けるのはギルドに登録している個人店の商人であろう」
「ガルシア様の協力が必要ですが、私が前から考えてやってみたかったことがあるんです。
それを成功させればその辺りの問題は解決すると思いますよ」
「なんと!そんな方法があるのであれば是非聞かせて欲しい」
「こういう計画なんですけど・・・」
次の日、ペーターさんと共に商業ギルドに行くことになった。
「こんな朝早くにすみませんね」
「いえ、話は伺っています。
話が大きくなりすぎて私も出向かなければいけないところだったので丁度よいところでした。
それにしても・・・」
商業ギルドを覗くと案の定大混乱となっていた。
私はとりあえず手近にいた商人に話を聞いてみることにした。
「あの〜これは何が起こっているのでしょうか?」
「ん?ああ、俺たちはギルド長と契約して商品の納入に来てるんだ。
しかし、昨日の夜からギルド長の姿が見えないらしい。
それどころか逮捕されたなんて噂まで流れてパニックになってるんだよ」
「それは大変なことに・・・しかし、貴方は余裕そうですね?」
「俺はイマイチあのギルド長を信用出来なくて最低限の取引しかしてなかったからな。
だが、大半の連中はギルド長に依存する形で商売を成り立たせていたからな。
この状況が続くようなら全員おまんまの食い上げになっちまうんだよ」
私はその話を聞いて首を捻る。
「商人なんですから自分で販売すればいいんじゃないですか?」
「そのノウハウが無いんだよ。
ここにいる奴らは仕入れは出来るが直接販売するようなスキルは無いのさ」
「それじゃギルド長に飼い殺しにされてたんじゃ無いですか?」
「実際、そうらしいな。
初めは高い値段の取引をしていて段々と条件が悪くなっていったらしい。
しかし、取引は最早やめられない。
幾らでも引き取ってはくれたから以前と同じ儲け額を出す為に仕入れる量を増やしていく。
それによって益々依存して抜け出せなくなっていったんだろうな」
「なるほど。
お話ありがとうございました。
自己紹介が遅れましたが私はタチアナ・アマリスと言います」
私は説明してくれた商人に名乗りながら頭を下げる。
「これは丁寧にどうも。
俺はアンドレ・ホルンってもんだ。
タチアナちゃんは用があって来たのかい?」
「あ、ターニャでいいですよ。
とりあえずこの状況を何とかしに来ました」




