珍客達の顔合わせ
「なんだね、君は。
この店の従業員なのか?」
突然現れたテムに対してトマスさんは慌てずにエドさんに話を聞く。
「いえ、俺は知らないですよ。
ターニャ、彼はどういう知り合いなんだ?」
「俺を無視してんじゃねえよ!」
「まぁまぁ、落ち着いて。
私のために怒ってくれるのは嬉しいけど話が進まないからここは我慢してね」
私がそう言うと熱が冷めたのか、
「わりぃ、つい頭に血がのぼっちまった。
親方にも人の話を最後まで聞けってよく怒られるんだよな。
冷静に話を聞けないやつって厄介だし格好悪いよな」
と落ち込んでしまった。
しかし、この言葉がトマスさんに流れ弾として突き刺さったのだろうか?
「そう反省しているのであれば私も事を荒だてたりしませんから。
そうですね、彼のいう通りに冷静に話をしましょうか」
と、大人しくなってくれたのだった。
店の中で机に椅子を4つ並べた。
そしてテーブルにお茶を4つ置いて私も座る。
それぞれの客人を紹介した方が良いだろうという事で私の前にエドさん。
横にテム。
そして斜め前にトマスさんが座っている。
「えーと、先ずは私から挨拶をした方が良いのでしょうね。
私はこのエターニャの店主をしているタチアナ・アマリス、愛称はターニャです。
そして、こちらは商業ギルドで見習いをしているテム。
商業ギルドでの仕入れの量が多かったので、ここまで運ぶ手伝いをして頂きました」
「テムだ。
もともと孤児だったのを親方に拾われたからこの名前以外はねえよ」
「あら、そうだったのね。
それは今度話すとして、向かいにいるのがエドさん。
エターニャ経営のお手伝いをしてもらっています」
「エドワード・トラニスだ。
自分も愛称はエドなのでそちらで構わない」
「それで、えーっと・・・」
と私はトマスさんを見た。
先ほどのやりとりで名前は分かっているがそれ以外が全く分からない。
「ああ、僕の名前はトマス・ジンエ。
見ての通り魔法学校の生徒です。
よろしくお願いします」
と眼鏡の中心を中指でクイッと上げながらトマスさんは答える。
全員が紹介を終えたところで本題に入る。
「それで、一体なんの御用で店を訪れたのでしょうか?」
私が尋ねるとトマスさんは仰々しく頷いた。
「よくぞ聞いてくれました!
実は卒業検定が控えており、私の高度な魔術学論を発表することにしたのですが・・・」
そこでトマスさんは一旦言葉を止めて頭を振る。
「材料が足りないのです!
コウモリの翼、蛇の抜け殻、鍾乳石!
どれもダンジョンでは普通に手に入ると聞き私は1人ダンジョンに向かったのですが、魔術士一人で行けるほど甘いところではありませんでした。
そこでダンジョン産のものを扱っていないかとこちらに来たわけです」
「なるほど、それらは全て2層で入手可能なアイテムですね。
仕入れる事自体に問題はありませんよ」
私が答えるとトマスさんは嬉しそうに立ち上がった。
「本当かね!
さすがはこの店の店主だ!
よろしく頼むよ」
と、私の手を握りブンブンと振り始めた。
「問題はないのですが1つ条件を良いでしょうか?」
「うむ、なんでも言ってくれたまえ」
「トマスさんも一緒に採取に行きませんか?」
 




