ドラゴンと盟約を交わした街
「私は先に街に戻って出迎える準備をしておきます」
ロバートさんはそう言って途中にあった警備兵の駐屯地から馬を借りてポリタンの街へ向かっていった。
また、そこから声の大きい兵士を数人借り、道中でドラゴンが通るが人が使役している安全なドラゴンであるということを伝えて回るらしい。
確かに身体の大きなドラゴンが街道をのしのしと歩いていたら大騒ぎになるかもしれない。
本来はカイトに乗って飛んでいくのが一番早いのだろうが、それをやると間違いなくパニックになるしロバートさんの努力も無駄になるので、私はカイトの頭の上。
クレスト姉妹は背中に乗せて歩いてもらう。
ロバートさんのお陰で、すれ違う人達は最初はギョッとした顔をするものの、直ぐに頭の上に座っている私に気付いて安堵していた。
そんな人達に手を振りながらポリタンの街をめざした。
街の入り口である門の前ではロバートさんの他にペーターさんと領主であるガルシアさんも待機していた。
「あれ?皆さんお揃いなんですね?」
私はカイトの頭の上から飛び降りて挨拶をする。
「息子の報告を聞いた時には驚いたものじゃが安全が確保されている状態でドラゴン殿と交流出来るというのは今後の人生であるか分からぬからな。
カイト殿、私はこの地を治めるガルシアと申すもの。
よろしくお願い致しますぞ」
「うむ、聞いておるみたいじゃがワシの名前はカイト。
この地にて不必要な力を振るわぬことを宣言しに来た」
「宣言を了承致します。
我等もカイト殿を不用意に脅かすような真似をしないことをここに宣言いたします。
我等のこの宣言を無視する愚か者が現れた時は好きなようにお取り扱いくだされ」
「うむ、確かに承った。
・・・姉ちゃん、これで大丈夫かな?」
ガルシア様との話が終わるとカイトが不安げにこちらを見てきた。
「うん、問題ないと思うよ。
それにしてもカイトがそんな堅苦しい話し方をするとは思わなかったよ」
「里を出る前にみっちり扱かれたんだよ。
竜族の威厳を落とすようなことはしてはならん!
って頭の固い爺さん達がさ。
バンバ爺が孫可愛さにドラゴン派遣してる時点で威厳なんて無いと思うんだけどね」
「でも、よく頑張った!
エラい、エラい!」
私がそう言ってカイトの頭を撫でると嬉しそうに喉を鳴らす。
「はっはっはっ、聞いていた通りに本当に姉弟のような関係なのですな。
この後は屋敷に戻られますかな?」
「そうですね。
ペーターさん、これで依頼は完了で大丈夫でしょうか?」
「はい、勿論です。
長い間対処できなかった依頼の完了、本当にありがとうございます。
商業ギルドとの話し合いの件もお任せください」
ペーターさんはやや興奮したように答えてくれた。
「あ、そうでした。
カイトも街の中に入れて大丈夫ですか?
出来るなら屋敷の広い庭をお借りしたいのですが」
「勿論ですよ。
カイト殿、是非我が屋敷にお越しください。
今日という日の出会いを記念してパーティを行いましょう!」
こうしてカイトはポリタンの街と盟約を結び、歓迎されることになった。




