荷車と店番と珍客
「うわ〜武器や防具がいっぱいだ!」
倉庫を漁っている間の時間があるということで錬金の店でポーションを受け取った。
そして、商業ギルドに戻ってくると荷車にはガチャガチャと武具が積み込まれている最中だった。
「おう、待たせたな。
こっちの準備は終わったから早速運ばせるぜ。
それとこれは端数の金な」
親方はそう言って私に400A返してきた。
「これをターニャの店に運べばいいんだな」
「ごめんね、テム。
私の仕事も頼んじゃってるのに」
「別にかまやしねえよ!
この量を女の子に運べっての酷な話だしな。
それにターニャの店も一回見ておいた方が看板のイメージを付けやすいしな」
「そっか、でもありがとうね。テム」
「よ、よせやい。それじゃサッサと運んじまおうぜ!せーの!!」
テムが気合の声と共に荷車のハンドルを掴んで押す。
「せーの!!」
さらに力を込めていく。
「せえええええええええええのおおおおおおお!!」
己の中に眠る力よ、今こそ覚醒の時だ!
そんな思いを叫び声に込めて押していく。
・・・・・・・・・全く動かない。
「やっぱり私も手伝うよ」
「あ、おい!?」
荷車のハンドルを潜ってテムの横に行く。
そして私は力を込めていくとすぐに荷車が動き出した。
「は?へ?え?」
「やっぱり2人でやると軽々動くもんだね」
私の言葉にもテムはいまだに混乱していた。
「え?俺はさっきので握力使っちまったから添えてるだけ・・・」
「せーの!!」
テムは何か言っていたが初めて押した荷車が楽しくて私の耳には届いていなかった。
私はそのまま家まで荷車を押していくのであった。
「ただいま〜ってあれ?お客さん?」
私が店のドアを開けるとエドさんが誰かの相手をしていた。
「おお、お帰り。
トマスさん、彼女が先程から言っているこの店の店主です。
俺はただのお手伝いなので何か用事があるなら彼女に言ってください」
エドさんが疲れた様子でそう言うと、トマスと呼ばれた青年はこちらを向いた。
紫色の髪と瞳。
髪は清潔に短く整えられている。
服装から察するにこの街の魔法学校の生徒だろう。
そんな彼が眼鏡越しに私を見る。
「この娘が店主?またまたご冗談を。
貴方がこの店の店主なのでしょう?」
「だから違うと」
否定するエドさんに外の方を指差すトマス。
「あんな高度な魔術具を扱えるなど店主以外にはいないでしょう。
本当に困っているので白状してくださいよ」
「やれやれ、さっきからこの通りなんだよ。
ターニャがこの店のオーナーだと言う証拠は何かないかい?」
「あ、それなら・・・」
と私が倉庫から店の権利書を取り出そうと動いた時だった。
「さっきから聞いてりゃ好き放題言いやがって。
この店はターニャのもんなんだよ。
それが理解できないってんならサッサと帰りやがれ!!」
何故かテムが怒ってトマスさんに突っかかってしまった。




