死の商人
私が見つけたスキルは死の商人というもので自身の持っているお金と引き換えに望む武器を取り寄せるというとんでもないものであった。
「幾らかかるとかそんなものを気にしてる余裕はないですからね。
とにかく手数で攻めさせめて貰いましょう」
私は両手にロングソードを出現させるとボスに向かって走っていく。
ボスも翼で推力を得て真っ直ぐに突っ込んでくる。
そしてお互いの爪と剣が接触する・・・寸前に私は膝を曲げ、思いっきり上体を逸らした。
「なに!?」
勢いのままに私の真上を通過しようとするボスの背中を剣の柄の部分で殴って真上に飛ばす。
勢いよく飛び上がっていくが、天井にぶつかる前に翼を広げて上手く制止した。
「己、小癪なま・・・」
そう言って下を見下ろしたボスの身体に私が投げたロングソードが突き刺さる。
それも一本や二本ではない。
投擲するたびにスキルで剣を取り寄せて上に投げていく。
「ぐっ!あっ!がっ!!」
無数に投擲された剣に貫かれて段々と天井に迫っていく。
このまま天井にぶつかるかと思われたが
「があ!!!」
ボスは気合を解き放ち身体に刺さった剣と、いま自分に迫る剣の両方を弾き飛ばす。
「舐めおっ、へぶっ!!」
だが、その中に紛れさせていた巨大な戦斧を弾き飛ばすほどの力は無かったらしく、今度こそ戦斧の勢いに押されて天井に激突する。
それを確認した私は手に弓と矢を取り寄せて手や足を撃ち抜いていく。
「幾らしたのか後で確認するのが怖いですが、オリハルコンの弓と矢なんてあるものなんですね。
お陰で楽々と突き刺さりますよ」
尻尾も撃ち抜いたところで完全に天井に貼り付けにされ標本のような姿になる。
力任せに矢に刺さった手や足を抜こうとするが、力のかかる関節部分もしっかりと撃ち込んであるので早々逃れられるものではないだろう。
ボスが動けない間にスキルで呼び出せる武器について見ていく。
「世の中金次第とは言いますが、本当にお金で何でも買えるんですね。
・・・お、良いものがあるじゃないですか」
私はその中でも非常に高級なエターニャの資産が半分以上吹き飛ぶ武器を交換する。
「手痛い出費ですがお金はまた稼げば良いですからね。
それよりも早く倒してしまわないと精神的苦痛で参っちゃいそうですよ」
私は取り寄せた武器・・・刀を構えて空に飛び上がる。
極めた前衛職の中にはこの刀という武器を使う侍というクラスもあった。
残念ながらそのクラスをマスターする過程で刀は手に入らなかったのでずっと手刀で戦っていわけだが・・・しかし、一度も使っていなくてもクラスの補正によって扱い方は十二分に理解している。
私は地面を蹴り高く飛び上がる。
「はっはっはっ、かかったな!」
その瞬間に拘束している矢を強引に引き抜いてボスが飛び出した。
このまま飛び続ければカウンターを喰らってしまう可能性がある。
しかし、私は飛び上がる寸前に取り寄せて投げていた、黒い小さな刀の鍔に足をかける。
これは忍者というアサシンの使う刀で潜入するための足場にするために鍔が広く作られているのだ。
その忍者刀を足場にして更に勢いよく飛んだ結果、ボスが迎撃に入る前に追い越していった。
追い越したと同時に日本刀の鞘で思いっきり股間部分を殴打する。
「ぐはああああ!!」
その攻撃により勢いよく落下したボスは粉塵を巻き上げながら地面に突き刺さる。
私は鞘を投げ捨てながら半回転して天井に降り立ち、勢いよく蹴ってそのまま逆さまに落下していく。
その最中に手に巨大なハンマーを取り寄せ、それを前方に突き出してボスの身体が突き刺さっているところを目指す。
轟音と共にハンマーがボスを押しつぶす。
私はハンマーが接触した瞬間にハンマーを持った手を思いっきり突き出し、反動を利用してくるくる回りながら前方にスタッと着地した。
ボスとハンマーが突き刺さった場所は激しい煙で見えなくなっていたが、やがて煙は収まっていく。
その場には粉々に砕けたハンマーの破片と何処からか現れた宝箱しかなかった。
私はその宝箱の近くに無造作に置いていた刀を拾い上げる。
「まぁ、お金は稼げるとはいえ高級品は使わないならその方がいいですからね。
さて、宝箱をいただいて帰りましょうか」




