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24投稿者の正体

「プルルルル」


 ジャスミンが家に帰って、九尾たちとのんびり過ごしていると、私のスマホが着信を告げた。誰かと画面をのぞき込むと、綾崎さんからだった。


「もしも」


「あ、蒼紗さん、あの写真、見ました?」


 電話に出たとたん、綾崎さんの大声がスマホ越しに聞こえた。慌ててスマホと距離を話して、綾崎さんに返答する。


「写真って、九尾たちが写っているものですか?」


「知っているのなら話が早いです。今日は用事があってスマホが見れていなかったんですが、今スマホを開いてみたら、佐藤さんからメッセージが届いていて。それで」


 ここで綾崎さんは言葉を止めた。息を吸う音が電話越しに聞こえた。


「あの写真は実際どうなんですか?彼女はどっきりとか言っていますけど、いえ、私は合成だとは思っていません。実物をこの目で見たから、あの写真は本物に間違いはありません。ですが」


 その後、一気に質問する綾崎さん。しかし、彼女の言葉に返答することは難しい。本物だとして、彼らの正体を説明する必要が出てくるからだ。


「どうって言われても……」


 さて、綾崎さんの言葉にどう返答したらいいだろうか。綾崎さんには九尾たちが人間ではないことを話していない。いろいろばれている気もするが、綾崎さん自身が能力者ではないため、説明がうまくできずに、本当のことを言えていない。そんな彼女にどのように説明したらわかってもらえるだろうか。


「もしもし、お前、この写真を投稿した奴に心当たりはあるのか?」


 私が答えに詰まっている間に、スマホを九尾に奪われた。慌てて、スマホのスピーカー機能をオンにして、私にも綾崎さんの声が聞こえるようにする。


「この声は、九尾君ですか?写真の投稿者なら、知っていますよ。だって」


『投稿したのは、美瑠ですから』


 綾崎さんが発した人物名を聞いた瞬間、私は今朝がた見た夢を思い出した。鬼崎さんは夢で話していたことは。


『私、昔からそういうものに目がなくて。いつか本物に会ってやると意気込んでいました。そして、高校時代にこの大学を知った時は歓喜しました!ようやく私が追い求めていたものが』


「みる?ふむ、蒼紗は心当たりがあるようだが、われも知っている人物か?」


「九尾君も知っているかもしれません。私のサークルに新しく入部した子ですよ。鬼崎美瑠おにざきみるっていうんですけど」


「おにざきみる……。後で蒼紗に聞いてみることにしよう。それで、用件はそれだけか?ないのなら、蒼紗は今忙しいから電話を切るぞ」


「勝手に電話を切ろうとしないでください!」


「待って待って。切らないで。もう一つ、蒼紗さんに伝えたいことがあって。最近のニュースで話題になっている、魂狩りについてですよ」


「魂狩り?」


 夢の内容を思い出している途中で、九尾が勝手に電話を切ろうとしたので、止めようとすると、綾崎さんから聞きなれない言葉が出てきた。夢のことはいったん、頭の隅に置いておくことにした。彼女の言葉を反芻する。


「知らないみたいですね。なんか、最近、霊に詳しい専門家が騒いでいるみたいで、私、こういうのが気になっちゃうタイプで」


 綾崎さんが教えてくれたのは、車坂が話していたことと内容が似ていた。おそらく、車坂が言っていた出来事と同じだ。


「まあ、この町でまた異変が起きているみたいですね。綾崎さんも気を付けてくださいね」


 綾崎さんはまだ話したりなさそうにしていたが、私は思い出さなければならないことがあったので、用事が済み次第、電話を切ることにした。


「残りは、月曜日にでも聞きますので、今日はこれで」


「ちょっと、蒼紗さん!」


「ぷーぷー」


 かけてきたのは綾崎さんなのに、強引に電話を切ってしまった。九尾のことをとやかく言う筋合いはないのかもしれない。こんな感じで接していたら、いずれ綾崎さんは私から離れてしまうだろうか、いや、ジャスミンもそうだ。あまりそっけない態度をとり続けると……。





「蒼紗さん!」


 ハッと声のした方向を振り向くと、心配そうに私の顔を覗き込む翼君の姿があった。後ろには狼貴君もいて、九尾が興味深そうに私を見ていた。知らず知らずのうちに、九尾からスマホを取り返していたようだ。スマホを握る手に力が込められていたようで、手がスマホの角にあたって、手に痛みを感じた。


「そう思い悩むでない。お主の態度が気に入らないのなら、もうとっくに彼女たちはお主を見限っている。もっと彼女たちを信用してやれ」


「私は別に……。そうだ、SNSの写真で思い出したんですけど、予知夢を見た気がします」


 私が夢で、鬼崎さんと話していたことを話すと、九尾になるほどと頷かれ、翼君と狼貴に二階の彼らの部屋に行くよう指示した。彼らは九尾の真剣な表情を見て、何も言わず素直に指示に従った。


「それで、お主、夢は本当にそれだけか?」


 二人が二階に上っていくのを見届けると、九尾は私に質問した。九尾には何もかもお見通しだと思い、私は正直に鬼崎さんが出てきた夢の前に見た、翼君が刺される夢も九尾に話すことにした。


「ふむ、嫌な夢ばかりだな」


 夢についての詳細を突っ込まれずに、一言つぶやいた九尾は、それ以外何も言うことなく、二階に上がってしまった。




 一人になった私は、これからの生活に思いをはせる。


「このままずっと九尾たちが一緒に居てくれて、ジャスミンや綾崎さんと一緒に楽しく生活できたら、どんなにいいでしょうか」


 しかし、こんなことがずっと続くわけがない。今までだってそうだった。私は世間から外された世捨て人みたいなものだ。期待してはいけない。今ある楽しい日常をできるだけ長く続けられるように努力するのみだ。


 そのためには、今回の投稿の真意を鬼崎さんに問い詰める必要がある。


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