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2今日から新学期、新たな仲間が増えました①

「おはよう、蒼紗。今日から新学期ね。ああ、蒼紗との出会いからもう、一年が経つとは、本当に時間が過ぎるのはあっという間ね」


「おはようございます。蒼紗さん、今日の衣装も素敵です!」


 新学期が始まった。私たちは今日から大学二年生となった。私が大学に到着して、いつものように更衣室を借りて着替えを済ますと、待ち構えていたかのように、二人の女性が私に挨拶してきた。


「おはようございます。ジャスミンに綾崎さん。今日から新学期が始まりますが、今年度もよろしくお願いします」


 ぺこりとお辞儀をして挨拶すると、二人も慌ててお議事をしてきた。心なしか、二人とも顔が赤い気がする。理由は考えたくもないので、無視してガイダンスが行われる講義室へ向かって歩き出す。


「あ、蒼紗によろしくと言われるなんて。よろしくの意味がいかがわしく聞こえてしまうわ」


「蒼紗さんになら、よろしくされてもいいですけど」


 私の予感は的中していたらしい。二人の言葉が不穏過ぎて、私は振り向くことができず、黙々と歩くしかなかった。




「蒼紗さん!僕もこの大学に通うことに決めました!蒼紗さんって、前に大学に遊びに行ったときも思いましたけど、おもしろい恰好をしているのですね。僕も真似しようかな」


「やめておけ。お前はそんなことをしなくても、目立つだろう?」


 ガイダンスが終わり、昼休みとなったため、私たち三人は食堂にきていた。学食でも食べようかと食券を買って、ランチをもらい、席に着いた時だった。聞き覚えのある声が私の耳に届いた。


 振り返るとそこには、イケメンの青年二人が立っていた。


「蒼紗、あの子って、確か去年の冬に大学に遊びに来た子よね?何?高校生だったの?初耳なんだけど、蒼紗、どういうことか説明してよね。しかも、イケメン。私の敵になるかもしれないから」


「私にも説明してください!」


 イケメンの二人の正体は、七尾と九尾だった。七尾は、昔、九尾の眷属として仕えていたらしい。九尾は、西園寺という家に仕えていたのだが、嫌になって逃げだした時に、七尾を見捨てて一人で逃げたようだ。それで、九尾に復讐をしようとして、私を襲った。ちなみに、その西園寺家は、亡くなった同級生の西園寺家桜華の実家である。


 そのことで、去年の冬から春にかけて、ひと騒動あったのだが、彼らの間では解決したらしい。仲良く二人で談笑している。そういえば、七尾が私たちの通う大学に来るかもしれないと九尾は言っていた気がする。九尾たちのことだから、もしかしたら大学に来るかもしれないとは思っていたが、本当に来るとは驚きだ。



「蒼紗さんのその服装の意味って何ですか?」


「あれか?あれはほら、西園寺家に一人娘がいただろう?あの娘を忘れないために、だそうだ。今日は、ああ、あの娘が入学式に着ていた服だな」


 そう、私は一年前の春に亡くなった、同じ大学に通っていた西園寺桜華という女性を忘れないために、大学にいる間はコスプレをするようにしていた。彼女が生前大学でしていたコスプレをすることで、彼女の存在を私の中に残していけるように。


 九尾が指摘したように、私の今日の服装は、西園寺桜華が入学式で着ていたチャイナ服を着ていた。


「蒼紗の服が珍しく派手だなと思ったのは、そのせいだったのね。似合っているから問題はないけど」


「蒼紗さんのコスプレにはそんな理由があったんですね」


 ランチを食べながら、私たちは九尾たちも交えて談笑していた。コスプレの件は、最初は周囲の人の目が気になっていたが、一年も続けているとその視線にも慣れてきて、今ではそこまで気にならなくなった。慣れとは恐ろしいものだ。


「それで、七尾は今どこに住んでいるのですか?」


 話題を変えるために、私は七尾にどうやって大学に通っているのか質問する。九尾たちは私の家に居候している。死神の車坂は、自分でどこかに家を借りているのか、人間に紛れて生活しているようだ。七尾はどうしているのだろうか。


「僕のことが気になるんだね。今は、雨水のガキの家に泊めてもらっているよ。あいつは、雨水家から追い出されたみたいで、一人で寂しそうだったからな。僕の面倒を見させることにした」


「そうですか」


 それきり、会話が途絶えてしまう。詳しいことを聞きたいが、七尾の正体はジャスミンや綾崎さんには伝えていない。ジャスミンには、九尾が人間ではないことをすでに話しているので、その彼と七尾が親しいことで、七尾が人間ではないことを察しているかもしれない。綾崎さんはきっと彼が人間だと信じているだろう。そもそも、綾崎さんには、九尾の本当の正体を話していない。


「僕について聞きたいのなら、今度、蒼紗さんの家に招待してよ。その時に詳しく話すよ」


「我はこいつなんぞを家に呼びたくないが、まあ、仕方ない」




 昼食を食べ終わると、九尾と七尾は、そのまま大学を去って行った。今日はガイダンスのみで、明日から本格的に授業が始めるので、特に私も用事がない。用事がなかったので、家に帰ることにした。


「私はサークルも入っていないし、大学に特に用事もないから、家に帰りますね」


「確かにこの後は大学の授業もないわね。じゃあ、今日はこの辺で解散にしましょう」


「私は、この後、新入生を勧誘する仕事が残っていますので、大学に残ります」


『では、また明日』


 私たちはその場で別れた。七尾が大学に通うことになったのは、驚きだったが、九尾が目を光らせているので、やばい事件が起こるということもないだろう。とはいえ、九尾こそが、私を平穏な大学生活から遠ざけた一番の元凶なのだが。


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