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18新歓コンパが始まりました

 金曜日になり、新歓コンパ当日を迎えた。ジャスミンも綾崎さんも妙に張り切っていて、メイクも服装も気合が入っていた。それとは対照的に、私の気分は晴れないまま、メイクも服装も適当に済ませていた。


 私たちは、新歓コンパの会場である居酒屋に向かっていた。


「蒼紗、なんでそんな地味なのよ」


 私の恰好は、黒のパーカーにジーンズといういつもの私服だ。これのどこがいけないのだろうか。


「ジャスミンたちがおかしいんですよ。なんでそんなに気合が入っているのですか?」


 ジャスミンは、膝丈少し上までのスカートで、生足を見せつけ、紺色のブラウスのボタンをだいぶ外していて、胸の谷間を惜しげもなくさらしていた。対して、綾崎さんも露出は少ないが、薄いピンクワンピースに同色のカーディガンを羽織り、可愛らしさを存分に演出していた。


「当たり前でしょう?蒼紗に目がいかないように、私が派手にする必要があるのよ!」


「新歓コンパで気合を入れない人なんてめったにいませんよ。大学生の出会いの場でもあるんですよ。ここでの出会いが一生を左右するかもしれない、そんなイベントです。私は別に蒼紗さんが居るので、男あさりなんてはしたない真似はしませんけど。それでも、女心に火をつける、それが新歓コンパです」


 二人の勢いに押され、新歓コンパに行く前から帰りたくなった私だが、退路はふさがれてしまう。前方にはジャスミンと綾崎さん、後方には。


「待たせたかな、お嬢さんたち」


「お待たせしました」


「……」


後方からの声に、嫌々ながらも振り返り、誰が来たのか確認する。そこには、キラキラオーラを放った三人の青年の姿があった。


「ジャスミンに綾崎さん、彼らは赤の他人です。無視して、先を急ぎましょう」


 三人の青年の正体はわかっている。わかっているが、お近づきになりたくはない。家に帰りたいのはやまやまだが、退路はふさがれている。もう、前に進むしかないのだ。


 私が彼らを無視して先に進もうとしたが、それは叶わなかった。


「いや、蒼紗、あいつら、あんたの居候でしょ。無視しちゃダメじゃないの、ていうか、彼ら、新歓コンパに乗り気みたいね」


「あ、あなたたちはいつぞやの。蒼紗さんを守りに来たのですか?」


 私の言葉を無視して、わざわざ九尾たちに近づいて、彼らに話しかけるジャスミンと綾崎さん。



「アレ、みんな揃っているね。じゃあ、しんかんこんぱ、とやらにれっつごーだね!」


 途中、七尾とも合流して、七人の大所帯で居酒屋に入ることになった。





「まずは、自己紹介から行きましょう!じゃあ、端っこから順番に学科と名前、趣味とか一言をお願いします」


 綾崎さんの所属する「妖怪調査サークル」からは、綾崎さんと鬼崎さんも含めて、8人が参加していた。私たちのような、サークル外の人も参加していて、かなりにぎやかになっていた。


 綾崎さんのサークルの部長が指揮をとり、まずは自己紹介しようという話になった。



「自己紹介などして、何が楽しいのだ。さっさと酒でも飲みたいのう」


「本当だよね。九尾の言う通りだよ。ねえ蒼紗先輩、どうやって酒を頼むの?僕は日本酒がいいな」


「まったく、九尾も七尾もわかっていませんね。とはいえ、僕も喉が渇きました。狼貴もそうでしょう。僕は、お酒は飲みませんけど、どうします?」


「オレも酒はやめておく。こいつらの後始末をする羽目になるのは明白だ」


 私の身内の彼らは、すでに好き勝手していた。自己紹介に興味を示さず、メニュー表をみながら、何を頼むか話し合っていた。その様子を見て、内心でため息をついていると、他にも空気を読めない奴がいるらしく、九尾たちの会話に参加する。


「そこの蒼紗の家の居候、私と蒼紗の分も頼んで頂戴。私は、ウーロン茶、蒼紗も同じでいいかしら?」


「ジャスミンはお酒を飲まないのですね。私も同じで構いません」


「蒼紗は、私が未成年だということを忘れているのかしら?」




「そちらのメンバーはマイペースやなあ。まあ、腹が減ってきたし、自己紹介は後にして、先に飲んだり食ったりするか!」


「すみません、迷惑をおかけてして」


 部長の呆れた声に、私は慌てて謝罪する。しかし、ノリがいい部長らしく、豪快に笑って気にしなくていいと言ってくれた。


「ご注文は何にしますか?」


「日本酒二つとウーロン茶二つ、オレンジジュースを二つお願いします。それから……」


 翼君が私たちの分まで注文してくれた。飲み物だけでなく、ポテトや唐揚げ、刺身や揚げ物などの食べ物もいくつか頼んでくれた。


「かしこまりした。他にご注文はありませんか」


「オレ達も注文するか。ビールが3つに……」


 ついでとばかりに、部長や他のサークルメンバーも次々とアルコール類や料理を頼みだす。




「ずいぶんと朔夜先輩は、彼らを気にかけているのですね」


 注文を終えたため、一段落着いたのか、ぽつりぽつりと会話が再開される。いつの間にか近くに来ていた鬼崎さんが、私に問いかける。


「ええと、彼らの参加を止められなかったのは私の責任ですので、せめて、皆さんに迷惑をかけないようにするのは礼儀かと」


「赤の他人なのに?」


「それは……」


「赤の他人じゃないわよ。だって、そいつら、そこの金髪野郎以外はみんな、蒼紗の家に居候しているんだもの」


「ジャスミン!」


 私の個人情報の流出を避けようと、彼女の口をふさごうとしたが、間に合わなかった。ジャスミンはその後もどんどん、私の情報を鬼崎さんに流していく。


「鬼崎さん、だっけ。もしかして、蒼紗に興味でも持った?でも残念、あなたみたいな凡人は、蒼紗と釣り合わないわ。だって、蒼紗は特別な人間なんだから。あんたがいくら頑張っても、蒼紗には近づけやしないわ」


 ジャスミンが攻撃的に鬼崎さんに言葉を投げかける。しかし、鬼崎さんが怒る様子はなかった。


「そうですか。私と朔夜先輩は釣り合わない。本当にそうでしょうか?」


 それどころか、どこか余裕を持った表情でさらりとジャスミンの攻撃をかわしていた。


「何が言いたいのかしら?」


「それは……。おや、料理などが届いたみたいですよ」


 ジャスミンの言葉に答えようとした鬼崎さんは、料理を運んできた店員が廊下からやってくる音に気付いて、そちらに視線を向ける。



「注文の料理屋飲み物をお持ちしました」


 廊下のふすまを開けて、店員が顔を出す。私たちはいったん、話を中断して食事を開始することにした。


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