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1昨年を振り返る

「春休みももう、終わりねえ。私たち、4月から大学2年生になるわけだけど」


「そうですけど、なぜ、ジャスミンが今、私の家にいるのか疑問です」


 私、朔夜蒼紗さくやあおさは、目の前の女性が話している通り、4月から大学2年生となる。訳あって、大学生活二度目となるのだが、二度目の大学生活一年目は、いろいろなことがあって、私の望む平穏な大学生活とは言い難かった。


 まさか、同級生が殺されてしまい、その犯人は、自分が勤めていたアルバイト先の上司だったとは予想できるはずもない。同級生、西園寺桜華さいおんじおうかの死によって、私の日常は平穏なものではなくなった。


 狐の神様、九尾きゅうびと出会い、私は自分が特異体質で、特殊能力を持っていることを知らされた。世の中には、能力者と呼ばれる特殊能力を持った人間がいるようだ。


 九尾との出会いから、どんどん私の周りには奇妙な存在が集まり始めた。九尾の眷属となってしまった元人間のつばさ君に、狼貴こうき君。死神の車坂くるまさか


 神様やら死神やらと出会って、事件に巻き込まれ、波乱に満ちた大学生一年目だった。




「それはあれよ。蒼紗が春休み中に一人で旅行に行って、連絡がつかなかったからでしょう?スマホに連絡しても出ないし、家には明かりがついていないし。ようやく、蒼紗の家に明かりがついたから、思わず、家に押し掛けたのよ!」


 私が大学一年生で起きた出来事を振り返っている間に、ジャスミンがぶつぶつと文句を言っている。


「蒼紗、そいつのことは気にしない方がいいと思うぞ。気にしたら負けだといい加減、気付いたらどうだ?」


「九尾、それは言いすぎですよ。僕もそう思いますが、それでも口にしていいことと悪いことが」


「翼、すでに口に出しているから、お前も同じだ」


 ジャスミンの言葉に、身も蓋もない意見が上がった。彼らが私の家に居候をしている、九尾と翼君、狼貴君の三人だ。


 白に近い金髪に金色の瞳で、頭に狐の耳とお尻に尻尾が生えている少年の名前は九尾。彼は狐の神様らしく、私の平穏な大学生活を壊したのは九尾だと言っても過言ではない。彼のせいで、残りの二人の少年は犠牲になったともいえる。


 残りの二人にも、ケモミミ尻尾が生えていた。うさ耳にウサギの小さな丸い尻尾、狼の耳にふさふさした尻尾。彼らはもと人間だったが、今では九尾の眷属となっている。翼君と狼貴君だ。




「ジャスミンは、私以外にも友達がいるでしょう?わざわざ春休みまで、私の家に押し掛ける必要もないのでは?」


 私がジャスミンと呼んでいる女性は、私と同じ大学に通う同級生だ。私のことが好きすぎて、私の家まで押しかけたり、私の服装をまねてきたり、ちょっとうっとうしい存在だ。とはいえ、私の存在を気味悪く思わない、私の人とは違う体質にも、気にしないで普通に接してくれるところをうれしく思う自分もいた。


 ジャスミンとの出会いは、あまり良いものではなかった。亡くなった西園寺桜華のファンだったみたいで、私と彼女が仲良くしているのが気に食わず、食って掛かってきたことは懐かしい思い出だ。しかし、西園寺桜華は亡くなり、いろいろ大変なことが起こった。その時に、ジャスミンが危険な目に遭ってしまう。たまたま、私が助けてあげたのだが、そこから、彼女は私に付きまとうようになった。これまでの行動が嘘のように、私に好き好きアピールをしてくる。


 彼女も実は、私と同じ特殊能力の持ち主で、能力者だった。本名は佐藤蛇須美さとうじゃすみ。変わった名前で、彼女自身が「ジャスミン」と呼んでといったので、私は彼女をジャスミンと呼ぶことにした。とはいえ、どうやら私ししか、彼女のことをジャスミンと呼んでいないようだ。まあ、佐藤さんと呼ぶにしては、親しい間柄だし、かといって、名前は呼びにくいし、私は今年もこのままジャスミン呼びすることにした。


 



「ピンポーン」


 インターホンが鳴ったので、誰が着たのかを確認すると、そこに映っていたのは、黒いスーツを身にまとった男性だった。


「朔夜さんの様子を見に来たのですが、家に入れてもらえますか?」


 彼の名は車坂。私のアルバイト先である塾の上司だ。ただし、彼もまた、人間ではなかった。彼は、死神なのだ。私の特異体質と九尾のこの町での行いのせいで、死神にまで目をつけられてしまった。


 他にも、変な人が私の周りをうろついているのだが、それは大学が始まってからおいおい説明するとしよう。


 とりあえず今は、春休みである。春休みにとある理由で京都に旅行に行っていたので、残り少ない春休み。それなのに、その残りの春休みは、人間(私が大好きな変人)、神様とその眷属、死神たちに囲まれて過ごす、愉快な日々となった。


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