中編かも
続きです。
まだ、続きます。たぶん。
よろしくお願いします。
処方箋
キニナルコ二キヅイテモラオウ薬
1日1錠 朝食後に服用してください
用法用量をお守り下さい
白夢病院
笠木勇気は、7時に目覚め、薬の処方箋を見る。
家に病院から帰ってきて2時間の仮眠をとった。2時間前の事なのにあの病院のことは夢みたいだ。
朝食のパンを齧り。家族にばれないように部屋で薬を服用した。
体に変化はない。まあ、嘘でも無料だったのだから別に気にはしないけど。
「行ってきます。」
7時50分に家を出て、最寄りの駅に歩き出す。
電車に乗り学校に向かう。満員電車の中は皆、この世の終焉に向かうような絶望顔。
「いつもと、変わりないな。」心の中でそう呟いて、学校前の駅で降りた。
学校の奴らが沢山いるけれど僕になんて一瞥もくれない。僕は、友達がいないのだ。むしろ嫌われているのかな?勉強もできないし、運動もダメ。おまけに顔もイケメンとは程遠い。所謂フツメン。
「キモイ」「キタナイ」「ジャマ」
皆、口を開けばこんな事ばかり言ってくる。
校門の前を通り過ぎる。前から女子グループ。その中に、僕のアイドル、由衣ちゃんもいた。
女子たちが軽蔑の眼差しで僕の横を通り過ぎる。いつもの事だ。
でも、驚いた。由衣ちゃんだけが僕の目を見つめて通り過ぎて行った。
自惚れなのかな?気のせい?それでも、いつもと違う空気感を感じた。
クラスの自分の机にカバンを置き腰を下ろす。勿論、始業チャイムまで顔を伏せる。
「おはよう。」
爽やかなフレグランスと共に思いがけない声が飛んできた。
顔を、上げれば由衣ちゃんが立っていた。それも、僕の目を見つめて。念のため、周りを見渡す。僕に対してじゃなかったら恥ずかしいし。
誰も周りにはいなかった。
「どうしたの?笠木君。オハヨウは。」
やっぱり、自分に対してだった。心躍り。顔が紅潮しているはずだ。
「おはよう。由衣ちゃん。」
思わず目を伏せてしまった。
「変なの。笠木君。ふふ。」
夢の様だった。由衣ちゃはそれだけ言って行ってしまったけど、ほかの女子と違わず軽蔑の視線しか感じたことはなかったから。「おはよう」だけじゃなく微笑んでくれた。
こんな事で喜ぶなんて我ながらキモイ、童貞かよ、と思ったけどそのぐらいうれしい。あっ、勿論童貞です。なんの、告白だ【(/ω\)】
この日は、これきりだったけどあの薬、ヤバくないか?とやっと実感した。
夢見心地で家路につき、明日はなにが起こるんだろう?とキモイ想像をしてその日は眠った。
次の日、興奮して5時に起きてしまった。柄にもなく教科書を眺めて過ごした。
7時になり、朝食のご飯を急いで食べた。早く薬が飲みたい。
もちろん薬を服用して通学した。
朝の電車での話。吊革に掴まり、うなだれていたら肩を叩かれた。
「笠木君、おはよう。初めてだね、電車で一緒になったの。」
由衣ちゃんだった。「今日も、眩しい笑顔だね。」そんな言葉は喉の奥に飲み込んだ。
それに、由衣ちゃん、一緒になるの初めてじゃないよ。(´;ω;`)でもそんなこと、どうでも良かった。
「おはよう。由衣ちゃんもこの電車だったんだ?。たまたま、今日はこの時間に乗ってみたんだ。」
とりあえず話を合わせる。今日は、目も見れる。慣れかな?。
「テストもうすぐだね。勉強してる?。」
「うーん、教科書は眺めているけど。自信はないな。由衣ちゃんは?。」
教科書を眺めているのは本当だけど、頭には全然入ってない。
「私も、自信はないな。親からのプレッシャーもすごいし。」
御謙遜を。由衣ちゃんは、容姿だけではなく頭もいいのだ。
「まぁ、お互い頑張ろう。あっ、もう着くね。」
「そうだね、じゃあ教室で。」
由衣ちゃんは、電車を降りいつもの女子グループの中に消えていった。
このような、会話が数日続いて薬も消えていった。
もしやと思い、薬が無くなった次の日は何もせずに学校にいった。
結果は、惨敗。由衣ちゃんは、僕を忘れたように一瞥もくれはしなかった。
ちなみに、テストも惨敗。
病院に行かなくては。
センセイから受け取った紙をポケットから取り出し書いてある番号に電話をした。
1回目のコールが終わる前に食い気味に応答した。
「お電話有難うございます。白夢病院です。」
ナナオだ。
「笠木です。薬を出して頂きたいのですが。」
「笠木様ですか。お薬ですね。でわ、再診のご予約をお入れいたします。」
妙に手際がいい。暇なのか?
「笠木様、明日の午前4時は、如何でしょうか?。」
やっぱり、朝なのか。まぁ、仕方ない。
「じゃあ、その時間で。あの、場所は?。」
「この前と、同じです。ただし、お渡ししたその紙を忘れずに。」
この、紙切れが必要なのか。捨てるとこだった。アブナイ。
「着いたら、この医院の電話番号に目を瞑りながら発信してください。それでは立て込んでいるので。失礼します。」
ガチャ!!
忙しいのかい!嘘くさいけど。
午前3時に目覚ましをセットして早めに就寝した。
目を擦り御苑に着いたのは3時50分
早く着いてしまったが、このぐらいは誤差の範囲だろう。電話することにした。
番号を打ち。目を瞑り。発信した。
ツーツーツー
あれ、通話中か?と目を開けたらレンガの一本道が目の前に広がった。
もう、このぐらいじゃ驚かないよ。
病院の前には、ナナオが居た。掃き掃除をしている。すぐに、こちらに気づいた。
「笠木様、おはようございます。お待ちしてました。どうぞ、センセイがお待ちです。」
黒髪を、たなびかせナナオが病院の扉を開けた。
今日は、そのまま診察室に招き入れられた。
「お待ちしてました笠木様。また、お越しになられたという事はお薬はお気にめして頂けたようですね。」
センセイは、口元を半月の形にして笑っている。勿論、目は眼鏡で伺い知ることはできない。
「今日はどのような、お薬をご所望で?。」
そう聞かれたら同じ薬はつまらないなと素直に思った。自分の欲望も素直に話そう。
「あの、好きな子と付き合いたい。可能ですか?。」
センセイの口角がさらに吊り上がった。
「それは、それは、欲深いですね。」
センセイの眼鏡に自分の顔がチラッと反射した。
本当に、欲深い顔を僕はしていた。
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