アルコールハラスメント
※本作品は飲みゲー否定するつもりも、推奨するわけでもありません。お酒は適切な量と適度な回数でお呑み下さい。
縦飲みやサークル呑みにはには気をつけよう。そして先輩方は強制しないように。酒は呑んでも飲まれるな。
「今日は皆さんお疲れ様でした!乾杯!」白帝大学ダンス部の定期発表会後の打ち上げにおいて、それは起こった。
「おい!栗橋。お前、今日誕生日なんだよな?めでたく20歳。合法で酒飲めるぞー!」部長、冴山常春は酒を勧めた。
「俺は、良いっすよ。まだ酒なんて早いですから。遠慮しておきます。」
彼は、石橋を叩いて渡るタイプの男であった。栗橋実穂と言う名前で、Mihoとステージネームを名乗っていた。一人称は俺でも可愛い顔立ちである。
「そんな事言って。お前が今まで飲んでたのは、ジュースじゃなくてサワーだぜ?お酒だぞ。何を怖がる必要があるんだ?おいおい。」冴山は追い詰める。
彼自身もアルハラに遭っていたが、それに気付いていない。正確に言うとアルコールハラスメントという概念を持ち合わせていない恐ろしい男であった。酒には強い男である。
「えっ!そうだったんですか。そんな筈は有りませんよ。あれはジュースじゃないんですか?」
「カシスオレンジとかは酔わねーよ。熱っぽくならなかったか?人によっては顔が熱いと感じたりする人もいる。大丈夫だ。お前は強い、さぁ参加しろ。飲みゲーの輪に!」
「やめておきますよ。ここで命を落としたら良い事無いですから。」彼は冷静に考えて拒否した。
「お前、声が高いしここで逃げたら、俺は一生お前を女として扱うぞ。ここで逃げたらチキンだぜ!あの事も言いふらしてやる。」
「分かりましたよ。参加してやる。死んだら責任取って下さいよ!」
「おっ!栗橋が参加してくれることになりました!イェーイ。」
「じゃあ、最初は山の手線ゲームからやっていくぜ!ダンス部最高だと思ってるいのちゃんから始まる山の手線ゲーム!」
『イェーイ』『ヒューヒュー』などの声が聞こえる。やはり宴会は騒がしい。白帝大はFラン。それだから親には悪いけど遊んで暮らせる。
山の手線ゲームか。前にやったことがある。絶対勝ってやる。
「赤い食べ物!」
『パンパン』
「唐辛子」伊野先輩が言う。
『パンパン』
「明太子」同級生の遠野が答える。
『パンパン』
「トマト」冴山部長が言う。
『パンパン』
「イチゴ」山崎が言う。
『パンパン』
やばいぞ、出て来ない次の次が俺の番だ。ネタが切れている。
「マグロの赤身」
『パンパン』
「…西瓜」
「あれ?栗橋君ちょっと遅かったんじゃね?アウトー。」伊野先輩が言った。冴山部長の命令なら受け入れないが、伊野先輩なら仕方が無い。4年の先輩だから。
焼酎100mlを水割りで呑んだ。結構酔いが回って来た。それでも、酔ったと認めさせて貰える雰囲気じゃなかった。
「栗橋君、赤くなってきたなぁ。色っぽくなって来たねぇ。」
失礼な、俺は男だ。女なんかじゃない。キモイな冴山部長は。
「もう一回、行くぞ!今度は国の名前だ!栗橋からいいぜ。」
「アメリカ」
『パンパン』
「イギリス」
『パンパン』
「フランス」
『パンパン』
「ロシア」
『パンパン』
「スペイン」
この国の名前は恐ろしく続いた。マニアックな国の名前まで進んだ。
「リヒテンシュタイン」現在冴山部長。順番は変わらない。
『パンパン』
「トンガ」
『パンパン』
「タンザニア」そう俺は答える。
『パンパン』
「モロッコ」伊野先輩が答える。
『パンパン』
「ナウル」
『パンパン』
「ジンバブエ」
『パンパン』
「ブータン」
『パンパン』
「グルジア」
『パン…』
「今、ジョージアに変わったんじゃなかった?」遠野が言う。
遠野!何やってるんだ。呑ませるなよ。俺に。
「そうか。そうだな。赤ワイン飲んでもらうか。グラス1杯。」
またしても注がれるのであった。
そして意識を失った。急性アルコール中毒になったようだ。目の前が真っ暗になり何も見えなかった。
次回からアクションシーンへ。