第3話 呼び出し
〇第3話 呼び出し
少年、キルは空を見上げる。
雲1つなく澄み渡った空は眼下に広がった街をさらに美しく見せる。
ファルマ帝国の首都ミシュルナ。
別名白亜の街と呼ばれ白で統一されたこの都市は城を中心として半径3キロメートルほどの地点を城壁がぐるりと囲んでいる。
「……はぁ」
ため息をついたキルは街に視線を移す。
人が点ほどの大きさで見えるがいたって平和な光景だ。
「宣戦布告された、とは思えない呑気さだな」
国境の街が襲撃を受けたという情報と共に飛び込んできたのはウェリチエ公国からのファルマ帝国に対する宣戦布告だった。
ここ300年ほど近辺での小競り合いや他国の戦闘がありはしたものの実質、帝国軍の本隊が主となって動いたこととはない。
「何が目的なんだろう……」
「レイチェだと思われます」
背後からかかった声に振り向くと城仕えのメイド服を着た少女が一礼する。
「なんだ、アリシアか。レイチェが目的だろうってどういうこと?」
「単純に考えてみてください。ウェリチエ公国にはレイチェの加護はありません。そして十数年前のアレで弱体化しております。雪に閉ざされ、作物の育たぬ土地に対してファルマは肥沃です」
「んんー……」
アリシアが口に出したレイチェという存在。
それは一言で言ってしまえば結晶だ。保有する国とそこに住む民に恩恵を与える強大な魔力の結晶。
世界に3つしかなくファルマ帝国はそのうちの1つを保有している。
それぞれ固有の特殊な力を持っておりファルマ帝国のレイチェは魔力の増強。
隣の大陸にあるリカン王国のレイチェは魔導機械の動力源。
そしてファルマ帝国の南に接し、ファルマ帝国の国教でもあるレイラウア聖教の総本山がある宗教自治区レイラウアのレイチェは想いの具現化と伝承。
ファルマ帝国の国教というだけではなくこの世界の大部分が信仰しているレイラウア聖教は独自の軍を持っている。
赤き刃と呼ばれる軍は騎士と呼ばれる兵士で構成されている。領土の大きさに比べてかなり人数が少ない赤き刃だがその構成員の質はどの国の軍よりも高く、国3つが束になってかかっても本気になった彼らには勝てないと言われているほどだ。
「弱ってる状態で自分よりはるかに強いヤツラと戦うのは負け戦だし、海を渡るのも大変。だったら博打でも油断しているファルマ帝国を狙って一気に決着をつけたほうがいいってことか」
「ええ」
「あれ?そういえば何か用があったんじゃないか?」
ハッとした顔をして口元に手をあてたアリシアの顔が青ざめる。
「そうでした!キルガルガ・ファローム様、シルヤザ女帝がお呼びです」
「え?陛下が?!」
「はい。正装で私室へ来るようにとのことです」
「わかった。すぐに向かう!ありがと」
次回、もっと詰め込みます
……これ、警告です
……リレー小説を読んでくれている人にはわかるあの人出てきます
戦闘シーンはない、はず