第13話 それぞれの目的
なんか内容かぶったような……
寝ぼけてたのか……?
「では、その儀式を行うには各氏族から1名ずつ代表者が必要なのですね」
「その通りです」
翌日、女帝に呼び出されたミラとキルはある儀式の方法をきいた。
キルからきいた話によるとファルマ帝国の皇位継承者は正当な後継者が特定できない場合、それぞれの氏族から1人ずつ代表者を選出して選出の儀式を行うという。
ファルマ帝国は周りの国々とは違い種族ごと、人間の中でも特徴や血筋ごとにいくつかの氏族に分かれて居住していることがほとんどである。大きく分けて帝都周辺に住む貴族階級の人間、海辺に住む海の民、森に住み薬学にたける森の民、放浪の氏族であるシャングリラ。人外ではエルフにはじまり小人やドワーフ、翼を持つ天空の民などがある。
その中でもファルマの根幹をなすいわゆる普通の人間である貴族階級、海辺の民、森の民、そしてエルフ。さらには国教であるレイラウア聖教でレイチェや《導師》からの使者であるという翼の生えた天空の民―――天使、術の行使者であるシャングリラの最低6人がそろえば儀式は出来る。
「……しかし、シャングリラは確か」
「それなら問題ない。あくまでその血、その素質があればよいというだけだからな」
「《導師》オリス、あなたの意のままに。では、残りは海辺と森の民と天空の民、ということになりますね」
「シルヤザ様、エルフが抜けています。それと……」
「貴族階級からはキル、あなたが出てください。そして、エルフは……」
女帝が手招きすると端で控えていた兵士の1人が進み出て礼をする。
「彼の名はロルフ。ジェレイ駐屯隊副隊長ダロンの息子です。弓の名手でもあるので旅の一員としても申し分ないでしょう」
「ロルフだ。よろしく頼む」
銀髪のエルフは軽く礼をする。
それに対し礼を返すのも忘れ叫んだのはキルだった。
「ちょ、ちょっと待ってください!儀式のナンタラカンタラは置いておくとして……旅って何ですか!?」
「あら、話し忘れていたかしら……。実はキルとミラ、それにロルフには先ほど説明した儀式で必要な氏族への交渉役……通達役をしてもらおうと思っていたところなのですが」
「……私たちに?」
「ピィー?」
驚くミラの方で真っ白い鳥も首を傾げる。
ピーチク改めラフレだ。始めは変わった自分の姿に少し戸惑いを覚えていたようだったが、部屋に戻った後の『彼女』は特に、何事もなかったかのように新たに用意された野菜を頬張り始めたのだった。《導師》の言うことが本当ならば、むしろ元に戻った、という表現が正しいというのもあるだろうが。
「これ以上の適任はいません。……平時であれば、シルフあたりに頼むのですが、今は平時とは言えない状況。兵士ましてや優秀な指揮官を動かせるような状況ではありません。それ以外では信用にたる者は少なくそして任せられるほどの技量を持ったものが見当たらない。そこであなた方です」
「へ?」
「キルやロルフであれば道中の魔物程度なら問題ありませんし、ミラ、あなたもタロカで素晴らしい活躍をしてくれたとか」
「あれはただ、必死で……偶然です」
「偶然でもウェリチエ兵数名を相手に生き延び、それでいて何人かは……倒しています。十分な腕でしょう」
迷いは微かに聞こえてきた声で消えた。
―――この旅路はそなたの記憶を紐解く鍵となろう
青紫色の瞳がミラを見据える。
その口元には微笑が浮かんでいた。
(私は私が何者であるか知るために)
キルやロルフは帝国のために。
それぞれの目的のための第1歩がこの日、始まった。