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IDOLA -puella-  作者: 白野十裏(元トリ)
第3章 《帝都》ミシュルナ
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第12話 ラントピリの王

予約投稿忘れてた……

 大理石を主につくられているこの城は夜より昼の方が美しいと言われている。それとは正反対に黒を基調につくられた街がレイラウア。宵闇の中に淡く浮かび上がる魔法灯の光が幻想的だという。


 ―――鳥よ 雪の如く白き鳥

    王よ 導け、彼の意のもとへ


    鳥よ 闇の如き黒き鳥

    夜よ 覆え、この安らぎを


    鳥よ 鮮やかな者よ

    記録せよ 行く末を


    飛べ飛べよ 聖なる地へ

    天の証 その胸に秘める者と共に

    彼の者の従士とならん


 古い、唄だ。

 レイラウアの聖典にも記されている唄でもある。そして、優しく穏やかな旋律から子守歌としても親しまれている。

 聞こえてくる旋律に懐かしさを覚えながら、歌声に導かれるように中庭へ出る。


 ―――Factum est autem sacrificium


 1曲唄い終わったのか曲調が変わる。

 先ほどの童謡のような曲調とは違って、荘厳なのにどこか物悲しさを感じる。知らない言葉だ。

 先ほどよりも声量が少なくなったのか、途切れ途切れに聞こえてくる声をたどる。

 薔薇で出来たアーチを潜り抜けた先に声の主はいた。

「Propter mundum……」

 月明かりに照らされた噴水の縁に腰掛けた人物。

 ピタリ、と唄が止む。

「……来たか」

「え?」

 人影は立ち上がるとミラの方を振り向く。

「……ミラ、こちらへおいで」

「どうして私の名前……って、あ!?」

 どこか聞き覚えのある声だと思っていた。それもそのはずだ。目の前にいる男とは昼間に一度顔を合わせているのだから。

 その時と服装や髪形が若干異なる。黒の法衣は動きやすそうな軍服へ、そして緩い三つ編みだった髪は今は団子にされ金の髪飾りでとめられている。

「《導師》……」

「跪くな。今、私は《導師》や《守護者》(ガーディアン)としてではなく……オリス、そう、ただのオリスとしてそなたと話がしたい」

 そう言うとオリスは再び噴水の縁に腰掛ける。

「……隣においで」

 言われるがままに隣に座る。

「……あの、私に話ってなんですか?」

「そうだな……、私は回りくどいことが苦手でね。単刀直入にいこうか。……過去を思い出したくはないか?」

「!」

「……私はそなたの事をよく知っている。何者なのかも、出自も、何もかも。もっともそなたは覚えていないだろうが」

 そこで言葉をきると軽くため息をつく。

「……だが、その様子では……ダメだな。思い出させるわけにはいかない」

「どうしてですか?」

「そなたが忘れている記憶は幸福な記憶であると共に、……つらい記憶でもあるからだ。過去にあった支えはもうない。たとえそなたが知りたいと強く願ったとしても、今、私はシャングリラのかけた術を解くことは出来ない」

「……」

「が、こちらからこんな話をしておいて何もせずに帰すことはしないさ。1つヒントをあげよう」

 オリスは宙へ手を伸ばす。

 するとどこからともなく飛んできた青い影がその手にとまる。

「ピー」

「ピーチク!?」

「ピィ」

 ピーチクは不思議そうに首をかしげる。

「あの、ピーチクが何か?」

「……ああ。『彼女』こそラントピリの王」

 オリスは両手でピーチクを包み込む。その隙間から淡い魔法の光が漏れる。

「『我は裁き。我は領主ケリントラ。我は監視者せかいのおう。古き盟約の元、ここに浄化の光を』」

 光がはじけ辺りが白く塗りつぶされる。

 光が収まるとオリスは手を開き差し出す。

 そこにいたのは青い鳥ではなく、白い鳥だった。くりっとした知性をたたえた青い瞳がミラを見つめる。

「え?……え!?」

「……これこそ本来の姿。ラントピリの王にして導き手……ラフレ」

「何が、何をしたんですか?」

「……ミラ、そなたと同じくシャングリラの術によって姿を変えられていたのだ」

「それって私も変えられていると!?」

「ああ。そしてそなたは記憶をも封じられている」

「封じられている……。それが、予言メネシスにも関係してくるんですか?」

「……大いに」

 俯く横顔からは彼が何を考えているのか読み取れない。

 青紫色の瞳には水面で反射した月明かりが揺れる。

「……そなたは『鍵』だ。この世界の鍵……その1つ。……これは私の賭け」

 自分に言い聞かせるように彼は呟く。

「あともう1つ。ピーチク……ラフレは何者なんですか?」

「ラフレ……彼女はラントピリの王と呼ばれる存在。教団の聖鳥として祀られているラントピリは人気のない山奥に住み、繁殖をするとき以外は群れず孤高の鳥と称される。だが、そんなラントピリの中でも王はいる。それがこのラフレ。……そして、その王こそ……歴代の教団の最高権力者と契約を結び仕えてきた《従士》の一片」

「《従士》……?」

「……《従士》とは主の忠実な下僕。その関係はレイチェと《守護者》(ガーディアン)以上の絶対的主従関係。……これ以上は私ではなく他のレイラウア聖教信者に聞いた方が分かりやすい説明をしてくれるだろう」

「まとめると、私の記憶はシャングリラによって封じられ姿も変えられている。ただその術を解くには私にとっての支えが少ない、覚悟が足りない……そして、ラフレはその記憶に通じるヒント。……そして、私の決断で何かが大きく変わる」

「……ああ」

「……もし仮に、私がこのまま何もかも投げ出し逃げたとしたら」

 その言葉にオリスは笑い声を漏らす。

「そなたは逃げ出すことはしない。いや、逃げようともそなたは自分を許さぬだろう?」

「そんなとこまで見抜けるくらい、あなたと私は親しかったのですか?」

「……さあ……思い出してからの楽しみとしておけばよいだろう」

「そうですね。……私は自分が何者なのかを知るために」

「そして彼らは己が目的のために……」


 ―――旅に出ようではないか



毎週木曜日更新にしよう

今のところ木曜日が一番パソコン触っている気がする

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