14バイトのオモイ
「お目覚めかい」
「ここは…」
気が付くと殺風景な部屋の中にいた。打ちっぱなしのコンクリート。今までいた場所と似ており、なんだかむかむかする。
「君と僕の関係を知っているかい」
ユリには質問の意味が分からなかった。看守長がなぜあんなことをし、自分を傷つけたのか。
看守長は口元をグイッとあげ、見たこともないような奇妙な笑顔でユリに言った。
「僕は君のお父さんだよ」
「‥え?」
ユリは驚きを隠せなかった。看守長は何を言っているのだ。
「看守長がお父さん?じゃ、じゃあお母さんは誰なの」
その時、看守長を似た制服を着た女性が部屋に入ってきた。手には二皿分のステーキのようなものを持っている。
「ほう、ちょうどいい。親子三人揃ったな」
まさか、この女性が…?
「お母さん…?」
ユリが女性に向かっておそるおそる話しかける。すると女性は、
「‥人違いです」
そう言って去ってしまった。
看守長の様子がおかしい。
「ふふっふうううふふふほははははははh」
看守長は肩を震わせおお笑いしている。目には涙すら浮かべている。
「看守長…?」
「さぁしちゅうを食べよう、せっかくこうやって前にあるんだ。食べなきゃもったいないな???」
「ねえ」
「おや食べないのか?じゃあ僕が食べてあげるよ、ほら、なんておいしそうなお肉なんだろうか?」
看守長がユリの分のシチューに手をかけ、肉を食べたとき、突然看守長の顔が真っ青になり今しがた食べたシチューを吐き出してしまった。
「看守長…?もしかしてこのシチューには毒が!?」
「‥お前はこのシチューを食べてはいけない」
「え?ほんとうに毒なの?」
「違う。ところでさっき母親の話を」
「あ、そう、さっきの女の人がお母さんなの?」
看守長は口をあわただしげに動かし、一息ついてこう言った。
「いいや、この肉が、お前のお母さんなんだよ」