13バイトのオモイ
「久しぶりだね」
二人の前に現れたのは看守長だった。後ろに護衛の人間はいるものの看守長は武装せず毅然と立っている。
「看守長!」
『なにものだ』
「こいつは驚いた。人工知能か?自分で撃った人間のことぐらい覚えておいてほしいものだ」
「イザヤ、彼は敵ではない、私の事を気にしてくれる優しい人なの」
『てきい をかんじる。きけんだ』
「私のことを撃ち殺してくれても構わない。しかしどうしても聞いてほしいお願いがあるんだ」
「撃ち殺すなんて。イザヤとむやみに人を傷つけない、て約束したの。大丈夫だよ看守長」
看守長は一歩前に出た。
「君は外に出て随分と明るくなったようだな」
「うん、看守長には悪いけど、とても楽しい!あと、痛み止めありがとう。すごくよく効くよ」
「それはよかった。で、お願いなんだが」
ロボットが警笛のような音を出す。ユリを看守長は顔をしかめた。
『ユリ ちかづくな』
「イザヤ、五月蠅いよ!ちょっと黙ってて」
ユリはそう言ってロボットの腹部の小さなボタンを押した。
ロボットは電源が落ちたように照明が落ち、動かなくなった。
「ごめんね、充電してるときここが光ってたからこのボタンが電源ボタンかな、て思ったの。で。看守長、お願いって何?」
「あそこへ戻ってほしい」
「え」
そうい言い終えた途端、後ろにいた護衛がユリの腹部へ向けてショットガンを放った。血が大量に吹き出す。
「えっ」
看守長がユリの穴が開いた腹部へ手を突っ込み、しばらく手を動かし、やがてユリが依然のみこんだ“痛み止め”を取り出す。
「う、うううう」
「これはね、痛み止めでもあるけど発信機でもあるんだ。捨ててないで良かったよ。先日の襲撃班も私が送らせたんだ」
「かん…しゅ……」
「さぞ痛いだろう。君には肉を生産してもらわないとね。一人でも欠けると大変なんだよ。私にも立場があってね。そろそろ静かにしてもらおう」
看守長のもとへ駆け寄ってきた護衛はユリの顔へショットガンを放ち、頭部は粉々になった。
「ロボットは…まあ放っておいて良いだろう。壊せないしな。第二監獄へ行くぞ」
痛みと動揺で動けないユリは看守長に連れて行かれた。