11バイトのオモイ
ロボットが目から光線をだし、鹿と思しき動物の首をはねる。
「ちょ、なにしてるの」
『ごはんを』
「私食べなくても生きていけるからそんな怖いことしないで」
ユリが言い終えたころにはシカの肉はロボットによっていい塩梅に焼かれていた。
『ユリはにんげんらしいせいかつをしなくてはならない』
「ありがとう‥、そうだ、あなたにも名前を付けてあげるよ」
『わたしのなまえはイザヤ』
「あ、はい…」
「時々、お母さんの夢を見るの」
『ん?』
とある日の昼下がり、ユリは、どこか遠くを見るような目で話し始める。
「お父さんは物心ついた時から仕事でいなくてね、お母さんとの思い出しかないんだけど。
お母さんはとっても厳しいけどとっても優しい人だった。私が家のお手伝いすると頭をわしゃわしゃやってきて、『えらいね』って。
でも、それしかお母さんのことは覚えてないし、私の事もほとんど覚えてないの。自分の名前も、年齢も‥ほとんどここにきてからなぜか思い出せなくなった。
気が付いたらよくわからないところにいて、大きいプールの中にいたの。上にも蓋がされていて、息が出来なくて、とても苦しかった。また気を失って、その時にはあの牢屋にいて、死なない体になっていたの。初日にすこし聞こえたんだけど、私みたいな人が何人かいるみたいなの。できればお母さんともう一回会いたいし、私と同じ境遇の人も救いたい…ねぇイザヤ聞いてる?」
『じゅうでんちゅう』
「‥」
ユリはロボットの充電が終わってから同じ話を繰り返した。
「娘の近くにはまだロボットがいるのか?」
「はい、一時も離れようとしません」
「それは厄介だな」
「しかし、ロボットは太陽光で充電するらしく、日中に一時間程度活動を停止する時間帯があります」
「‥なるほどな」