初めての豪邸訪問1
これまでのあらすじ)
パインは、カイン王国で知り合ったアリスと傭兵試験に合格する。
傭兵協会会長のバーバラは、試験中に起きた不可解な出来事を調査する為、
試験官サールを2人に同行させる。
3人は、カルラド王国の天馬の尻尾亭に拠点を移すことを決めた。
そこで、姉を探す少女と出会った。
突然の襲撃に驚く4人。
ジェイルと名乗るヒーロー(?)に助けられる。
リナの持っていたペンダントに刻まれた魔法陣。
どうやら、このペンダントを狙っているらしい。
一体このペンダントにどんな秘密があるというのか?
連合暦20年3月20日、
最初に天馬の尻尾亭の一階に現れたのは、アリスとリナだった。
アリス:「おはようございます。」
リナ:「おはよ。」
ドレアル:「おっ、早いな。おはようじゃな。」
その時ドレアルは朝食を作っていた。
アリス:「手伝いますね。」
リナ:「リナもやるー。」
ドレアル:「では、食器を並べてくれ。」
アリス:「はーい。」
そう言うと、2人は食器を並べ始めた。
その時、扉を開けて、1人の男が入ってきた。
アリスがそちらを見る。
アリス:「お店は、夜からなのですが、、、。」
男はアリスの胸のペンダントを見た。
男:(あれは、、、。)
そして、少し考えると話始めた。
男:「お嬢さん、ちょっとお話が、、、。」
アリスは男をじっと見つめる。
そして、言った。
アリス:「あっ、ジェイルさん、
おはようございます。
昨日はありがとうございました。」
突然名前を呼ばれ、ジェイルは驚いた。
ジェイル:(えっ、なぜ分かった?)
その疑問を口にする。
ジェイル:「なぜ、私がジュエルだと?」
アリスは、人差し指を立て、胸の位置まで上げると、
左右に動かしながら言った。
アリス:「簡単なことですよ。
背丈、髪型、輪郭、そして決めては声です。
これだけ一致する人はめったにいません。」
ジェイルはしゃがみこむと、頭を抱え、
なにか悩んでいるようだった。
ジェイル:(むむむ、私の知っているヒーローは、
目を覆うマスクやめがねだけで、
別人になれているのに、、、。
いったい、何故だ?)
しばらくの間じっとしていたが、
突然立ち上がると、何事も無かったように言った。
ジェイル:「何を隠そう、実は私が、あのジェイルなのです。」
アリス:「分かってますよ。で、なんでしょうか?」
ジェイル:(んー、どうも計画通りに進まないな。
まあいい、本題に入るか。)
ジェイル:「実は、ローザさんのことについてお話が、、、。」
アリス:「えっ、ローザさんを知っているのですか?」
ジェイル:「ええ。知っています。
その件について、お話しがありまして、
今日の昼に我が家に招待したいと思い、
伺ったしだいです。」
アリスは即答した。
アリス:「是非お願いします。」
ジェイル:「それでは、昼に迎えの馬車を来させますので、
それで来て下さい。」
アリス:「はい、分かりました。」
ジェイル:「それでは、後ほど、、、。」
そう言って、立ち去ろうとした、その時。
パインとサールが現れた。
そして、ジェイルの後姿を見るなり言った。
パイン:「あ、ジェイルさん、おはようございます。」
ジェイルは後ろを振り返る。
ジェイル:(なぜ、後ろ姿だけで、ジェイルだと分かった?
こいつら、超能力者か?)
ジェイル:「おはようございます。それでは、急ぎますので。」
そう言うと、逃げるように帰って行った。
2人はアリスに近づく。
パイン:「あいつ、何しに来たの?」
アリス:「ローザさんのことを知っているみたい。」
パイン:「えっ、なんだって。」
アリスは今の出来事を説明した。
パイン:「そうか、それなら、話を聞いてみないとな。」
パインは何か思案しているようだった。
アリス:「そういえば、あんなに遠くから何でジェイルさんだと
分かったの?」
パイン:「えっ、ああ、あいつ手にマスクとマント持ってただろ、
あんなもの仮装パーティーぐらいしか使わないから、
ジェイルだと思ったんだよ。」
アリス:「なるほど、そっか。」
迎えの馬車が到着するまで、今後の事についてドレアルを
交えて話し合った。
そして、丁度昼の12時にポールと名乗る執事が現れた。
アリスは、馬車を見ると考え始めた。
パイン:「すげー。こんな立派な馬車初めて見たよ。」
サール:「えぇ、わたしもです。」
そして、ポールが馬車の扉を開く。
3人が馬車に乗り込むと、ゆっくりと移動し始めた。
パイン:((可哀想だったけど、
リナを置いてきたのは正解だったな。))
サール:((えぇ、ジェイルが敵か味方か分からない状況で
連れて行くのは考え物ですからね。))
パイン:((ジェイルって何者なんだろうな?))
サール:((まあ、ジェイルが普通の人とは違うということは
分かりますけどね。))
アリスは、ずっと口を閉ざしていた。
それが何故かは2人には分からなかった。
アリスに聞いてみることも考えたが、
なぜか聞いてはいけないという雰囲気がそれを阻止していた。
パインが外を見ると、馬車は王宮へと向かっていた。
パイン:((おいおい、このまま行くと王宮だぞ。
まさか、王族ってことはないだろうな?))
サール:((まさか、そんなことは無いでしょう。))
そんな話で盛り上がっていると、馬車は竜またぎの門が見える所
まで、やってきた。
パイン:((まさか、本当に、、、。))
サール:((・・・。))
馬車は門を通過していく。
パイン:((よかった。通過したよ。))
サール:((えぇ、よかったです。
さすがに、王族とは事を構えたくないです。))
パイン:((だよな。))
馬車はさらに進み、豪邸の立ち並ぶ地区に入って行った。
パイン:((どうやら、ジェイルは貴族みたいだな。))
サール:((そのようですね。))
馬車は、大きな門のある敷地の中に入った。
パイン:「うぁ、広い庭、でかい家。これは相当の名家だな。」
サール:「すごいですね。」
2人が関心していると、馬車は止まり、執事が扉を開ける。
ポール:「到着いたしました。こちらへおいで下さい。」
3人は、屋敷の中へと入った。
そこは、まるでお城を連想させる玄関ホールだった。
正面には2階へと続く階段があり、左右には豪華な扉があった。
パインとサールはその装飾に感激しながらポールの後に続いた。
左側の扉が開かれる。
そこには20人以上座れそうな大きなテーブルが置かれており、
奥には暖炉があった。
上を見上げると、2階の廊下のようなものが周囲をぐるっと
回っていた。
ポールに入ってすぐの位置に座るように言われ、
それに従った。
しばらく待つと、暖炉側の扉からジェイルが現れた。
ジェイル:「ようこそ、我が家へ。」
パイン:「前置きは良い、ローザの話を聞かせてくれ。」
ジェイル:「そう慌てることも無いですよ。
いずれ、分かることです。」
そう言うと、ジェイルが右手を上げた。
すると、目の前に複数の鉄の棒のようなものが落ちてきた。
パインとサールは、周りを見る。
周りは鉄の棒で囲まれていた。
パイン:「くそ、計ったな。」
サール:「やられました。」
突然アリスが声を上げる。
アリス:「やっと、思い出した。
あなた、ロミュラン伯爵家の者ね。」
そう言って、ジェイルを指差す。
ジェイル:「ほう、私を知っているのか。
まあ、いい。
とりあえず、ペンダントを渡してもらおうか。」
突然、アリスがきょろきょろと回りを見回す。
アリス:「えーーーーーっ。
どうなってるの?
なんで、閉じ込められてるの?」
パイン:((おいおい、今頃、気付いたのかよ、、、。))
サール:((今は、ジェイルにペンダントを渡せと
要求されているところです。))
アリス:((んー。どうしようか?))
パイン:((殺して奪わないところを見ると、
危害を加えようとは思っていないみたいだし、
とりあえず、渡して様子を見ないか?))
サール:((私も賛成です。))
アリス:((分かった。))
アリスは首からペンダントを取ると鉄格子の間から差し出した。
ジェイルはゆっくりとアリスに近づきペンダントを受け取る。
ジェイル:「ハッハッハッハッ!!
ついに、2つのペンダントがそろった。
これで、ついに念願の力が手に入るのだ。」
その時、ポールがジェイルに近寄ると耳打ちした。
ジェイルは少し驚いた顔をした。。
ジェイル:「なに?父上が、、、。」
そして、玄関ホールへ向かって走り出す。
しかし、鉄格子があって、そちらへはいけない。
ジェイル:「なんだ、この鉄格子は!!
玄関ホールへ行けないだろ!!
誰がここに出したんだ。!!」
3人は同時に思った。
3人:((お前だよ!!))
ポールがジェイルをなだめると、
2人一緒に反対側の扉から出て行った。
アリス:((ポール、かわいそう。))
パイン:((ああ、あれの執事はストレスたまるだろうな。))
サール:((はっきり言って、私には無理です。))
3人は、囚われていることも忘れて、雑談に花を咲かせた。
しばらくすると、ジェイルがポールを引き連れて戻ってきた。
何故か、ジェイルの顔は青ざめていた。
ジェイル:「お前達を解放する。
すまないが、
これから行くところに付き合ってもらう。」
そう言うと、何かポールに指示する。
ポールがレバーのようなものを上げると、
「ゴゴゴゴゴゴ、、、。」という音して、
鉄格子が上に上がって行った。
パイン:((なんか助かったみたいだな。))
アリス:((よくわからないけど、助かったね。))
サール:((えぇ、いったい何処に行くというのでしょうか?))
3人は何処に連れて行かれるのだろうか?
謎は深まるばかりである。