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魔獣の壺 - 本編 -  作者: 夢之中
新たなる決意
8/99

初めての人探し

これまでのあらすじ)

傭兵試験を受ける為にカイン王国へとやってきたパイン。

会場で知り合ったアリスと共に無事に試験に合格する。

試験中に起きた不可解な出来事。

傭兵協会会長のバーバラは、試験官サールを2人に同行させる。

3人は、初めてのクエストを完了するも、

カイン王国での少ないクエストでは生活もままならない。

3人は、カルラド王国の天馬の尻尾亭に拠点を移すことを決めた。

到着早々、ひったくりにあうアリス。

そして誰とも分からぬ人物に助けられる。

彼は何者なのだろうか?

連合暦20年3月19日、

ドレアルは、想像以上に親切だった。

家賃こそ月に銀貨2枚と通常価格だったが、

なんと朝食を付けてくれたのだ。

3人は、ドレアルと共に朝食を取っていた。


アリス:「もぐもぐ、、、もぐもぐ、、、。」

パイン:「まさか、朝食までとは思ってもいませんでした。」

サール:「本当にその通りです。」

アリスも頷く。

ドレアル:「気にするでない。

     どうせ捨ててしまうものだからな。」

パイン:「それに、古いベットも助かっています。」

ドレアル:「そうかそうか、それは良かった。

     ところでお嬢さん。

     どこかで会った事は無かったかの?」

アリス:「んっ?、もぐもぐ、、、ごっくん。」

水を飲むと胃に流し込む。

そして一息つくと口を開いた。

アリス:「いえ、カルラド王国に来るのは初めてですので、

    お会いした事は無いと思いますよ。」

ドレアル:「そうか、思い過ごしか、、、。」

その時突然、店の扉が大きな音を立てて開いた。

4人が扉に視線を向ける。


1人の男がふらふらと近づいてくるのが見えた。

そして倒れこむ。

4人:「!!」

アリスが立ち上がり男に近づく。

3人もその後に続く。


アリス:「大丈夫ですか?」

そう言うと祈り始めた。

男は、アリスを見上げ、かぼそい声で言った。

男:「ロ、ローザ、こっ、これを、、、。」

そして、右手を差し出そうとしたが、力尽きた。

男の手には勾玉のような物が付いたペンダントが握られていた。

その勾玉には魔法文字のようなものが描かれていた。

ドレアルはそれをじっと見つめている。

ドレアルはアリスの肩に手をそっと置く。

アリスがドレアルを見ると彼は首を横に振っていた。

ドレアルは、3人に部屋で待っているように言うと、

警備兵を呼びに行くと言って出て行った。


3人は部屋で今の出来事を話し合っていた。

パイン:「確かに、アリスを見ながらローザって言ってた。

    アリス、その名前に心当たりは?」

アリス:「んー、記憶にないですね。」

サール:「それに、あのペンダント。

    魔法文字の様な模様が入っていました。

    いまさらですが、もっとよく見ておけばよかった。」

そんな話を延々としていたところ、ドレアルの声がした。


ドレアル:「もう、降りてきてもよいぞ。」

そう言われ、3人は1階へと向かった。

そこには、すでに誰もいなかった。

ドレアルが言うには、ただの行き倒れとして処理される

との事だった。

「良くあることだから、もう忘れろ」とも言われた。

そして、気分転換に王都見学を進められた。


3人はその助言に従い、王都見学へと行くことにした。

しばらくの間、先ほどの出来事が頭から離れなかったが、

王都見学をしている間に記憶の底へと追いやられていった。


3人は王宮の正門の前にいた。

目前には、巨大な門があり、その先に立派なお城が見えた。

アリス:「見て見て!!すごーい。」

パイン:「ああ、立派な門だな。」

サール:「この門は、竜またぎの門とも呼ばれています。

    竜をまたぐほど巨大という意味らしいですが。」

パイン:(どこかで似たような話を聞いた気もするが、

    意味がちょっと違っていたな。

    竜が避けて通るだったかなー?)

パインはそれが何だったか思い出すことが出来なかった。


その時、アリスに近づいてくる少女がいた。

少女:「ローザお姉ちゃん?」

アリスが少女を見る。

少女:「やっと見つけた。ローザお姉ちゃんだ!!。」

そう言ってはしゃぎだす。

アリスがなだめるように言った。

アリス:「ごめんね。ローザお姉ちゃんじゃないの。

    私はアリスよ。」

少女:「えっ、違うの?」

アリスの右手を取ると手の甲を見た。

そして、下を向いて黙ってしまった。

しょぼんとする少女を見てアリスが口を開く。

アリス:「よし、なにかおいしいものでも食べよっか。

    お姉ちゃんがご馳走してあげる。」

その言葉に少女はアリスを見上げると、笑顔で答えた。

少女:「うん。」


4人は近くのお店でくつろいでいた。

少女はアリスの膝の上にちょこんと座ると、

おいしそうにオレンジジュースを飲んでいた。


少女はリナと名乗った。

姉と一緒に両親に会いにここに来たが、

朝起きると姉がいないことに気付き、

姉を探しまわっていたとの事だった。

ローザは手の甲に蝶の形のアザがあり、それが無かったため

アリスが別人と分かったらしい。

パイン:「なるほど、で、どうする?」

アリス:「もちろん、ローザを探すでしょ。」

パイン:「そう言うと思っていたよ。

    じゃあ、早速探しにいくとするか。」

そして、3人はリナと一緒にローザを探すことになった。


当然の事だが、捜索は難航した。

地理に詳しくない3人が集まっても迷子になるだけだった。

3人は裏路をさ迷い歩いていた。

パイン:「んー、ここは一体どこなんだろうな?」

サール:「さー、どこでしょうね?」

アリス:「わかんない。」


そのとき、路地の角から男が現れた。

その男がこちらを見ると大声をあげた。

男:「いたぞー!!。」

その声で、数人の男達が集まってきた。

男達は手に武器を構えていた。

4人は男達と対峙する。


男:「おとなしく、ペンダントを渡してもらおうか。」

アリスはリナを自分の後ろへと下がらせる。

パイン:「ペンダントだと?何のことだ?」

そう言いながら、戦闘体制へと入る。

男:「殺してもかまわん。やれー!!」


その時、上の方から笑い声が聞こえてきた。

???:「ハッハッハッハッハッハッ!!」

全員が上を見上げる。

そして、妙な歌声が聞こえてきた。

???:「このー世にー♪、悪のー♪、あーる限りー♪

    どこからともなく♪、現れてー♪

    悪を倒して♪、去って行くー♪

    その名をー♪、その名をー♪、尋ねたらー♪

    皆が答えるー♪、そーの名前ー♪

    ジェイル♪、ジェイル♪、ジェイルー♪」

何故だかわからないが、男達はその歌が終わるまで待機する。

そして、男がお決まりの台詞を発した。

男:「貴様、何者だ?」

突然、屋根から男が飛び降りると1回転して着地しようとした。

しかし、着地に失敗してこける。

その男は、目のところを隠すマスクをしており、

そしてマントを付けていた。


アリスが近寄って声をかける。

アリス:「あのー、大丈夫ですか?」

ジェイルはすっと立ち上がると、何事も無かったように答えた。

ジェイル:「お嬢さん、下がっていてください。

     これは私の仕事です。」

パインとサールはその台詞っぽい話し方が妙に気になった。

アリスは何を言っているのか良く分からなかったが、

助けてくれようとしていることだけは分かった。

アリスは、「はい。」と答えると、リナと共に後ろへとさがった。

ジェイル:「その他の皆さんも下がっていてください。」

そういわれて、パインとサールも後ろへ下がる。


そして、男達の方を向くと言った。

ジェイル:「成敗してくれる。」

その言葉を聞いて、やっと男達が動きだした。

男達:「やれー!!」

そして、しばらくジェイルと男達の殺陣の様な攻防が続くと、

突然男が大声をあげた。

男:「くそ、退却だ!!、引けー!!」

そして、ジェイルは逃げてゆく男達を追いもせずに、

その場に佇んでいた。


パインとサールは、それをじっと眺めていた。

アリス:「ありがとうございました。ジェイルさん。」

そして、ぺこっと頭を下げる。

ジェイル:「ん?、何故、私の名を知っているのだ?」

パインとサールは、その言葉に突っ込みを入れたかったが

我慢した。

ジェイル:「まあいい。気をつけて帰りなさい。」

そういい残して、逃げるように去って行った。


パイン:「今のはなんだったんだ?」

サール:「なんか、三流の芝居を見ているようでしたが、、、。」

パイン:「そうそう、そんな感じだったな。

    いったいあれは、なんだったんだろうな?」

そんなこともあり、3人はまた襲われることを危惧して、

天馬の尻尾亭へ戻ることを決めた。


天馬の尻尾亭の扉を開けると、目の前にドレアルが立っていた。

パイン、サール:「戻りました。」

アリス:「ただいまー。」

ドレアルは、アリスの服をしっかりと掴んだ

リナを見るなり言った。

ドレアル:「思い出したぞ!!」

パイン:「どうしました?」

ドレアル:「まあ、まずは座れ。」

そう言って、4人を座らせる。

リナは、アリスの膝の上にちょこんと乗っかった。

そして、全員が座るのを見て話だした。

ドレアル:「そう、それは一昨晩のことだ。

     嬢ちゃんに良く似た娘が今と同じように

     その子を膝に乗せて、ここにいたんじゃよ。」

パイン:「えっ」

ドレアル:「そして、その娘がこのペンダントをかけていた。」

そう言って、ペンダントを机に置く。

全員がそれを見る。

パイン:「あっ、そのペンダントは、、、。」

そのペンダントの先には、勾玉のような平たい石と丸い玉が

付いていた。

そして、その両方に魔法文字のような模様が刻まれていた。

サール:(あれ?あの丸い玉、あんなの付いていたっけ?)

サールは思い過ごしだと思い、考えるのをやめた。


リナ:「あっ、ローザお姉ちゃんのペンダント!!」

ドレアル:「やはり、そうか。

     お前さんたちが王都見学をしている間に、

     このペンダントの魔法文字、調べさせてもらった。」

全員がドレアルに注目する。

そして、サールは何かを思い出したような顔をする。

サール:「もしかして、マスタードレアル?」

ドレアル:「そうじゃが。」

サールが急に立ち上がると、

サール:「知らぬこととは言え、ご無礼の数々お許しください。」

そう言って、ふかぶかとお辞儀をする。

ドレアル:「よいよい、わしはただの店主じゃよ。」

パインとアリスはきょとんとした顔をしていた。

サールは座ると、2人を見て話し始めた。

サール:「魔法陣研究所のことは知ってますよね?」

パイン:「多少は、、、。」

サール:「傭兵王カインが作った魔法陣の研究をする組織です。

    で、そこの所長がバーバラなのですが、

    所長を決めるときの所長候補の一人だったのが、

    ここにおられるマスタードレアルなのです。

    マスタードレアルは引退すると言い残して

    去って行ったと聞いていたのですが、、、。」

アリス:「へー、そんなに偉い人だったんだ。」

そして、ドレアルを見る。

ドレアルは、ひげを摩りながら話始めた。

ドレアル:「そんなこともあったかのー。

     それに、昔の話じゃ。

     今は、ただのジジイじゃよ。

     まあよい、それより魔法文字の話じゃ。

     この魔法文字を見る限り、召喚用の魔法文字の

     一部だと見受けられる。」

サール:「一体何を呼び出そうとしたのですか?」

ドレアル:「それが何かは分からん。

     まあ一部分だし、当然じゃがの。」

サール:「たしかに。」

ドレアル:「これ以上考えても、何も分からんよ。

     全て手に入らない限りはの。」

サールは残りの魔法文字が気になっていたが、

ドレアルの言う通り、これ以上考えても意味が無いことを

理解していた。

そのため、これ以上の議論は不要と判断した。


その後、パイン達は、先ほどの襲撃の事をドレアルに話した。

ドレアル:「そうか、そんなことがあったのか。

     そうじゃ、このペンダントは一旦返しておこう。

     魔法文字は写させてもらったからの。」

ペンダントをリナの首にかける。

3人はびっくりした。

   (ペンダントを狙っている奴らがいるのに、

   子供にそれを持たすのか?)

リナはペンダントを握り締めると、笑顔で答えた。

リナ:「ありがと。」

そしてドレアルは言った。

ドレアル:「リナちゃん、お願いがあるのじゃが、、、。」

リナ:「なに?」

ドレアル:「しばらく、お爺ちゃんにそのペンダント

     貸してくれないかのー?」

3人はなるほどと思った。

リナ:「えー。」

アリスが応援を入れる。

アリス:「私からも、お願い。」

リナ:「んー。アリスお姉ちゃんにならいいよ。」

そう言って、自分の首からペンダントを外すと、

アリスの首にかけた。

ドレアル:「すまんが危険を承知で頼まれてくれんかの?

     そのペンダント、見えるようにしておいてくれ。」

アリスはパイン、サールと見た後に、

アリス:「はい。」

と答えた。

3人は、これで少なくともリナが襲われる可能性は

無くなると考えた。


そして部屋に戻り、明日もローザの捜索を行うことを決めると、

眠りについた。


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