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魔獣の壺 - 本編 -  作者: 夢之中
英雄の誓い
43/99

ハルバールの行方

パインは、次の頁を捲った。

そこには、文字が書かれていた。

パインはそれを読み上げながら、次々と頁を捲った。


我が一族の使命は、ベンヌを守ることだ。

これは代々受け継がれ、そして守られてきた。

その使命を守り、来るべき時に備えるのだ。


このことは決して他の者に話してはいけない。

知られれば命を狙われるからだ。

それは、隣の住人かもしれない。

妻かもしれない。

これは、私の邪推かもしれないが、ただ言えることは、

当主以外の者が知ってはならない事なのだ。


これを書き残すに至った経緯を書き残す。

それは、突然に訪れた。

ある学者が家族を引き連れて、我が家にやってきたのだ。

そして、予言めいたことを告げていった。

彼は何故か我々がベンヌを守る者という事を知っていた。

私も祖先も、それを口外した事実は無かった。

それを知っているだけでも、彼等は信じるに値した。


彼は言った。

 「破滅の日は近い、その日に備えなさい。

 それは、遅くとも5代後の子孫に訪れる。

 その時になったら、召喚士を探しなさい。

 そして、召喚士に全てを託しなさい。」と。


私は召喚士など存在しないだろうと反論した。

彼は言った。

 「召喚士は、いずれ誕生する。

 しかし、今はその時ではない」と。


私は彼に召喚士を探すなど不可能ではないかと聞いた。

彼は言った。

 「貴方の子孫が召喚士を求めれば、

 いずれ運命がお互いを引き合わせるだろう。」と。


私は彼に破滅の日はどうやって知ればいいのだと聞いた。

彼は言った。

 「まず、貴方の子孫あるいはその家族が災いに巻き込まれる。

 それが、破滅への始まりだ。」と。


私は彼に、何故私の元へ来たのかを聞いた。

彼は言った。

 「貴方はベンヌを守る者。

 そして、我が同胞であり、世界を救う者の末裔なのだ。

 全ては太古より決まっていたことなのだ。」と。


私は彼に、貴方はこれからどうするのかと聞いた。

彼は言った。

 「私には別の使命がある。

 それを実現するために、我が生涯をかける。」と。


そして彼等は、1冊の本を残して去っていった。

それには破滅の日までベンヌを守る方法が書かれていた。


私は彼等が去った後、彼等の行動を調べさせた。

しかし、彼等が我々を調べていたという痕跡は

見つからなかった。

そのため、私は彼等の言うことを信じたのだ。

そして本の通りに実行した。

それを実行することにより本は消失した。

これによって、破滅の日までベンヌは守られるはずである。


最後に彼の名を記しておこう。

彼は、ズールと名乗った。


           ベンジャミン・ハルバール


パインが全てを読み上げ終わるまで、無言で聞いていた。

最初に話し始めたのはジェイルだった。

ジェイル:((まさか、ここまでズールが関係しているとは。))

サール:((ズールは、どうやってベンヌを守る者の事を

    知ったのでしょうね?))

パイン:((えーと、ローゼス公爵の奥さんって、

    アンジェラさんだったっけか?))

ジェイル:((あぁ、そうだ。))

パイン:((そのアンジェラさんは、記憶が無かったんだよな?))

サール:((そうでしたね。))

パイン:((もしかすると、彼女を起したときに記憶が

    あったとかじゃないか?

    全てをズールに語った後で記憶を失った。))

サール:((うーん。どうもしっくりきませんね。))

パイン:((じゃあ、これは?

    アンジェラさんがシェリルさんと同じ方法で

    眠っていたと仮定する。

    とすると、誰かがズールと同じように、

    ネクロマンサーになって存在していた。

    その人がズールに語った。))

サール:((そうですね。そっちの方がしっくりきますね。))

ジェイル:((まあ、いずれにせよ、全ては1つに繋がっている

     みたいだな。))

パイン:((あぁ、それだけは確かなようだ。))

サール:((そうですね。そしてその鍵となる人物がズールと

    アリスというわけですね。))

全員がアリスの方を向く。


いつの間に呼び出したのだろうか?

アリスはシロと狗尾草(えのころぐさ)を使って遊んでいた。

狗尾草は、別名ネコジャラシと呼ばれる草のことだ。

アリスは全員の視線を感じ、

 「なに?、なに?」

と戸惑っていた。


パイン:((ハルバールが生きているとしたら、

    もしかして召喚士を探しに行ったのかな?))

サール:((確かに、その可能性はありますね。))


パイン:「ところで、ニコさん、夜盗に襲われたときの

    当主の名前って知らないですかね?」

ニコ:「ノワン・ハルバールですね。」

パイン:「そうですか、ノワンという人物なのですか。」


ジェイル:「おい、これを見ろ。」

ジェイルが一冊の本を指差す。

その本の背表紙には、ノワンの文字があった。

ジェイルがその本を手に取る。

それは、日記だった。


そして、最後の頁を開いた。

そこには、こう書かれていた。


2月9日、

突然、親友のロナルド・ビリウスから連絡が来た。

助けを求める彼を放って置く分けにはいかない。

彼には借りがある、今度は私が彼を助ける番なのだ。

明日、彼の元へ向かうことを約束した。


パイン:「なるほど、このロナルド・ビリウスという人物、

    この人物が呼び寄せたのか。

    ノワンは、生きている可能性がでてきたな。」

サール:「そうですね。

    ロナルドさんという人物を探しましょう。」

ジェイル:「そうだな、やっと手がかりを見つけた。」

アリスは、その名前を聞いてから黙り込んでしまった。


5人は、さらに日付を戻るように日記を読んでいった。

そして、ロナルド・ビリウスなる人物がルシード王国に

実家があるということまで突き止めることができた。


パイン達は、ニコに礼を言うと、ハルバールの屋敷を後にした。

そして、すぐにルシードへと向かった。

いつも通り、傭兵協会でロナルド・ビリウスなる人物の

住まいを調べてもらったが、情報はまったく得られなかった。


5人は、遅い昼食をとりながら今後の事について話していた。

サール:((まあ、当然といえば、当然ですね。

    傭兵協会では、傭兵以外の情報は

    持っていないですからね。))

パイン:((そうだったのか、、、。))

サール:((まあ、傭兵ではないということは、

    分かりましたけどね。))

ジェイル:((さて、問題はどうやって探すかだな。))

その時、アリスが言った。

アリス:((あっ。そうか。思い出した。))

パイン:((どうした?))

アリス:((ロナルド・ビリウスって、どこかで聞いた気が

    していたの、きっとあの人のことじゃないかな?))

そして、食堂の壁に貼ってあるポスターを指差した。


それは、ジーン・グレンジャーという詩人の

公演ポスターだった。


パイン:((えっ、あのジーン・グレンジャーが

    ロナルド・ビリウスだってい言うのか?))

ジーン・グレンジャーは、吟遊詩人だった。

たぶん、名前を聞いたことが無い人はいないであろうという

有名人だった。

今でこそ旅をやめているが、昔は各地を歩き歌を歌っていた。


アリス:((えぇ、子供の頃に、彼を家に招いたのよ。

    とっても素敵な声だった。

    そのとき、本名をロナルド・ビリウスって名乗っていた

    のを思い出したの、、、。))

パイン:((招いたのか、、、。

    さすが、お嬢様って感じだな、、、。))

アリス:((パイン、茶化さないでよ。

    折角思い出したんだから、ぷんぷん、、、。))

パイン:((いや、すまなかった。))

ジェイル:((もし、アリスの言う通りだとしたら、

     どうやって会おうか?

     あれだけの有名人だ。

     簡単には会えそうも無いけどな。))

サール:((とりあえず、彼のいるところへ行って、

    ノワン・ハルバールの名前を出してみませんか?

    きっと何かしらの反応があるはずですよ。))

パイン:((そうだな、それしか方法がなさそうだ。))

パインはポスターに近づくと、公演日程を確認した。

その日付は昨日から3日間になっていた。


5人は、途中で花束を買うと、公演場所へと向かった。

最初は面会を拒否された。

しかし、ノワン・ハルバールの名前を出した途端に、

手のひらを返したように、会ってくれることになった。


5人はジーンの控え室で彼と対面した。

ジーン:「そうか、ノワンの行方を捜しているのか、、、。」

パイン:「はい、そうなんです。」

ジーン:「私も彼の行方を知りたいんだ。

    彼のおかげで、今があるといってもおかしくない。」

パイン:「そうですか、ジーンさんも行方を知らないのですか。」

ジーン:「あぁ、彼を見つけたなら私にも教えてほしい。

    もし、彼が困っているなら助けたいんだ。

    私の知っている情報は提供しよう。」

そして、ジーンは、当時のことを語り始めた。


25年ほど前、私は諸国を歌を歌いながら旅していた。

クライム国で歌を披露している時にいた観客の1人だったのが、

ノワン・ハルバールだった。

私の歌が終盤に近づいたとき、彼が突然倒れたのだ。

私は歌を中止し、すぐに彼を助けた。

これが、彼との出会いだった。

彼は大層感謝してくれた。

それから、彼とは数年の間、連絡を取り合っていた。

22年前、私は病に倒れた。

病に打ち勝ったものの、私の声は変わっていた。

あの時私は、一度声を失ったのだ。

私は、そのことを彼に告げた。

すると、彼はとても高価な薬をもってやって来てくれた。

その薬のおかげで私の声は戻ったんだ。

しかし、彼に悲劇が訪れた。

彼が留守の間に、彼の屋敷が夜盗に襲われたのだ。

そして、彼は、

 「破滅の日の始まりかもしれない。

 私は闇へと向かうしかないということか。

 もう私と関わるな、貴方も危険になる。」

そう言って、行き先も告げずに去っていった。

ジーンの話はここまでだった。


ジーンは別れ際に言った。

ジーン:「そういえば、ノワンはいつも、

    昇る太陽が大好きだと言っていた。」


5人は、ノワンの居場所が判明したら必ず連絡する事を約束して

ジーンの元を後にした。


A:「んー。なんだか良く分からなくなってきましたね。

  ハルバールの居場所って判明するんですかね?」

C:「んー、どうでしょうね。

  それもそうですが、ズールが関わっていることも

  気になりますね。」

A:「そうですね。ズールは全て知っているってことですか?」

C:「たぶんそうなるんでしょうね。」


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