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魔獣の壺 - 本編 -  作者: 夢之中
新たなる決意
3/99

初めての戦闘

これまでのあらすじ)

魔獣王討伐隊に参加することを夢見て、

試験会場のあるカイン王国へとやってきたパイン。

ひょんなことからアリスと知り合い、

予備試験に向けてパーティーを組むことになった。

2人を監視する謎の人物。

2人は予備試験に合格できるのだろうか?


2人は、しばらくの間パーティー会話を楽しんでいた。

 「パイン様、アリス様、受付までおいで下さい。」

楽しい会話は呼び出しで中断された。


受付へ向かうと、受付嬢が笑顔で言った。

受付嬢:「パイン様とアリス様ですね。

    これより、予備試験を行います。

    そちらにいる係りの者についていってください。」


横を見ると見るからにゴリラ顔の厳つい男が立っていた。

アリス:((この人サル顔だ。))

パイン:((そんなこと口に出して言うんじゃないぞ。))

アリス:((はーい。))

この時、パインはアリスは天然かもしれないなと思った。


係員:「お二人の担当をします。

   サールと申します。」

パイン:「えっ、サル?、ぷっ、、、」

パインは、思わず吹き出してしまった。

アリス:((こらこら。))

サール:「サルではありません。サールです。

    こちらにおいで下さい。」

パインは、笑いをこらえるのに必死だった。

アリスはパインを見るとクスクスと笑いながら答えた。

アリス:「はい。」

そして、2人はある部屋に案内された。

その部屋は、真ん中に魔法陣が描かれており、

左側と奥側に扉が1つづつあった。

サール:「左側の扉が更衣室になります。

    その部屋にある装備に着替えて下さい。

    着替え終わりましたら、

    この部屋で、しばらくお待ち下さい。」

そう言うとサールは部屋を出て行った。


アリス:((サルじゃなくて、サールなんだね。))

パインはついにこらえきれなくなり、大声で笑い出した。

アリスが追い討ちをかける。

アリス:((サル、サル、サール。))

パインはつぼに入ってしまったのか、腹を抱えて笑い出した。

パイン:「はっ、腹が、、、いっ、痛い、、、。」

アリス:「先に着替えてくるね。見ちゃだめだよ。」

そう念を押すと、更衣室に入って行く。


しばらくすると、アリスが着替えを済ませ戻ってきた。

薄いローブを羽織っていた。

パインは落ち着いたのか、何回か深呼吸すると

パイン:「もう大丈夫だ。」

と言いい、更衣室へと入っていった。


更衣室は思っていた以上に狭かった。

2m四方ぐらいだろうか?

入ってきた扉と反対にもう一つ扉があった。

右の壁には2段の棚があり、各段に3個づつ籠が置かれていた。

籠の中を見ると、装備が入っていた。


パイン:(これに着替えろということだろうな。)

パインがそれに着替えると思った。

パイン:(まるで、紙装備だな、これで戦うのか。)

一緒に置かれていた剣を取ると、何回か振る。

かなり軽い武器だ。

ふと、横の籠を見ると、アリスが着ていた服が見えた。

そのとき、突然頭の中に声が聞こえた。

アリス:((私の服にいたずらするなよ。))

パイン:((そんなこと、するか!!))

パインは、着ていた服を籠に入れると部屋をでた。


丁度その時、サールが入ってきた。

パインはサールの顔を極力見ないようにしていた。

アリスはそれを見ると、クスクスと笑った。

サール:「お待たせしました。これより予備試験を行います。

    これから飛ばされる場所の最深部に魔獣の壺が

    あります。

    壺の傍に魔獣がいますので、それを倒して

    壺に蓋をしてください。

    そして壺の横にあるメダルを回収した上で、

    帰還の巻物を使って帰還してください。

    なお、今回の試験は対処方法がメインとなります。

    お二方はパーティーのため、アイテムの持込は禁止

    となります。

    以上で説明を終わりますが、なにか質問はありますか?」

パインは下を向いたまま答えた。

パイン:「ありません。」


サールは帰還の巻物をパインに渡すと言った。

サール:「それでは、真ん中の魔法陣に立って下さい。」

2人はそれに従う。

サールがなにか呪文を唱えると、突然目の前が真っ暗になった。

そして、周りが見えるようになると、そこは別の場所だった。


辺りを見回すと、そこはかなり広い空間だった。

下を見ると魔法陣が描かれていた。

上を見上げると空が見えた。

パイン:((穴の底なのか?))

アリス:((そうみたいだね。))

そして真正面をみると、犬ぐらいの大きさのうねうねと動く、

ゼリー状の丸い物体が数個うごめいていた。


パイン:((あれが、スライムというやつか?))

アリス:((えっ、スライムって、もっとかわいくない?

    ポスターに描かれていたのはもっとかわいかったよ。))

パインは思い出した。

それは傭兵試験のポスターだ。

片方の拳を突き上げた6人の女性兵士達の横に小さく描かれていた。

それは青色をしたマカロンの上にちょんと角のようなものがあり

クリットした両目をもった絵だった。


パイン:((いや、あれがスライムだろう。))

やや緑色をした半透明のゼリーのような物体。

ところどころから触手のように出た腕のようなものが、

出たり引っ込んだりと、思いのほか早い動きをしていた。

その中心には他と明らかに違う色の濃い部分があった。


パイン:((あの真ん中の色の濃い部分、

    たぶんあそこが急所だろう。

    ところで、アリスは癒し系は何ができるんだ?))

アリス:((えーとね、まだ癒しの加護のみかな。))

癒しの加護は、肉体の再生能力を極限まで高めることによって、

小さな傷ならば、瞬時に再生できるというものだ。

しかも、その効果はしばらく続く。

パイン:((そうか、わかった。

    それなら、癒しの加護で援護を頼む。))

アリス:((はーい。))

そう言うとパインは、剣を上段に構えスライムに突進した。

アリスもそれに続く。


スライムの近くまで来ると、上段に構えた剣を振り下ろす。

同時にアリスが癒しの加護を祈り始めた。


ゼリー状の物体に当たったが、その中心に届く前に止まった。

パインは剣を抜こうとしたが、抜けなかった。

見ると、そのゼリー状の物体はゆっくりと剣を包み込んでいく。

まずいと思い、全体重をかけて引っ張る。

剣がするっと抜ける。

パインは後ろ向きにごろごろと転がった。

パイン:((イテテ、、、やるな、こいつ。))

丁度その時、アリスの祈りが完了した。

パインの痛みがすっと引いていく。


スライムがゆっくりと近づいてくる。

パインは起き上がると、剣を構えスライムに向かう。

そして剣を横に振る。

しかし剣はスライムの中心に届かなかった。

そして、また剣を取り込まれそうになると、剣を引き抜き

同じようにごろごろと転がった。

このような状況が数回続いたとき、頭の中にアリスの声が

聞こえた。

アリス:((突いたらダメなのかな?))


パインは、ハッとした。

そして、スライムに近づくとその中心に向けて剣を突き刺した。

剣はすっとスライムに入って行く、そしてその中心に到達した。

スライムは急にその動きが遅くなると動かなくなった。


アリス:「やったね、パイン!!」

パイン:「まかせろ、俺にかかれば楽勝さ、、、。」

そう言ったあと、パインは今のは言うんじゃなかったと

後悔した。


アリスは動かなくなったスライムに近づくと、武器の棍棒で、

スライムとツンツンとつついた。

アリス:((動かないね。大丈夫そうだね。))

棍棒の先に粘着性の物質が付着して、糸を引いている。


アリス:「これ、べとべとする。」

アリスがパインを見ると、そのところどころにその物質が

付着していた。

アリス:「うぁー、パイン、汚い。」

パインは剣を何回か振ると、周りに飛び散った。

アリス:「キャー!!」

アリスが逃げ回る。

アリス:「こっちに向けて振らないでよ。」

パイン:「すまん、すまん。」


そう言ったとき、目線の先に2匹のスライムが近づいてくるのが

見えた。

パイン:((次の敵だ。))

アリス:((はーい。))

そう言って剣を構えると、スライムに近づいた。

倒し方さえ分かれば、スライムは敵ではなかった。

2匹のスライムを倒すと、さらに奥へと進んで行った。

このあと、3匹のスライムを倒しながら少し進んだ。

そして、台座の上に1つの壺が置かれているのが見えた。

その横に犬のような顔をした子供ぐらいの大きさの化け物が

立っていた。

2人の顔が真剣になる。


パイン:((あれが、魔獣か?))

アリス:((そうみたいね。

    パンフレットに描かれていたのは、

    もっとかわいかったけどね。))

パイン:((スライムより手強そうだな。

     援護を頼む。))

アリス:((分かった。))

2人は、魔獣に向かってゆっくりと近づいて行った。


ある距離まで近づくと魔獣はうなり声を上げ突進してきた。

アリスの祈りが始まる。


魔獣は飛び上がりながら右手を振り上げると

パインに向けて一撃を放った。

パインは剣でそれを受け止めると、蹴りを放った。

魔獣の腹にヒットする。

魔獣は後方へ飛ばされ、1回転すると着地した。

そして、1回吼えると、アリスに向かって突進した。

アリスは祈りの最中だった。

パインは、アリスと魔獣の間に入り、剣を構えた。

魔獣は、突進をやめて吼える。

同時にアリスの祈りが完了する。


魔獣は、再びパインを目標にすると、突進して飛び掛ってきた。

パインはそれを剣で受け止める。

また蹴りを入れようとしたが、魔獣はすぐに後ろに飛んだ。


このような攻防が数回繰り返された。

パイン:((攻撃にパターンがあるみたいだな。))

アリス:((そうみたいね。))

パイン:((よし、次の敵の攻撃で決めるぞ。))

アリス:((わかった。))


パインは魔獣に向かって突進し、剣を横になぎ払う。

魔獣が後方へ飛ぶ。

ゆっくりと魔獣に近づく、魔獣は後方へと下がろうとしたが、

後ろに壁があり下がれない。

魔獣は一回吼えると、飛び掛ってきた。

パインは素早く着地点に移動すると、上に向かって

剣を突き出した。

魔獣はその剣に貫かれ、1回低く吼えると動かなくなった。

2人共、無言だった。


アリスは壺に近づくと辺りを見回した。

壺の横に蓋とメダルが置かれていた。

アリス:((これが蓋ね。しばらく経つとまた沸くみたいだから、

    さっさと蓋をしちゃいましょう。))

そう言うと蓋を手に取りしっかりと蓋をした。


パインは剣を収め、メダルを手に取った。

パイン:((これがメダルか。

    さて、それじゃあ戻ろうか。))

アリス:((うん、早く戻ろう。

     疲れた。))


パインは帰還の巻物の紐を解き巻物を開くと、

途端に目の前が真っ暗になった。


再び、見えるようになった時には部屋の中だった。

目下には魔法陣が描かれていた。

そして目の前の壁に扉が1つあった。


突然扉が開いた。

入ってきたのはサールだった。

サール:「お疲れ様でした。メダルは回収できましたか?」

パインが無言でメダル差し出す。

サールはそれを手に取ると表と裏をしげしげと眺めた。

サール:「はい、結構です。

    更衣室の奥で、体を洗えます。

    着替えたあとで、受付に戻って下さい。

    今着ている装備は籠に入れておいて下さい。」

そう言うとサールは部屋を出て行ってしまった。

2人は体を洗い、着替えると受付へと向かった。


受付嬢:「お疲れ様でした。予備試験は合格となります。

    なお、本試験は明日になります。

    これが宿泊カードで、部屋は2階にあります。

    扉に宿泊カードと同じ番号が書かれていますので、

    その部屋をお使いください。」

そう言って、カードを渡された。

渡されたカードには、207番と書かれていた。

アリスは、208番のカードだった。


2人は階段を上がり2階へ向かうと番号の部屋に入った。

そしてベットに横になると、すぐに眠ってしまった。


こうして、2人の初めての戦闘が終わった。


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