3人の休日
連合暦20年3月26日、
3人が朝食を終えると、パインが口を開いた。
パイン:「じゃあ、今日は各自好きなことをやってくれ。
じゃあ、解散。」
アリス:「はーい。」
アリスは、スキップしながら、店を出て行った。
サールは、ゆっくりと立ち上がると、
サール:「私は、傭兵協会の方へ行きますので。」
と言い、店を出て行った。
残されたパインは、
パイン:「さて、俺はどうしようかな。」
と言いながら、ドレアルを見ていた。
昨日の夜、サールがある事を提案した。
パイン:「えっ、休み?」
サール:「えぇ、傭兵試験から10日たちますが、
1日も休んでいません。」
パイン:「確かに、そうだよな、、、。
色々とあったし、休む暇も無かったよな。」
サール:「傭兵でも休息は必要です。
それに、自分のやりたいこともあるのでは?」
アリス:「あるーーーーっ。」
アリスが元気良く答えた。
パイン:「サールの言う通りだな。
よし、明日は休みにしよう。」
アリス:「やたーーーーっ。」
こうして、本日は、お休みということになった。
- パイン編 -
サールが店を出た後、パインはドレアルと会話していた。
パイン:「ドレアルさん、嫌いなものや怖いものを
克服する方法って無いですかね?」
ドレアル:「なんじゃ、急に?」
パインは、ズールの屋敷のことを話した。
ドレアル:「なるほどな。
ゾンビとかスケルトンが怖いのか、、、。
それは傭兵として致命的じゃな。」
パイン:「えぇ、そうなんですよ。
なので、克服したいと思ってるのですが。
簡単に克服する方法は、なにか無いですか?」
ドレアルは少し考えると、口を開いた。
ドレアル:「ない。」
パインはガクッと肩を落とした。
パイン:「やっぱり無いですか。」
ドレアル:「慣れるしか無いじゃろうな。
そうじゃ、お化け屋敷でも行ってみたらどうじゃ?」
パイン:「お化け屋敷?」
ドレアル:「商店街の先にイベント広場があっての、
そこで色々な催し物がやってるんじゃが、
お化け屋敷が人気らしいぞ。」
パイン:「へー、そんなものやってるんですか。
だけど、作り物ですよね?」
ドレアル:「そうじゃ。」
パイン:「作り物じゃあ、怖くないと思いますよ。」
ドレアル:「そうでもないらしいぞ。怖いって評判じゃよ。
それが、怖くなくなるまで繰り返してみたら
どうじゃ?」
パイン:「そうですね。試しにやってみようかな。」
ドレアル:「その意気じゃ、がんばれ。」
パイン:「はい、ありがとうございます。
行って見ます。」
そして、パインは意気揚々と店を出て行った。
お化け屋敷の前に立つと、顔は緊張で強張っていた。
パイン:「作り物、作り物、作り物、、、。」
何回も自分に言い聞かせるように呟いていた。
そして、両手で顔を1回叩くと、
パイン:「よしっ。」
そう小声で掛け声をかけると、中へ入って行った。
お化け屋敷の中で、パインの顔は恐怖に引きつっていた。
パイン:「うぁーーーっ!!」
パインは何回も驚き、声を上げていた。
しかし、気絶する事も無く、お化け屋敷から出てきた。
パインは深呼吸すると、思った。
パイン:(思ったより、怖かったな。
だけど、これなら何とかなりそうだな。
もう1回入ってみるか。)
そう決意すると、再度お化け屋敷に入っていった。
薄暗い中をゆっくりと歩いてゆく。
パイン:(さすがに、2回目はあんまり怖くないな。)
余裕が出てきたのか、先ほどよりじっくりと展示物を
眺めてゆく。
通路は薄暗いが、展示物のところは、通路よりも明るかった。
パイン:(そうそう、ここで、落ちて来るんだよな。)
そう思っていると、目の前に上から紐で繋がった
布が落ちてきた。
パイン:(これには、びっくりしたなーー。
そして、あとは、出口へ向うのみ。)
目の前には、カーテンがあり、そこを抜けると出口だった。
「ぎゃーーーーっ。」
突然の声に後ろを振り向く。
その時、何かが飛んできた。
反射的にそれを両手でキャッチした。
そして、それを見た。
ゾンビが恨めしそうにパインを見つめていた。
「んぎゃあああああぁ。」
パインは硬直すると、後ろ向きに倒れた。
- アリス編 -
アリスは1人で商店街でショッピングをしていた。
アリス:「これ、かわいーーーっ!!」
そう言って手にとったのは、熊のぬいぐるみだった。
近くにいた店員がアリスに声をかける。
店員:「そのぬいぐるみは、プリティーベアーズです。
シリーズ物になっていまして、大人気なんですよ。
いま、手にしておられるのが、王女様ですね。」
アリスがそこを見回すと、様々な衣装や化粧をした
熊のぬいぐるみが並んでいた。
アリス:(どうしようかな、、、。)
アリスが悩んでいると、シロが言った。
シロ:(買うと次々に欲しくなるにゃ、
置く場所が無いにゃ。)
アリス:(確かに。1個買ったら次が欲しくなるよね。)
屋根裏部屋がぬいぐるみで埋まった状況を想像していた。
そして、購入を我慢すると、名残惜しそうに店を後にした。
次に入った店は、パーティーグッズのお店だった。
そして、1つのコーナーで商品を眺めていた。
アリス:(シロちゃん、これいいと思わない?)
シロ:(よくできてるにゃ。)
アリス:(でしょ、絶対いいよね。
値段もそんなに高くないし、買っちゃおう。)
そう言って、手に取ると、レジへと向った。
そして、大事そうにカバンにしまうと、ショッピングを続けた。
アリスは、商店街の端まで来ていた。
アリス:(あれって、サールじゃない?)
シロ:(ん?、そうにゃ。サールにゃ。)
サールが何かを抱えて立っていた。
小走りにサールへと近づく。
サールはアリスに気がつかずに建物へ入っていった。
建物の前までくると、看板を見上げた。
アリス:(へーーーっ。こんなイベントやってたんだ。)
アリスはニヤッと笑うと、サールの後を追って、
中へと入っていった。
アリスは、サールに追いつくと、カバンを開け、
さっき買った物を取り出した。
静かにサールに近づくと、それをサールの頭の上にポイッと
放り投げた。
それは、ヘビの作り物だった。
サール:「ぎゃーーーーっ。」
アリスは、笑いながら、すぐにサールに近づいた。
そのとき別の叫び声が聞こえた。
「んぎゃあああああぁ。」
サールは、作り物のヘビを見ながら硬直していた。
アリスは、すぐにヘビの作り物をつかむと、
アリス:「作り物だよ」
と言って、カバンにしまった。
- サール編 -
サールが、天馬の尻尾亭をでると、アリスが商店街の方へと
向かって行くのが見えた。
サール:(アリスさんは、ショッピングなのかな?
あぁーーあ。私も報告済ませて、ゆっくりするか。)
そんなことを考えながら、とぼとぼと傭兵協会へと向かった。
サールが転送の魔法陣を使用して傭兵協会本部へと移動すると、
会長室の扉を叩いた。
サールは会長室でバーバラと会話していた。
バーバラ:「すでに報告は受けているが、報告の内容が
衝撃的すぎて驚くことばかりだ。
あいつらは、一体なんなんだ?」
サール:「えぇ、私も色々ありすぎて、混乱していますよ。」
バーバラ:「そうだろうな、召喚士、ドラゴンなどと、
伝説の中の出来事ばかりだ。
まるで、あの2人を中心に歴史が動いているようだ。
そう、あの2人の素性を調べたのだが、
アリスの情報だけが集まらない。
理由は分からないが、なにか裏があるに違いない。」
サール:「そうですか、アリスさんの素性が、、、。」
バーバラ:「まさか本人に聞く訳にもいかんしな。
おまえは2人の監視を引き続き行ってくれ。
特にアリスのな。」
サール:「はい、分かりました。」
サールは会長室を出ると、これからどうするか考えていた。
サール:(久しぶりに自宅に戻るか。)
そして、自宅へと向った。
自宅へ到着すると、無言のまま扉を開けた。
真っ暗な小さな玄関だった。
明かりを点けると、ポストから手紙やチラシを回収する。
チラシを見ながら、短い廊下を進む。
サール:「へー。カルラドでイベントやってるのか。
一緒にいってみるかな。」
そう呟きながら、ダイニングルームと思われる部屋に入った。
そして、その部屋から続く1つの扉の前に立った。
2,3回深呼吸すると、その扉を開けた。
サール:「ただいまーーっ!!帰ってきまちゅたよーーっ!!」
小走りに部屋の中へ入り、1体のプリティーベアーズを抱き上げ、何回も頬ずりした。
その部屋は、山のような数のプリティベアーズが置かれていた。
そして、しばらくプリティーベアーズ達と戯れると、
1体を手に取り、カルラドへと向った。
サールはお化け屋敷の前にいた。
サール:「入りまちゅよー。」
そう小声で言いながら、入っていった。
その中は薄暗かった。
ゆっくりと展示物を眺めながら進んでいった。
サール:「あんまり怖くないでちゅねー。」
そして、先へと歩みを進める。
突然、頭の上に、何かが落ちてきた。
一瞬、ビクッとしたが、それほど驚かずに落ちてきたものを
確認するように見つめた。
それは、ヘビだった。
サール:「ぎゃーーーーっ。」
そして手に持っていたものを放り投げた。
サールは、硬直してそれを見つめていた。
突然、手が現れヘビをつかんだ。
そして、耳元で、
「作り物だよ」
といわれて、我に返った。
声のするほうを見ると、アリスだった。
サール:「まったく、アリスさんのいたずらですか。
本当にびっくりしましたよ。」
アリス:「えへへへへへ。」
そういって、可愛く笑う。
そして、辺りを見回した。
サール:「あれ?どこに落としたんだろう?」
アリス:「えっ?何か落としたの?」
サール:「えぇ、ぬいぐるみを、、、。」
アリス:「へー、サールって、そんな趣味があったんだ。」
そういいながら、奥を探す。
サール:「いや、あの、その、、、。」
そういいながら、照れていた。
アリスが突然声をあげた。
アリス:「あっ、パイン、どうしたの?」
サールが近寄ると、パインが仰向けに倒れていた。
そして、両手にぬいぐるみを抱いていた。
それは、ゾンビメイクのプリティベアーズだった。
パインを抱き起こし、声をかけた。
サール:「大丈夫ですか?」
サールがパインに声をかけていたとき、突然後ろが光った。
サールがそれを見る。
その光の中には、両手をつかまれたアリスと、2人の男がいた。
そして、ゆっくりと消えていった。
その後には、1本の巻物が落ちていた。
C:「おはこんばんちは。」
A:「なんですかそれは?」
C:「おはよう、こんばんは、こんにちはを纏めた言葉ですね。」
A:「古くないですか?」
C:「えぇ、かなり古いですよ。」
A:「まあ、それはいいとして、アリスですが?」
C:「なんか、捕まっちゃいましたね。」
A:「えぇ、どうなっちゃうんですか?」
C:「さぁ?」
A:「そんな無責任な、、、。」
C:「次回以降で色々とアリスの素性が判明するみたいですよ。」
A:「へぇ、きになりますね。
どんな情報ですか?」
C:「それはですね、、、うっ、、、。」
いきなりCが倒れる。
A:「どうしました?」
Aが振り向くと、Uが鬼の形相をして後ろに立っていた。
A:「Cが倒れたので、これで、終わりです。
次回をお楽しみに。」




