初めてのお使い4
残り時間0:15
皆が無言で蝶を見つめている中、
アリスだけが別のところを見ていた。
アリスが沈黙を破って、声を上げた。
アリス:((ねぇ、ベットの頭側の下にある小ビンって、
なにかな?))
一斉にそこに注目する。
パイン:((なんだろう?
ん?なんか紙みたいな物もあるけど、
ここからは、よく見えないな。))
じっと黙っていたポールが突然声を上げた。
ポール:((揺り椅子の人ですが、浄化しましょう。))
パイン:((えっ、なにを急に。))
ポール:((これまでの情報で色々と分かりました。
これは、あくまで私の想像ですが、
聞いていただけますか?))
パイン:((もちろん。))
サール:((えぇ。))
アリス:((聞きたーい。))
4人が床に座ると、ポールが静かに語りだした。
ポール:((まず、日記から分かることですが。
主と妻は何かを開発していたが、時間が足りなかった。
当然ですが、時間が足りないということは、
期限があるということですね。
そして、期限に間に合わないため、
しかたなく最後の手段の選択を迫られた。
ということは、開発していたものと、最後の手段は、
別物であるということが分かります。
その後、生贄が必要な魔法陣が完成した。
この魔法陣については、妻は反対していませんので、
合意していたと考えられます。
この生贄問題について、あの方法と書いています。
妻があの方法に反対していたとも書かれています。
つまり、魔法陣は最初に開発していたものではなく
最後の手段の可能性が極めて高いことになります。
そして妙薬ですが、間に合いそうと書かれていますが
そのあとに後は全てを妻に任せようと書かれています。
つまり、妙薬も最初に開発していたものとは違うと
いうことですね。
妻が閉じ込められ、心変わりをする部屋。
そして、あの魔法陣の中の女性と小ビン、制止した蝶。
これらを総合して考えると、、、。))
パイン、サール:((・・・。))
アリス:「スピーーッ、グガガガガーッ、スピーーッ。」
パインがアリスに向かって、軽く脳天唐竹割りを入れる。
アリスは、びっくりして目を覚ますと、周りを見た。
そして、すぐにガクッと首を下げると再び眠りについた。
ポール:((皆様もすでに、お分かりかと思いますが、
主と妻は、あの女性の危機、たとえば病気などを
治す為の研究を行っていましたが、その期限までに
完成させることが不可能だと判断した。
そのため、最終手段、たぶん時間を停止させることで、
時間を稼ごうとしたのだと思います。
時間を停止させる魔法陣が女性が寝ていた方。
揺り椅子の人のいた方が、生贄の魔法陣。
たぶん、生贄の魔法陣では、常に時間が高速に動いてる
のでしょう。
それは、前回の取引で魔法陣に入った者が一瞬の内に
白骨化したことでも分かります。
時間を停止させる魔法陣の継続条件が魔法陣内に
術者が存在している限りだとしたら、
妙薬は、ネクロマンサーになる薬。
不死の能力を得て、魔法陣を発動し続けていると
考えられます。
妻を閉じ込めていた部屋が、女性が寝ていた部屋。
ミイラ化した女性が妻ではないかと考えています。
そして、揺り椅子の人を浄化することによって、
双方の魔法陣が止まると、、、。))
サール:((もしそうなら、揺り椅子の人が、
自らの死を望んでいる意味もつながりますね。
妻が完成させた薬を寝ている女性の魔法陣に入れ、
主に伝えた後に息絶えたと。))
パイン:((しかし、本来の目的の骨はどうするんだ?))
ポール:((それについては、日記を読んだ時点で、
すでに結論がでています。))
パイン:((えっ?))
ポール:((交換品の玉はすでに分かっていると思いますが
魔晶石です。
しかし、すでに魔法陣は発動している。
ということは、交渉の余地は無いということです。))
パイン:((たしかに。))
ポール:((日記から骨の一部ということが分かっていますので、
残りの骨がこの屋敷に存在するのは確かです。
あの女性を当家で保護します。
そして、あの女性が回復した後に、
正式に譲り受けたいと考えています。))
パイン:((なるほど、分かりました。))
この後、4人で浄化するかどうかを話し合った。
そして、結論がでた。
残り時間0:08
ポールとパインは、揺り椅子の人の前に移動を始めた。
アリスとサールは、寝ている女性の部屋で待機していた。
これは、浄化後に出来る限るかぎり早く対処するためだった。
アリスは部屋の中を物珍しく見て回っていた。
そして、机の上に突っ伏したミイラ化した遺体の下に文字を
発見した。
アリス:((サール、これ、なんだろう?))
サール:((なんでしょうね?))
遺体を丁重に移動すると、それを読んだ。
魔法陣を止める時は、必ず△印のあるところで
浄化の呪文を行うこと。
アリス:((えっ!!))
サール:((なんだって!!))
2人はびっくりしたような顔で言った。
アリス:((まってーー!!))
サール:((浄化は、ダメです。))
しかし、丁度同じタイミングで、浄化の呪文を開始した。
「ガコッ」という音が鳴ったあと、悲鳴が聞こえた。
パイン:((うぁっ、、、。ぐぎゃぁぁぁぁぁ!!))
ポール:((あっ。))
叫び声が頭の中を駆け巡る。
2人は、急いで、隣の部屋へと移動した。
扉を開けると、目の前にポールが立っていた。
そして、2人に気がつくと、下を指差した。
床には穴が開いており、その下には無数の腕が見えた。
まるで、床から腕だけが生えているようだった。
そして、その無数の腕が完全に硬直したパインを
大玉ころがしの玉のように、右へ左へと運んでいた。
アリス:((うぁー、楽しそー。私もやりたーい。))
その後、気絶しているパインを助けだし、
女性のいる部屋へと運んだ。
サールから文字の事を聞き、揺り椅子の部屋へと戻った。
いつのまにか、穴は塞がっていた。
そして、△印の場所を探しだし、
その場所で浄化の呪文を唱えた。
揺り椅子の人は、それを静かに見ていた。
浄化の呪文による苦痛があるにもかかわらず、
じっと動かずにそれを受け入れていた。
そして浄化の呪文が完了すると
「シェリル」
という言葉と共に、灰になってしまった。
その時アリスとサールは、女性を見ていた。
魔法陣の光がきえると、すぐに蝶が動き始めた。
サール:((こちらの魔法陣の光が消えました。))
ポール:((小ビンを確認して下さい。))
サールがアリスに小ビンを渡し、
その下の紙のようなものを確認すると、
この子に飲ませてあげて下さい。
と書かれていた。
アリスは、女性が生きていることを確認した上で、
その指示にしたがった。
しかし、しばらくまっても女性は目を覚ますことは無かった。
その後、ジェイルの部隊の到着を待って、ポールと共に戻った。
その日の夜、この件の真相を説明するといってポールが現れ、
4人は屋根裏部屋にいた。
ポール:「それでは、あの後分かった事をお話しましょう。
あの揺り椅子の部屋で日記の前半が発見されました。
やはり、彼はズールでした。」
パイン:「やっぱり、そうだったのか。」
ポール:「その日記に書かれていた内容を簡潔に説明します。
元々、ズールの屋敷は、村の中にあったようです。
ズールは何かの研究を行っていました。
その研究のため、一家は何人かを連れて、
他の地へと旅にでました。
村に戻った時、村に疫病が蔓延していたそうです。」
パイン:「疫病だって。」
サール:「一体、どんな病気だったんですか?」
ポール:「残念ながら、その記録はありませんでした。」
サール:「そうですか。」
ポール:「ズールは、すでに亡くなっている人々を埋葬すると
妻と娘と共に病気の原因と治療法の研究を始めました。
そして、原因がこの村の井戸だということを発見し、
今後再発しないように処置を行ったそうです。
原因が分かったため、薬の開発は進みました。
しかしこの時、一家はすでに病気に冒されて
いたようです。
そして、日記の後半へと続くわけです。」
パイン:「なるほど、そんなことが、、、。」
ポール:「母親の手記も見つかりました。
それには、薬が1人分しか作れなかったこと、
愛する夫を浄化することが出来なかったことが
書かれていました。」
パイン:「ところで、あの女性は大丈夫なのですか?」
ポール:「はい、目を覚ました。
事情を説明すると、最初は酷く取り乱して
おりましたが、次第に落ち着きを取り戻し、
今は、ジェイル様がお話を伺っているところです。」
パイン:「それは、よかった。」
サール:「えぇ、よかったですね。」
アリス:「よかった、よかった、これで一件落着だね。」
パイン:「ああ、そうだな。」
サール:「えぇ、そうですね。」
ポール:「いえ、実はまだ解決していないのです。」
3人 :「えっ?」
ポール:「実は、本日来たのは、
別の依頼をお願いしたいからなのです。」
3人は顔を見合わせた。
パイン:「一体どんな?」
ポール:「詳細は明日、当家の屋敷でお話いたします。
朝一番で向かえをよこしますので、
お話だけでも、聞いていただきたいのですが、、、。」
パイン:((どうする?))
サール:((とりあえず、話を聞かないと
答えようがありませんね。))
アリス:((そうだね。))
パイン:((とりあえず、話だけでも聞くか。))
サール:((そうしましょう。))
アリス:((はーい。))
パイン:「では、とりあえず、話だけでも聞かせてください。」
ポール:「それは助かります。
それでは、明日お待ちしておりますので、
よろしくお願いいたします。」
パイン:「わかりました。」
C:「今回からあとがきの司会進行を勤めさせていただきます。
Cです。」
A:「アシスタントを勤めさせていただきます。
Aです。」
C:「今回は説明ばっかりで面白くないですな。」
A:「そうですね。
きっと作者も困っていたんじゃないですかね?」
C:「たぶん、'初めてのお使い3'を投稿したあとに、
失敗したと思ってたんじゃないかな?」
A:「それに、あの残り時間って、わざわざ入れていながら
結局なににも使われなかったし、、、。」
C:「あれは、ゲームの時間制限クエストを真似たらしいけど、
小説では失敗することはないし、
意味なかったんじゃないか?」
A:「そうですね、
読者にも伝わらなかっただろうし、、、。」
C:「実は、失敗パターンの構想も練っていたらしいんだけど、
納得できなくてやめたらしい。
A:「えっ、勝手にやめちゃうの?
ひどーい。」
C:「作者も気にしているようだから、
大目にみてやってほしいな。」
A:「ところで、もし失敗していたらどうなったのかな?」
C:「クエスト失敗だったんじゃないか?」
A:「えっ、それって、また初めから?」
C:「まあ、それは無いと思うけどね。
納得できたら、またやるって言ってたので、
その時に期待するしかないかな。」
A:「へー、そうなんだ。まあ、気長に待つしかないのかな。
ところで、最初の方で'とある場所'の男達の
会話があるけど、あれって何も進展がないけど、
どうなってるんですかね?」
C:「あれは、そのうち分かるらしいよ。」
A:「へーそうなんだ。我慢して待つしかないのか、、、。」
C:「さて、そろそろ時間ですので、次回をお楽しみに。」
A:「ばいばーい。」




