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魔獣の壺 - 本編 -  作者: 夢之中
新たなる決意
2/99

初めてのパーティー

パインはクライム王国の武器商人の家に生まれ、

幼い頃から剣に触れ、そして物心付くときには、

聖騎士を夢見ていた。

そして、魔獣王討伐隊に志願することを、、、。


連合暦20年3月15日、

パインはカイン王国の傭兵試験の会場前にいた。

入口の柱には傭兵試験のポスターが張られていた。

ポスターには、片方の拳を突き上げた6人の女性兵士達と共に

    「明日から君も勇者だ!!

       魔獣王討伐に参加しよう!!」

と書かれていた。

パインはクライム国で傭兵試験のポスターを見て、

参加を決意していたのだった。


あたりを見回すと、そこは沢山の人で溢れかえっていた。

パイン:「傭兵になりたいやつってこんなにいるのかよ。」


ポスターを見たときは、人材に困っているのだろうと思い、

直ぐに傭兵になれるのではないと考えていた。

しかし、どうやら甘かったようだと考え直したのだった。


パインが試験を受けるため順番を待っていると、

後ろから声がした。

???:「ちょっといいですか?」

後ろを向くと、丸めがねをかけた少女が立っていた。

パイン:(おっ、かわいい。)

パインは真顔になるとすぐに答えた。

パイン:「なんでしょうか?お嬢さん。」

???:「あのー」

少女は、少しむっとした顔をしながら下を指差している。

下を見ると、その女性のかばんの紐を踏んでいた。

パイン:「あっ、すみません。」

パインは飛び上がるように、かばんの紐から足をずらした。

その女性はかばんを持ち上げると、パインが踏んでいた部分を

ぱたぱたとはたきながら言った。

???:「あなたも傭兵試験を受けに来たんですよね?」

パイン:(ん?変な質問するな、傭兵試験以外でここに来る

    ことってあるんだろうか?)

パイン:「そうですけど、、、」

???:「私も試験を受けに来たんですが、、、」

パイン:「そうですか、それで、なんでしょう?」

???:「履歴書をださないといけないんですよ。」

パイン:「ええ、そうですね、それで?」

???:「実はまだ、履歴書を書いてないんですよ。」

パイン:「はい?」

???:「あのー、書くものを貸してほしいのですが、、、」

パイン:「ああ、それならそうと最初に言ってくださいよ。

    それに、書くものなら受付にありますよ。」

???:「えっ、そうだったんですか、ありがとうございました。」

パイン:「いえいえ、どういたしまして。」

彼女は、ぺこっと頭を下げると、受付に向かっていった。


パイン:(なんなんだこの子は?)

そんなことを考えながら順番を待っていた。


しばらくすると、背中をつつかれる感覚があった。

後ろを振り向くと、彼女がにこにこしながら話しかけてきた。

???:「あのーっ」

パイン:「はい?

    今度はなんでしょうか?」

パインは少しイライラしながら答えた。

彼女は無言のまま右手を差し出した。

その手の上には、1個の飴が乗っていた。


パイン:(くれるってことなのかな?)

パインは、「ありがとう」というと飴を取り、口に放り込んだ。


???:「あっ、、、それ、消しゴム、、、」

パイン:「えっ?」

パインはそれを吐き出し、むっとした顔をしたが、

よく考えてみると自分の早とちりだと気がついた。

そして、なぜか笑いが込み上げてきた。


パインは、笑いながら尋ねた。

パイン:「君、名前は?」

彼女は少し真剣な顔になると、

???:「名前を尋ねるときは、自分から先に名乗るように

    お母さんから習わなかったんですか?」

と言った。

パイン:「ごめん、ごめん、俺はパイン。

    パイン・シュナイダー。

    君は?」

???:「私は、アリス」

パイン:「後ろの名はなんていうんだい?」


この世界の名前は、個人名+家族名からなっていた。

パインは家族名を聞いたことになる。


アリス:「んー、たぶん言っても覚えられないと思うし、、、」

パイン:「そんなことないよ、物覚えはいいほうなんだ。」

アリス:「そうなんだ。じゃあ、、、」

そう言うと、アリスは息を吸い込んで一気に言った。


アリス:「アリス・シュトロメンガイアルツッバウトフォン

    アルファウムディバインシュルトスです。」

パイン:「・・・。」

アリス:「アリスでいいですよ、パイン・シュナイダーさん。」


これが、この後運命を共にする女性、アリスとの出会いだった。

この後、2人はこれから数奇な運命をたどることになる。


受付を無事済ませた2人は次の予備試験までの時間を潰していた。

アリス:「あのー」

アリスが神妙な顔つきで話しかけてきた。

パイン:「アリスさん、なんですか?」

アリス:「予備試験、本試験とありますよね?」

パイン:「何を言いたいのか、分からないですが。

    ストレートに言っちゃってもいいですよ。」

アリス:「そうですか。じゃあ、付き合ってください。」

パイン:「えっ?付き合うって、、、」

パイン:(まさか、こんな突然に告白されるとは、、、)

パインは照れながら答えた。

パイン:「俺でよかったら、よろしくお願いします。」

そして、右手を差し出した。

アリスは、その手を両手で握ると、飛び上がって喜んだ。


アリス:「よかった。神聖魔導士は補助者が必要なんですよ。」

パイン:「えっ?」

パインはすぐに右手を引っ込めると、頭を掻きながら、

パイン:「いえいえ、当然のことですよ。」

と答えた。


アリスは、パインを連れて受付へと向かい、

パインが補助者だと告げた。


係員:「そちらの方は受験者の方ですよね?」

パイン:「そうです。」

係員:「そうですか。でしたら、パーティーを組まないと

   いけないですね。

   こちらへおいで下さい。」

そしてカウンターの奥の部屋へと入っていく。

2人は、係員に続いて部屋に入った。


その時、2人をじっと見つめる男の存在に

2人は気が付いてはいなかった。


部屋の真ん中には、魔法陣が描かれていた。

係員:「それではパーティーについて説明します。

   パーティーは一緒に行動する仲間の絆を強化します。

   パーティーの術式を行ない、同じパーティーになると

   言葉にしなくても相手の意思が分かるようになります。

   相手の名前を思い描きながら話す内容を考えて下さい。

   あと、相手の所在地が分かるようになります。

   最後に、これが一番重要なのですが、

   神聖魔法の効果や転移の呪文などをパーティー全体に

   かけることができます。

   アリスさん、あなたは神聖魔導士なので分かると思う

   のですが、癒しの祈りを行う場合、その人のことを強く

   思いますよね?」

アリス:「はい」

係員:「その時に、人ではなくパーティー全体を思って下さい。

   そうすれば、癒しの祈りはパーティー全体になります。

   ただし、一人の場合よりも効果が少ないことを忘れないで

   ください。

   なお、思考の伝達もパーティー全体に可能です。

   以上がパーティーの説明です。

   なにかご質問はありますか?」

アリス:「いえ、ありません。」

係員:「それでは、パーティーの術式を行いますので、

   魔法陣の中にお立ち下さい。」

2人は魔法陣の中へと進んだ。

係員:「よろしいですか?」

パイン、アリス:「はい」

係員:「それでは始めます。」

そう言うと係員がなにかの呪文を唱えだす。

次の瞬間、魔法陣が光りだす。

パイン:(体が熱くなってきた。)

アリス:(ぽかぽかする。)

呪文の詠唱が終わったとき、パインは右側に、

アリスは左側に気配を感じた。


係員:「パーティーの術式は終了しました。

   お互いの位置は分かりますか?」

パイン:「アリスのいる方向に何かいるという気配を感じます。」

アリス:「わたしも同じです。」

係員:「それが相手の位置です。

   その気配は、人によって感じ方が異なります。

   それを覚えておくと誰がどの位置にいるかが瞬時に

   分かるようになりますよ。」

2人は気配を再確認すると、それが相手の気配だと

覚えるように努力した。


係員:「それでは、癒しの祈りを試してみましょう。

   アリスさん、癒し系の祈りをパーティー全体でやってみて

   下さい。」

アリス:「はい」

そう言うとアリスは祈り始めた。

しばらくすると、パインとアリスはその効果が現れたのを実感

した。

パイン:「癒しの効果が現れています。」

アリス:「私も感じます。」

係員:「はい、これで、パーティーの術式は終わりです。

   なお、パーティーの結成・解散は、各地にある傭兵協会で

   行うことが出来ますのでご利用ください。

   今回は試験代金に含まれていますので無料になります。」

パイン:((通常はお金を取られるのか、、、))

アリス:((そうだね。))

パインは、はっとした。

パイン:(なるほど、注意しないと思ったことが聞こえるのか。)


2人は部屋を出ると、しばらくの間パーティー会話を楽しんだ。

こうしてパインとアリスの初めてのパーティーが結成された。


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