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魔獣の壺 - 本編 -  作者: 夢之中
新たなる決意
18/99

初めてのお使い2

4人は、傭兵協会でポールをパーティーに加えると、

その足で、ジェイルの屋敷へと向かった。

そして、ジェイルの屋敷から転移の魔法陣を使い、

ズールの屋敷の近くへと移動した。

そこで、パインが最初に見たものは、墓だった。

それも、見渡す限りの墓、墓、墓、、、。

それは、巨大な墓地だった。

その墓地の真ん中にそれはあった。

昼間にも関わらず、人を拒むかのような異様な雰囲気を

感じないわけにはいかなかった。

ただ1人、アリスを除いては、、、。


パイン:((あれが、ズールの屋敷なのか?))

ポール:((はい、その通りでございます。))

サール:((・・・。))

アリス:((うぁー。まるで、お化け屋敷って感じ、、、。))


アリスは、墓地の中に屋敷を建てたのか、

それとも、屋敷を建てた後に墓地を造ったのか、

そんな疑問が頭の中をよぎった。


ポール:((まずは、屋敷の玄関まで参りましょう。))

パイン、サール:((はい。))

アリス:((はーい。))


屋敷に近づくにしたがって、屋敷の全貌が明らかになってゆく。

壁はびっしりとシダと思われる植物で覆われていた。

窓には外側から木の板が打ち付けられており、

さらに魔法陣が描かれていた。

しかし、100年以上前に建てられたにも関わらず、

壊れたり、崩れたりしている箇所が見当たらず、

それが更なる不気味さをかもし出していた。


玄関に到着すると、ポールが言った。

ポール:((無感霊銀をお渡ししますが、

    これの効果はおよそ2時間でございます。

    効果が現れると、パーティーメンバーの気配が

    消えますので、確認後に入りましょう。))

各自に小さなビンが配られ、4人同時に飲んだ。


ポール:((・・・。))

サール:((うっ。))

パイン:((うげっ。))

アリス:((うぁ、まっず。))

ポールを除く3人は舌を出すと、この上なく嫌そうな顔をした。


残り時間2:00

ポール:((皆様、パーティーメンバーの気配の確認を

    お願いいたします。))

3人は、気配を感じなくなったことを報告した。

ポール:((薬の効果が現れたようですね。

    それでは、入りましょう。))

そう言うと、ポールはドアを開けた。

「ぎいぃーーっ。」という音と共にゆっくりと扉が開いた。


残り時間1:59

扉が開くと冷たい空気が4人を包んだ。

まるで巨大な死者の手で身体をつかまれたような感じがした。

ゆっくりと中へ入る。

玄関ホールは、薄暗かったが決して真っ暗ではなかった。

特に外の光が入っているというわけでもなかったし、

照明の類があるわけでもなかった。

ただ、全体的に薄暗いという感じだった。

それが、さらに恐怖を煽った。


サールが光の魔法を唱え始めたが、ポールがそれを制止した。

ポール:((ダメです。

    死者は光に反応します。

    光に向かって攻撃を加え、消そうとするでしょう。))

サール:((そうですか。

    しょうがないですね。見えないわけではないので、

    このまま進みますか。))

パイン:((そうだな。))

アリス:((まさに、お化け屋敷って感じだね、、、。))

3人を他所にアリスだけがその雰囲気を楽しんでいた。


その時、入り口の扉が「バタン!!」と閉まった。

パインとサールがビクッと身体を震わせ、入り口の方を見る。

パイン:((うぁ、びっくりした。))

サール:((えぇ、びっくりしました。))

アリス:((そう?))

パイン:((アリス、怖くないのか?))

アリス:((なんで?

    薬飲んだから、襲われること無いよね?))

パイン:((確かに、そうなんだけど、、、。))


残り時間1:58

周りを探索すると、玄関ホールの右側にのみ扉があった。

屋敷の構造としては納得がいかなかったが、

壁が移動するという情報があったためそう考えることにした。

4人がその扉の前に集まると、パインがノブに手をかけた。

そのとき、右肩をポンと叩かれた。

パイン:「うぁっ。」

パインの身体がビクッと跳ねる。

そして、右側を見ようと首を回す。

右頬に何かが当たった。

よく見ると、指だった。

そして、指の先を目で追うと、アリスが笑っていた。

アリス:((プッ、パイン、怖がりすぎ、、、。))

呆れ顔でパインが言った。

パイン:((こんな状況で遊ぶな、、、。))


残り時間1:53

扉は苦も無く開いた。

そこは廊下と思われる通路だった。

壁には油絵と思われる絵画が飾られており、

反対側の壁には複数の窓があるものの、

板で打ち付けられていた。

廊下は真っ直ぐに進み、左に曲がっているようだった。

その突き当たりの所に、白っぽい何かががあった。

突然それが、カチャカチャと音を立てて浮かび上がった。

そして、骨格標本のように形作られた。

パインは、とっさに剣を構えた。

ポール:((パイン様、あれは我々を認識しておりません。))

パイン:((あぁ、そうだった。))

そして、剣を降ろす。

アリス:((あれ、なに?

    人の骨みたいだけど、、、。))

サール:((スケルトンですね。))

アリス:((へー、おもしろいね、

    あんなのがいるんだ、、、。))

アリスは1人で、スケルトンに近づき、

興味津々という感じで眺めていた。


しばらく、それの様子を見ていると、

カチャカチャと音を立てながら、

パインのいる方へと移動し始めた。

アリスもルンルンしながら、その後ろに続く。

一方、パインは硬直してそれを見ていた。

スケルトンがしだいにパインに近づく。

パインとスケルトンの距離に比例して

パインの顔が歪んでゆくのが分かった。

そして、スケルトンがパインにぶつかると、

ガラガラと崩れて骨の山になった。

アリスがパインを見ると、その顔は恐怖に歪んでいた。

アリスは、ニヤニヤと笑いながら言った。

アリス:((もしかして、パインって、

    幽霊とか苦手なのかなー?))

パインは悔しそうな顔で答えた。

パイン:((悪かったな、、、。))


残り時間1:49

通路を進み左側へと曲がると、扉が見えた。

パインはアリスの言葉がよほど悔しかったのか、

自ら先頭を志願していた。

扉の前まで進み、内開きの扉をゆっくりと開くと、

その隙間から扉の奥を覗いた。

パイン:「うぁぁぁぁーーーっ。」

パインが尋常ならざるスピードで扉から飛び退いた。

すぐ後ろにいたサールにぶつかり、2人して尻餅をついた。

サール:「いてててて、、、。」

パインは口を半開きにして、扉の向こうを指差していた。

パイン:「うぁ、うぁ、、、。」

アリス:((もう、何言ってるのか、分からない。))

アリスがパインの上をまたぐと、扉の向こうを覗いた。

そこには、「うー、うー。」という声を上げて、頭から

血を流している人が、こちらを監視するように立っていた。

アリス:「えっ、あなた、怪我してますね。

    大丈夫ですか?」

と、声をかけた。

その時、ポールが言った。

ポール:((それは、死人。別名ゾンビでございます。))

アリス:((えっ、そうなんだ。))

ポール:((この屋敷には、生きている人間はいませんよ。))

アリス:((あー、そっか。))

そして、ポールは扉に近づくと扉を閉めた。


ポール:((まずは、パイン様が落ち着くまで待ちましょう。))

サール:((そうですね。))

アリス:((はーい。))

そして廊下に座ると、パインが落ち着くまで休憩した。

サール:((アリスさんは、死人とか怖くないんですか?))

アリス:((えっ、あぁ、神聖魔道士は、研修で医療現場に

    参加するのが義務付けられていたから、

    怪我人とか、いつも見てたし、

    怖がっていたら救護できないでしょ。))

サール:((なるほど、そう言うことでしたか。))


しばらくすると、パインが落ち着きを取り戻した。

パイン:((取り乱して、すまない。もう大丈夫だ。))


残り時間1:40

パインは、再び扉を開くと、恐る恐る覗き込んだ。

それは、まだ、そこにいた。

パインは一回身震いし、覚悟を決めたような顔をすると、

扉を全て開け、ゾンビの横を触れないように壁に張り付いて

移動した。

続くアリスは、右手を上げ、ゾンビに

 「こんにちは」

と挨拶しながら通過していった。


扉の先は、食堂と思われた。

天井には豪華なシャンデリアがつけられており、

その部屋の真ん中には、大きなテーブルがあり、

その周りには8人分の椅子が整然と置かれていた。

テーブルの上には、シミの付いたテーブルクロスが

掛けられており、燭台と何も入っていない花瓶があった。

主の席と思われる一番奥の席には、

これから食事でもするかのように、食器セットが置かれていた。

主の席の左側には次へと続くであろう扉があった。

しかし、その扉にはノブはおろか、鍵穴もなかった。


パイン:((これは、どうやってあけるのだろう?))

そう言いながら、パインは入ってきた扉の横にいるゾンビを

横目でちらちらと見ていた。

サール:((どこかにスイッチのようなものがあるのでは?))

パイン:((ポールさんは何か知らないかな?))

ポール:((前回の時にも仕掛けのあった部屋が存在していた

    ことは伺っております。))

パイン:((そうですか、やっぱり何かあるんだろうな。))

サール:((えぇ、探すしかなさそうですね。))

アリス:((はーい。))

そして、4人は何か仕掛けが無いかを探し始めた。

パインは決してゾンビの方を探そうとしなかった。

しばらくの間、注意深く探したが、

それらしいものは発見できなかった。


突然、「ガチャ、ガラガラガラ、、、。」という音がすると、

その扉が横にスライドして開いた。

そして、スケルトンとゾンビが扉の奥から、

ぞろぞろと入ってきた。

4人は、それを呆然と見つめていた。

全ての死人が通過するとゆっくりと扉が閉じてゆく。

一番近くに居たポールの動きは素早かった。

扉の近くの椅子を持ち上げ、開いた扉の隙間にはさんだ。

扉は動きを止め、そこには人が通れる隙間が開いていた。


ポール:((ふぅ、なんとか間に合いました。))

アリス:((すごーい。))

サール:((やりますね。))

パイン:((さすが、有能な執事さんですね。))

ポール:((いえいえ、運がよかっただけですよ。))


そんな会話をした後、4人は開いた扉の先へと向かった。

残り時間1:17


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