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魔獣の壺 - 本編 -  作者: 夢之中
新たなる決意
17/99

初めてのお使い1

連合暦20年3月24日、

ドレアルを含めた4人が天馬の尻尾亭で朝食をとっている時、

1人の男が店に入ってきた。

それに気づいたパインが声を上げた。

パイン:「おっ、ジェイルじゃないか?」

他の3人もそちらに目をやる。


アリス:「もぐもぐ、、、もぐもぐ、、、ごっくん。」

サール:「ジェイルさん、おはようございます。」

ドレアル:「ジェイルか、、、。」

アリス:「おはよう。ジェイル。」


ジェイル:「食事中でしたか、これは失礼。

     食事が終わるまで、こちらで待たせてもらいます。」

そして、少し離れたテーブルに座る。

ジェイル:「ポール!!。」

ポールが台車を押して入って来ると、ジェイルの横に止まる。

そして、台車からテーブルクロスを取り出すと、

テーブルの上へと広げる。

続いて、豪華なティーセットを取り出して、

テーブルの上に並べた。

最後に、ティーカップを持つと、湯気の立つポットから

紅茶を入れ始めた。

そして、ボットを高く持ち上げる。

紅茶が滝のように落ちながらティーカップへと入ってゆく。


それを見ていた4人が歓声をあげる。

アリス:「すごーーーい。」

パイン:「おぉ。」

サール:「へー。」

ドレアル:「ほう、それでうまくなるのかのう?」


紅茶の入ったティーカップが静かにジェイルの前に置かれる。

ジェイルはティーカップを優雅に掴むと、小指をピンと伸ばし、

静かに口に近づけた。

しばらく、紅茶の香りを楽しむと、ゆっくりと口に含んだ。


パイン:((なんだか、仰々しすぎるな。

    俺は、普通にいれたのでいいや。))

サール:((一庶民の私としては、普通のやり方でいいですね。))

アリス:((あれはあれで、楽しいよ。))


そんなパーティー会話を続けながら朝食は続いた。

4人の食事も終わり、食器を片付け終わったとき、

ジェイルがおもむろに立ち上がると、3人に近づき声をかけた。


ジェイル:「そろそろ、よろしいかな?」

パイン:「はい、なんでしょう?」

ジェイル:「実は、頼みたいことがあるのだが。」


サール:((嫌な予感がしますね。))

パイン:((あぁ、こいつのことだから、

    なにか裏がありそうだけど、、、。

    まあ、話だけ聞いてみるかね。))

サール:((そうですね。))

アリス:((はーい。))


パイン:「話とは、なんでしょうか?」

ジェイル:「お前ではない。そちらのアリスに話がある。」

アリスは、自分を指差しながら、パインとサールを交互に

見ると、口を開いた。

アリス:「えっ、わたし?」

ジェイル:「まあ、アリスというよりは、アリスの幻獣にだが。」

アリス:「シロちゃんに?」


シロ:((一体何にゃんだ?

   とりあえず、話を聞くにゃ。))

アリス:((わかった。))


アリス:「話を聞くそうです。」

ジェイル:「それは良かった。

     それでは、話をさせてもらう。」

そう言って、ジェイルは話始めた。


ジェイル:「ズールの屋敷という名を聞いたことがあるか?」

アリス:「私も、シロちゃんも知らないです。」

ジェイル:「ズールの屋敷というのは、

     ここ、カルラドの遥か北にある屋敷の名前だ。」

パイン:((そのままじゃないか。))

サール:((ですね。))

ジェイル:「その屋敷は、死人使いの屋敷なのだ。」

サール:「えーーーーーっ。」

パイン:「死人使い?」

アリス:「なにそれ?」

シロ:((にゃに。))


サール:「別名、ネクロマンサー。

    禁断の秘術を使って自分を殺し、その見返りとして、

    死者を使い魔として操る者の事です。」

パイン:「えっ、死んでるの?」

サール:「えぇ、死んでいるといっても、

    生気が無いだけで、生前と何も変わらないそうですが、

    だだ、良心がなくなると言われています。」

ジェイル:「いいかな?」

サール:「あっ、すみませんでした。」

ジェイル:「では、話を続けさせてもらう。」

ジェイルは話を続けた。

ジェイル:「その屋敷の存在が確認されたのが100年前。

     いつの頃からかそこに在ったそうだ。

     特に我々に何かするわけでもなかったため、

     討伐の対象にはなっていなかった。

     そこに住む主がズールだ。」

パイン:((名前は、すぐ分かるって、、、。))

ジェイル:「そこでだ、その主に玉を渡し、

     代わりのものを貰ってきてほしい。」

サール:「えっ、それは、無謀でしょう。

    死人は、生きている者は問答無用で攻撃をすると

    聞いています。

    そんな場所に行くのは死にに行くのと同じですよ。」

ジェイル:「分かっている。

     ポール、あれを、、、。」

ポールが無言で、1本のビンをテーブルに置く。

ジェイル:「それで、これが使える。

     無感霊銀だ。

     これを人数分用意しよう。」

サール:「うへっ!!。」

パイン:「無感霊銀?」

アリス:「なにそれ?」

ジェイル:「死者が生者を見つけられなくなる妙薬だ。」


サール:((これ、すごく高価なんですよ。))

パイン:((いくらぐらいするの?))

サール:((1本で、家が建ちます。))

パイン:((げげっ。))


ジェイル:「この妙薬は2時間ほどしか効果が無い。

     その2時間の間にズールを見つけ出して、

     渡してほしいのだ。

     ズールは魔法陣の中から外へは出られないようだが、

     しかし、生者もその魔法陣の中へは入れない。」

アリス:「なるほど、それで、シロちゃんの出番なんだ。」

ジェイル:「そうだ、幻獣は魔法陣の中へ入れるというわけだ。

     お前達以外に適役はいない。」

サール:「いくつか質問があります。」

ジェイル:「なんだ?」

サール:「ズールから攻撃をされたりしないのですか?」

ジェイル:「んー。たぶん大丈夫だとおもう。」

パイン:「たぶん?」

ジェイル:「1年ほど前、同じ事をやるために使者を派遣した。

     もちろん、戦闘をしながら進んだんだがな。

     そして魔法陣まで到達した。

     ズールは、揺り椅子に座ったまま動かなかった。

     1人が魔法陣に入って行った。

     入った者は、一瞬にして老人の様に変化し、

     そして、白骨化してしまった。

     ズールは揺り椅子に座ったまま動かなかった。

     残りの使者は、渡すことが不可能と判断して、

     戻ったというわけだ。

     このことから、攻撃されないと判断した。」

サール:「ということは、

    屋敷の見取り図とかあるのでしょうか?」

ジェイル:「残念ながら見取り図はない。

     というか、意味がないんだ。」

サール:「えっ?」

ジェイル:「屋敷は、魔法によって、毎日形を変える。

     壁が移動しているといったほうがわかりやすいか?」

サール:「なるほど、では、幻獣だと大丈夫と考えた理由は?」

ジェイル:「幻獣は死ぬことがない。

     そのように、前に見せた巻物に記載されていた。

     異界の生物は生命体ではなく精神体であり、

     人間界で具現化しているにすぎないと。

     それで、召喚士の儀式を行うことにしたのだ。」

パイン:「なるほど、そこへ繋がるのか。」

アリス:((シロちゃん、本当なの?))

シロ:((みゃあ、当たらずも遠からずってところかにゃ。

   この身体もアリスが好きな形になっただけだしにゃ。))

サール:「代わりの物というのは?」

ジェイル:「骨だ。

     それを求める理由は今は教えることはできない。」

サール:「渡す玉と引き換えに骨が貰えるという根拠は?」

ジェイル:「それは、別の巻物に書いてあったのだ。」

サール:「なるほど、私の質問は以上です。」

ジェイル:「他に聞きたいことは無いのか?」

パイン:「今のところは、、、。」

ジェイル:「報酬だが、、、。ポール、あれを。」

ポールが1本の杖をテーブルに置く。

パイン:「杖?」

その杖は、うねうねと曲がっており、その上側に、

宝石のような玉が付いていた。

サール:「これは?」

そう言って、サールが手に取り、杖を見る。

サール:「ただの杖にしか見えませんね。」

ジェイル:「そうだろうな。これは、アリスにしか効果がない。」

サール:「えっ、ということは、召喚士の為の杖?」

ジェイル:「そうだ。召喚士以外には使い道は無い。」

サールがアリスに杖を渡す。

アリス:「あっ、何か分からないけど、いい感じがする。」

シロ:((ちょっと、気持ちいいにゃ。))

ジェイル:「この杖を召喚士が持つと、

     召喚獣の滞在時間を延ばすことができるようだ。

     簡単に言うと、召喚獣を出していても疲れにくくなる。

     召喚獣にも効果があるようだが、それは不明だ。」

サール:「そんなすごい杖、報酬にしてもいいんですか?」

ジェイル:「私が召喚士になることが出来ないことが

     分かった今、これは無用の長物だ。

     召喚士はアリス1人しかいない。

     魔獣王を倒すためには、持つべき者が持つのが

     正しいんだ。」


パイン:((こいつ、思っていたより、すごいやつかも。))

サール:((そうですね。

    魔獣王討伐を真剣に考えているんですね。))

アリス:((だね。))


パインは、少し考えると口を開いた。

パイン:「その骨というのは、魔獣王を倒すために必要なのか?」

ジェイル:「そうだ。」


パイン:((俺は決心した。この話やろう。))

サール:((私も賛成です。))

アリス:((うん、そうだね。))

シロ:((アリスがやるにゃら、やるにゃ。))


パイン:「分かりました。引き受けます。」

ジェイル:「そうか、引き受けてくれるか。

     杖は、先渡ししておく。

     有効に使ってくれ。」

アリス:「やったー。ありがとう。」


ジェイル:「それでだ、ポールを一緒に連れて行ってもらう。」

パイン:「えっ?」

ジェイル:「玉と骨の交換の交渉はポールに行ってもらう。

     それにポールはA級の神聖魔導士だ。

     死者には上位の祈りが有効なんだ。」

サール:「そうですね、万が一の事を考えると、私の炎系の呪文

    だけでは、心もとないですしね。

    浄化の祈りもできるんですよね?」

ポール:「はい、覚えております。」

サール:「それなら、心強い。」

パイン:「そうだな。

    こちらからお願いしたいぐらいだ。」

ジェイル:「よし、これで決まりだな。

     では、すぐに、出発してもらおう。」

パイン:「えっ、いまから?」

ジェイル:「あぁ、それで朝一番に来たんだよ。

     それに、昼は屋敷の外に死者はいない。」

パイン:「なるほど、分かりました。」


こうして、3人+ポールは、

ズールの屋敷へと向かうこととなった。

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