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魔獣の壺 - 本編 -  作者: 夢之中
新たなる決意
16/99

初めての宝探し3

パインは、壊れた柱や壁を使い、隠れるようにゴーレムに

近づいて行く。

正面に回りこみ額の文字を確認すると、

魔法文字のようなものが描かれているのが見えた。

ゴーレムはこちらに気がついていない。

ある程度の距離まで近づくと、パインはゴーレムの前に

躍り出た。

ゴーレムはパインを認識すると、パインに向かって動き始めた。

パインは、一定の距離を保ちながら、誘導するように移動する。

ゴーレムが大きな柱の横を通過しようとした瞬間、

サールの唱えていた拘束の呪文が発動した。

ゴーレムの身体に糸のようなものが纏わりつき始めた。

その時、ゴーレムの頭の上に何かが動いた。


少し前、3人は作戦を練っていた。

パイン:((さて、どうやって文字を消すかだな。))

サール:((シロさん、消すというのは、

    文字通り、擦ったりして消すということなのですか?))

シロ:((そうにゃ、擦れば消えるにゃ。))

サール:((たとえば、塗るとかではダメなのでしょうか?))

パイン:((なるほど、墨汁とかをかけるということか。))

シロ:((だめにゃ、それは消したことにはならないにゃ。))

サール:((そうですか、ということは、

    ゴーレムに近づき、そして額に手をかけて、

    擦らないといけないわけですね。))

パイン:((それは、難問だな。))

サール:((ですね。))

ずっと考え込んでいたアリスが声を上げる。

アリス:((ねえねえ、こんなのはどうかな?))

パイン:((えっ、なにかいい方法があるのか?))

サール:((なんですか?))

アリス:((まず、パインが囮になって、ゴーレムを柱の下に

    おびき寄せる。

    そして、サールが拘束の呪文を使って、

    ゴーレムの動きを止める。

    そして、柱の上から飛び降りて、頭の上に乗っかって

    額の文字を消す。))

パイン:((なるほど。

    しかし、失敗したら、頭上に居た者が真っ先に

    狙われるぞ。

    大丈夫なのか?))

アリス:((大丈夫。))

そう言ってアリスは、にっこりと笑った。

サール:((それで、消す役目を

    アリスがやるというわけですね。))

アリス:((私じゃないよ。))

パイン、サール:((えっ?))

アリス:((シ・ロ・ちゃ・ん。))



頭の上に飛び降りたのは、シロだった。

そして、ゴーレムの頭に後ろから取り付き、

両手を額のところへ回す。

ゴーレムは突然の頭への攻撃に頭を振って応戦する。

シロ:「んぎゃー!!」

シロはゴーレムの頭の上で、振り落とされないように

耐えていた。

シロ:((にゃんで、こんなことになったにゃん。))

シロはあの時の会話を思い出していた。


アリス:((私じゃないよ。))

パイン、サール:((えっ?))

アリス:((シ・ロ・ちゃ・ん。))

一瞬の沈黙の後、シロが言った。

シロ:((にゃに、それは無理にゃ。))

アリス:((シロちゃんって、私の幻獣だよね。))

シロ:((そうだにゃ。))

アリス:((じゃあ、私のお願い聞けないの?))

シロ:((お願いはきくにゃ。))

アリス:((じゃあ、額の文字を消して、お・ね・が・い))

シロ:((にゃにゃにゃ、ばれたにゃ。

   こんにゃに、早くばれるにゃんて、、、。))

サール:((なるほど。

    前回の時は、指示してなかったんですよ。

    それで、シロさんは、本能に従って逃げたと、、、。))

シロ:((ばれたのにゃら、しかたがにゃいにゃ。

   やるにゃ。

   あんまり無謀にゃお願いするにゃよ。

   幻獣にゃんていっても、痛いのはいやにゃ。))

アリス:((はーい。))

今の返事にシロは、嫌な予感が頭をよぎり、背筋がぞっとした。


ゴーレムが白い糸に覆われていくなか、

シロはなんとか耐えていた。

シロ:((やばいにゃ、もうだめにゃ。))

シロがゴーレムの頭に片手で、なんとか掴まっているとき、

 「ドーン!!」

と言う音と共に、ゴーレムの身体が揺らいだ。

そして、ゴーレムが後ろに倒れる。

シロは倒れるゴーレムの頭にしがみつくと、

顔の方へ移動し、額に手をかけた。


ゴーレムが倒れる少し前、逃げていたパインは所定の位置で

立ち止まると、振り向き、拘束の呪文によって

徐々に拘束されてゆくゴーレムを見ていた。

シロが頭に飛びつき、振り落とされそうになると、

すぐにゴーレムに向かって突進した。

そして、ゴーレムの首あたりに飛び蹴りを入れる。

すでに足を拘束されていたゴーレムは、バランスを崩し

後ろへと倒れた。

パインは、そのまま下へと落下する。

そして、身体を地面に強く打ち付け、

しばらく動けなかった。


ゴーレムが後ろへ倒れた直後、「グォーーーッ」という、

唸り声のような音を発した。

「ブチブチブチ、、、。」と言う音と共に、

拘束が消え去った。

ゴーレムは右腕を頭の上に振り上げ、シロを吹き飛ばした。

シロ:「んぎゃ。」

シロは、近くの柱に激突し、ふらふらとしている。


ゴーレムは起き上がるなり、近くに倒れているパインに近づく。

パインは落下の痛みに耐えながら仰向けになると、それを見た。

ゴーレムが両腕を上げ、自分目掛けて振り下ろそうとするのを。

パイン:「うぁーーーっ!!」

次の瞬間、ゴーレムの頭から砂のようなものが落ち始め、

一気に崩れ始めた。

そして、ゴーレムが消え去り、砂の山が残った。


直後、シロが言った。

シロ:((やったにゃ、消したにゃ。))


パインがゆっくりと起き上がると、シロ、サール、アリスの順で

砂山に集まった。


アリス:((これ、ゴーレムだよね?))

サール:((えぇ、ゴーレムですね。

    額の文字を消したので、魔法が解けたんですよ。))

パイン:((いてててて、、、。))

パインが腰を摩りながら言った。

パイン:((なるほど、魔法が解けると砂になるんだな。))

シロ:((そうにゃ。))

シロは得意満面な顔で言った。

アリス:((シロちゃーーーーん!!))

アリスがシロを抱き上げると、思いっきり抱きしめた。

シロ:((くっ、くる、しい、にゃ、、、。))


サールは、砂を少し取ると、袋に入れ大事にしまった。

研究用として持ち帰るとのことだった。

3人は、砂山の周りに腰を下ろすと、しばらく休憩した。

そして、3人揃って祭壇へと向かった。


パイン:((あれ、なんだろう?))

祭壇の上には、魔法陣の上に大人の頭ぐらいの大きさの

白く丸い玉が置いてあった。

サール:((魔法陣が描かれていますね。

    何の魔法陣でしょうか?))

サールが魔法陣の魔法文字を注意深く観察する。

サール:((どんな魔法が発動するか分かりません。

    うかつに触らないほうがいいですね。))

その時、魔法陣が一瞬光った。

パイン:((えっ?))

アリス:((あっ、、、。))

サール達がパインを見ると、パインがその玉を持ち上げていた。

サール:((うぁ、遅かったですか、、、。))

3人は、しばらく、そのまま動かなかった。

アリス:((何も起こらないね。))

パイン:((あぁ、そうみたいだな、よかったな。))

サールは呆れたように言った。

サール:((今回は何もおこらなかったですが、次からは勝手に

    触ったりしないでくださいね。))

パイン:((次からは、気をつけるよ。))

アリス:((はーい。))

サールが2人を見ると、2人はその玉に夢中だった。

パインとアリスは2人して、その玉を撫で回していた。


その後、他に何かないかを探したが、

特にお宝のようなものは無かった。

しかたなく、3人は戻ることにした。


サール:((さて、戻るにしても、出口は無いんでしょうかね?))

パイン:((確かにそれらしいものは無さそうだな。))

アリス:((まさか、帰れない?))

サール:((いえ、そんなことは無いんですが、

    出口が無いっていうのが、

    ちょっと変に思っただけですよ。))

パイン:((確かにそうだよな。))

サール:((まあ、考えても分かりませんので戻りましょうか?))

パイン:((あぁ、そうしよう。))

アリス:((はーい。))

3人はサールの帰還の魔法でカルラドへと戻った。

そして、コゴーロ老人のところへと向かった。


コゴーロはカルラドの家に居た。

玉をコゴーロの前に置くと、起こったことを説明した。


コゴーロ:「なんと、その玉があったのか、、、。」

パイン:「えぇ。」

コゴーロ:「まさか、、、残っていたのか?。

     しかし、、、。

     ありえんな、、、。」

コゴーロがぶつぶつと独り言を言い始めた。

そして、何かを思ったのか、突然質問した。


コゴーロ:「ところで、最初にこれを持ったのは、誰じゃ?」

パイン:「俺ですけど。」

コゴーロ:「おぬしか、、、。

     では、その時魔法陣は光ったか?」

パイン:「光りましたよ。何も起こりませんでしたが。」

コゴーロ:「そうか、光ったか。」


また、ぶつぶつと独り言を言い始めた。

コゴーロ:「どっちに、転ぶかじゃな。

     どうする?

     なるようにしかならんか、、、。」


パイン:「あのーーーーー。

    コゴーロさん?」

コゴーロ:「あっ、すまんのー。」

パイン:「どうしたんですか?」

コゴーロ:「いや、なんでもない。

     ところで、報酬の件じゃが、

     この玉を売ることはできん。

     それに、そなたらが今もっていても意味が無い。

     とりあえず、最初の依頼料の金貨1枚は支払おう。

     残りは、3ヶ月後に取りにまいれ。

     それでどうじゃ?」

パイン:((どうする?))

サール:((老人は玉のことを何か知っているようですね?

    教えてくれそうも無いですが。

    まあ、3ヵ月後に取りに来いということは、

    その時にでも教えてくれるのかもしれないですね。

    待ちましょうか?))

アリス:((私は、どっちでもいいよ。))

パイン:((分かった、じゃあ、待つかな。))

パイン:「分かりました。

    じゃあ、3ヵ月後に受け取りに来ますね。」

コゴーロ:「そうか、では、3ヶ月間後に待っておる。

     悔いを残さないようにな。」

3人は、老人の最後の言葉が少し気にはなったが、

その言葉の意味を質問することも無く、老人の家を後にした。


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