初めての依頼
連合暦20年3月22日、
彼等は傭兵協会にいた。
パイン:「このクエストにしないか?」
サール:「そうですね、これなら近いですし、
半日ぐらいで終われそうですね。
それに、銅コインももらえるみたいですしね。」
アリス:「私もそれでいいよ。」
3人が手続きを済ませて、クエストに向かおうとすると、
老人が話しかけてきた。
老人:「そのクエスト受けなさるか?」
パイン:「はい、今、受けました。」
老人:「ならば、ついてまいれ。」
パイン:「えっ、何故ですか?」
老人:「わしが、それを依頼したからじゃ。」
3人:「!!」
3人は、老人に促されるまま、老人の家へと向かった。
そして、老人の家に着くと、話を聞くことになった。
老人はコゴーロと名乗った。
この家は借家であり、クエストの地区にある家が
本当の家だということだった。
2日前に畑仕事を済ませて、家に帰ると家の窓を割って
小さな魔獣が飛び出してゆくのを見たらしい。
恐る恐る家に入ったが魔獣は居なかった。
家の中はところどころが荒らされていた。
そして、家宝の像がなくなっていることに気がついた。
魔獣が盗んだと考え、このクエストを受ける者に
取り戻してもらうべく、待っていたということだった。
パイン:「なるほど、で、我々にその像を取り戻してほしい
と言うわけですか。」
コゴーロ:「そうじゃ。
報酬は金貨1枚でどうかな?」
パイン:「えっ、金貨1枚ですか。」
パイン:((どうだろう?金貨1枚は、魅力的すぎる。))
サール:((たぶん、魔獣が持っていると思うので、
壺の回収と同時にできそうですよね。))
アリス:((私は、受けていいと思うよ。))
パイン:((じゃあ、引き受けるか。))
パイン:「分かりました。やってみます。」
コゴーロ:「おお、そうか。やってくれるか。
それでは、早速、向かうとするかのー。」
4人は、クエスト地区へと向かった。
そして、老人の家に到着した。
コゴーロ:「ここが、わしの家じゃ。」
パイン:「ここに壺があるかもしれないので、
とりあえず、中を調べさせてもらいますね。」
コゴーロ:「いま、あけるぞ。」
コゴーロは鍵を使った。
パイン:「よし、はいるぞ。」
サール:「警戒していきましょう。」
アリス:「はーい。」
3人はゆっくりと家の中へ入ると、
警戒しながら家の中を捜索した。
しかし、そこに魔獣はいなかった。
そして、外にでると、サールが口を開いた。
サール:「コゴーロさん、魔獣を見たときに
この家の鍵は掛けていたんですよね?」
コゴーロ:「もちろんじゃ。」
サール:((不可解なことがあります。))
パイン:((なにが?))
アリス:((?))
サール:((こっちへ来て下さい。))
そして、窓のそばに行く。
窓は、割られており、その破片は外に落ちていた。
明らかに、魔獣が中から外に飛び出たときのものだと思えた。
サールは、割れた窓の枠を前後に揺するが、窓は開かない。
サール:((この家の入り口は鍵が掛けられていた。
窓は開かない。
そして、魔獣はこの窓から逃げ出した。
他に出入りできるところはない。))
パイン:((まっ、まさか、不可能犯罪!!))
サール:((そう、魔獣はいったい何処から入ったのか?))
パインとサールは、腕を組み、上側の腕を顎に当てると、
考え始めた。
横で、アリスがそれを真似しようと、下側の腕を動かして、
苦戦していた。
しばらくの間、静寂があたりを支配した。
黙ってみていたコゴーロが口を開いた。
コゴーロ:「何をしているんじゃ?早く取り戻してくれ。」
サールがそれを説明した。
コゴーロ:「何をいってるんじゃ。この窓はこうじゃ。」
そう言って、窓を横にスライドする。
ガラガラと窓は横に開いた。
サール:「ぐぁ、横に開くんですか。」
パインは、その場にずっこけた。
コゴーロ:「しっかりしてくれ、コントを見るために
呼んだわけではないぞ。
そもそも不可能だったら、犯罪とは呼ばんじゃろ。」
アリスが「そっか」といいながらポンと手を叩いた。
コゴーロ:「さっさと、やってくれ。」
コゴーロはぶつぶつと独り言を言いながら家に入って行く。
パインとサールは、気まずい思いを残しながら、
周りの探索を始めた。
アリスはそれに続く。
畑の横は、草むらだった。
手入れをしていないのか、子供程の高さまで草が伸びていた。
その草むらの奥で何か大きなものが動いた。
パイン:「なにかいる、気をつけろ。」
アリスがシロを召喚する。
アリス:「シロちゃん、お願いね。」
シロ:「まかせるにゃー。」
その時、いきなり子供ほどの大きさの魔獣が
草むらの中から飛び掛ってきた。
シロ:「んぎゃー!!」
シロの動きは素早かった。
一声叫ぶと、すぐに動いた。
そして、アリスの後ろへと逃げ込んだ。
アリス:「えっ?、シロちゃん?」
シロを見ると、アリスの足にしがみついて、
ぶるぶると震えていた。
アリス:「えーーーーーっ。」
その時、パインはシロの動きより、一歩遅れていたが、
なかなかの反応だった。
素早く剣を振ると、魔獣を一刀両断した。
それを見ていたサールは、思った。
サール:(パイン、強くなったんじゃないか?)
パインは、幻獣との戦いで吹っ切れたのか、
迷い無く動けるようになっていた。
もともと、剣の腕は悪くはなかったのだ。
本来の実力が出せるようになったのだろう。
パインは、剣を収めるとシロを見た。
アリスの後ろで足にしがみついている。
パイン:((シロ、大丈夫か?))
アリス:((うーん、どうだろう?))
シロがアリスの意識を通して話始めた。
シロ:((びっくりしたにゃー。))
サール:((ほう、パーティー会話に介入できるのか。))
シロ:((アリスに教えてもらったにゃ。))
アリス:((昨日の夜に話したの。))
パイン:((ところで、シロ、お前幻獣のくせに弱くないか?))
シロ:((そんなことにゃい。びっくりしただけにゃー。))
パインはアリスにしがみつくシロを見ながら言った。
パイン:((まあ、そう言うことにしておくか。))
アリスがシロを帰すと、3人は捜索を続けた。
そのあと、草むらの中で、3匹の魔獣を倒しながら進んだ。
草むらが終わりに近づいたとき、目の前の切り株の上に
壺があった。
その横で、大人ぐらいの大きさの魔獣が横になっていた。
パイン:((あ、壺だ。魔獣もいるぞ。寝ているのか?))
サール:((動かないですね。寝ているのかも、、、。))
アリス:((魔獣って、寝るんだ。))
シロ:((魔獣も寝るにゃ。
ただし、人間の寝るのとはちょっと違うにゃ。
きっと、他の魔獣と意識を共有しているにゃ。))
アリス:((意識の共有?))
シロ:((パーティー会話みたいなものにゃ。
意識を共有している間、うごけないにゃ。))
アリス:((なるほど。))
パイン:((ちょっと、魔獣が枕にしている物見てみろ。))
魔獣が寝ている頭のところに木で作られたと思われる円柱状の
物体があった。
サール:((もしかしたら、
あれが、老人の言っていた像ですかね?))
アリス:((かも、、、。))
パイン:((よし、やるぞ。))
アリス:((はーい。))
サール:((いつでも。))
パイン達が取り囲むように、ゆっくりと近づく。
魔獣が起きた。
パイン達は、その場で凍りついた。
魔獣が下を向きのろのろと、アリスに近づく。
そして、上を見た。
アリスと目があった。
アリス:「ギャーーーーッ!!」
魔獣が驚いて、凍りつく。
同時にアリスがメイスをめちゃくちゃに振り回す。
その攻撃の1発が魔獣の頭にクリティカルヒットした。
魔獣はふらふらとよろめきながら、その場に倒れた。
パイン:((うは、アリス強い、、、。))
サール:((あの攻撃、すごかったですね。))
パイン:((ああ、目にも留まらぬ早業だな。
よし、百烈棍と命名しよう。))
サール:((それ、いいですね。))
アリス:((なにそれーーっ。))
アリスが頬を膨らませて怒っている横で、
パインが壺の蓋を閉め、サールが像を手に取る。
サール:((これが、老人の言っていた像みたいですね。
何の像なんでしょうか?
かなり腐食していて、よくわかりませんね。))
像を色々な角度から見る。
そして、その台座の裏側に明らかに人為的な
掘り込みをみつけた。
サール:((これ、なんでしょうか?))
パイン:((どれどれ。))
アリス:((なに?))
3人がそれを見る。
パイン:((これ、地図っぽくないか?))
サール:((そんな風に見えますね。))
アリス:((よくわかんない。))
パイン:((とりあえず、老人のところに持って行って
確認してみよう。))
サール:((そうですね。))
アリス:((はーい。))
そして、3人は壺を回収すると、老人の元へと戻った。
コゴーロ:「おぉ、取り戻してくれたか。
そうそう、これじゃ、これじゃ。
これが、盗まれた像じゃ。」
サール:「ところで、この像の裏にある地図のようなものは
なんですか?」
コゴーロ:「見たのか?」
パイン:「えぇ」
コゴーロ:「しょうがないの、教えてやるわい。」
老人は、しぶしぶというより、
進んで教えてくれているようだった。
コゴーロは、紙と墨汁を用意すると、
像の上側と下側を持ち、くるくると回しだした。
そして、2つに分解する。
パイン:「えっ、それって、2つに分かれるのか。」
コゴーロ:「そうじゃ。」
そして、その地図のようなものが書かれた面に墨汁をつけると、
版画のように紙に押し付けた。
サール:「なるほど、版画だったんですね。」
分解したもう一つも同じようにする。
そして、出来上がった紙を3人に見せる。
それは、確実に地図だった。
コゴーロ:「この地図は、代々我が家に伝わる宝の地図じゃ。」
3人:「宝の地図、、、。」
コゴーロ:「そうじゃ、祖先が何かを隠したようじゃが、
この場所がわからん。
この×印のついたところじゃ。
どうじゃ、探してみんか?」
3人は、驚いた。
その思わぬ申し入れに戸惑うばかりであった。