初めての召喚
これまでのあらすじ)
パインは、カイン王国で知り合ったアリス、サールと
行動を共にすることになる。
カルラド王国に拠点を移す3人。
少女の持っていたペンダントは
幻獣を呼び出すアイテムの一つだった。
ジェイルと共に召喚の儀式に立ち会う事になった3人。
召喚の儀式は成功するが、幻獣シヴァはアリスの中に
消えていった。
幻獣シヴァは、アリスに僕を遣わす。
僕とは一体?
そこには、ジェイル、ドレアル、パイン、サールの4人がいた。
ジェイル:「いったい何が起こったんだ?
突然、シヴァが光の玉になってアリスの中に
入って行った。
これって、どう考えても、おかしいだろ。
呼び出したのは、私だぞ。」
ドレアル:「まあ、まあ、落ち着くのじゃ。
あの嬢ちゃんが目を覚ましたら、
なにかわかるじゃろ。」
ジェイル:「ポール、ポールはいるか?」
ポール:「はい、いま参ります。」
そして、扉が開いたとき、ポールと共にアリスが立っていた。
パイン:「アリス!!」
アリスは何故か虚ろな顔をしていた。
そして、ポールに促されるように椅子に座る。
パインが再び声をかける。
パイン:「アリス、大丈夫か?」
アリスがハッとしたような顔をする。
アリス:「あっ、パイン、ごめんなさい。
私、なにか変なの。
私の中に何かいる。」
ジェイル:「シヴァなのか?」
アリス:「分からない。
遠くの方と、そして近くに。」
ドレアル:「それとは話せるのか?」
アリス:「遠くの方のは、よくわからない。
近くのなにかの考えが流れ込んでくる。
だけど、よくわからないのよ。」
ドレアル:「こまったのー、アリスちゃんのみが
頼りなのじゃがのー。」
突然、アリスが立ち上がる。
全員がアリスに注目する。
アリス:「あっ、分かった。なるほど、そうするのね。」
困惑していたアリスの顔が真顔になった。
踊りのような動きをする。
アリスが動きを止めたとき、
右手の甲に魔法陣が浮かび上がった。
魔法陣が光る。
アリスの近くに靄のようなものが広がると、
次第に色が濃くなってゆき、何かの形を形成していった。
次の瞬間、何かがそこにいた。
アリス以外の全員が呆然とそれを見ていた。
それは、大きさは子供ぐらいで、2本足で立つ、
真っ白い猫のような顔をした何かだった。
???:「にゃー、やっと出れたにゃー。」
アリス:「キャー、かわいい。」
アリスがそれに抱きつく。
???:「やめるにゃ、、苦しいにゃ、、、。」
アリスがハッとして、力を緩める。
ドレアルが口を開いた。
ドレアル:「おぬし、シヴァなのか?」
???:「にゃ?」
そう言って、それは、自分を指差す。
ドレアル:「そうじゃ、おぬしじゃ。」
???:「シヴァ様のわけが無いにゃ。
見てわからにゃいか?」
ドレアル:「ならば、おぬし、何者じゃ?」
???:「何者?何をいってるのかよくわからないにゃ。」
ドレアル:「では、名前はなんというのじゃ?」
???:「にゃまえ?それはまだ無いにゃ。」
ゲームなら、ここで名前入力が出たことだろう。
突然アリスが声を上げる。
アリス:「シロ!!。
そう、シロちゃんにしよう。」
パイン:(そのままじゃんか、、、。)
サール:(見たままですか、、、。)
アリスが「シロちゃーん」と言いながら、それを強く抱きしめる。
シロ:「くっ、くる、、、しい、、、にゃーーーっ。」
シロは、アリスの腕の中で両手両足をバタバタしながら
もがいていた。
それを見ていたドレアルが、
「さて」と言って話の取っ掛かりを作る。
アリスが力を緩める。
ドレアル:「それでは、シロとやらに尋ねたい。」
シロ:(にゃに、シロに決定にゃのか?
まあ、どうでもいいかにゃ。)
シロ:「にゃにかにゃ、分かる範囲で答えるにゃ。」
ドレアル:「何故シヴァは戦闘をやめた?」
シロ:「契約を結んでいる者を見つけたからにゃ」
ドレアル:「それが、アリスだったと?」
シロ:「そうにゃ。」
ドレアルがアリスを見る。
アリス:「えっ、そんな契約結んだ覚えがないよ。」
ドレアル:「まあ、そうじゃろうな。」
ドレアルは、少し考えると話を続けた。
ドレアル:「確か、シヴァは古の血の契約と言っておったの。
それは何なのだ?」
シロ:「残念にゃがら、それは知らないにゃ。」
ドレアル:「そうか。
では、何故シヴァではなく、
おぬしがアリスの中にいるのだ?」
シロ:「シヴァ様もアリスの中にいるにゃ。」
全員:「!!」
アリスは、思い当たることがあった。
アリス:「遠くにいる何か、、、。」
ドレアル:「なるほど。」
シロ:「アリスには、まだシヴァ様を呼び出すほどの
力が無いにゃ。
それで、自分がその代わりにゃ。」
ドレアル:「どうすれば、シヴァを呼び出せるのだ?」
シロ:「にゃにゃにゃ、それはいずれ分かるにゃ。」
シロは言葉を濁した。
ドレアル:「では、召喚士という言葉を知っているか?」
シロ:「人間がつけた、にゃまえかにゃ?」
ドレアル:「そうだ。」
シロ:「それにゃら、アリスがそうにゃ。」
全員:「!!」
ジェイル:「なんだと、くそ、私がなりたかったのに。」
シロ:「お前には無理にゃ。」
ジェイル:「なぜだ?」
シロ:「お前には資格が無いにゃ。」
ジェイル:「資格とはなんだ?」
シロ:「ちょっと待つにゃ。」
シロが何かを考えている。
シロ:「すまないにゃ。
シヴァ様が答えるにゃと言ったにゃ。
自分で調べるにゃ。」
ドレアル:「おぬしはシヴァと話せるのか?」
シロ:「それは無理にゃ、聞こえるだけにゃ。
シヴァ様は全て見ているにゃ。
そして、指示を与えるにゃ。」
ドレアル:「なるほど。」
シロ:「もういいかにゃ、アリスが疲れてるにゃ。」
アリスを見るとぐったりとしている。
シロ:「もう、もどるにゃ。」
シロは、霧のようになると、次第に消えて行った。
パイン:「アリス、大丈夫か?」
アリス:「えぇ、ちょっと、疲れたみたい。」
そう言ったかと思うと、アリスは寝てしまった。
ドレアル:「大体のことは分かったな。」
サール:「謎がまだ、残っていますがね。」
ドレアル:「この件、ここだけの秘密に
したほうがよさそうだな。」
サール:「そうですね。」
ジェイル:「あぁ、俺からも頼む、
幻獣契約に失敗し、
さらには付添いの者が召喚士になるなど、、、。
こんな話が広まったら、
ロミュラン家の名に傷がつく。」
パイン:「分かった、そうしよう。」
アリス:「んがーーーーっ。」
アリスの絶妙なタイミングのイビキを聞いて全員が笑い始めた。
その日は、解散となり、ジェイルの屋敷に一泊した。
連合暦20年3月21日、
パイン、アリス、サール、ドレアル、ローザは、
ポールが走らせる馬車の中にいた。
ローザ:「やっと、リナに会えるのね。」
ドレアル:「そうじゃな。」
パイン、アリス、サールの3人はあの男の事を思い出していた。
もし、あの男がローザの父親だったとしたら。
3人は、何と言えばよいか、まったく分からなかった。
ドレアルだけは、いつもと変わらない様子だった。
そして、馬車が止まった。
5人が馬車から降りる。
アリス:「ん?、ここどこ?」
パイン:「あれ?、天馬の尻尾亭じゃないのか?」
サール:「どこでしょうか?」
3人が考えていると、ドレアルが1軒の家の中へ入って行く。
しかたなく、4人はあとに続く。
ドレアル:「おー、先生。どうかの?」
男:「あっ、ドレアルさん、おはようございます。
えぇ、もう大丈夫ですよ。」
ドレアル:「会えるかの?」
男:「はい。」
そう言って、部屋へと案内してくれた。
ドレアルがローザに入るように指示する。
ローザが扉を開ける。
中にいた全員がこちらを向いた。
リナ:「ローザお姉ちゃん!!」
ローザ:「リナ!!」
そして、抱き合う2人。感動の再会であった。
パイン、アリス、サールは、2人の後ろにいる男女を見た。
横になっている男は、見覚えがあった。
そう、ペンダントを持っていた、あの男だった。
ドレアルの提案で、4人は部屋に入るのをやめた。
親子水入らずにしたほうがよいというものだった。
4人は、天馬の尻尾亭へと戻った。
そして、ドレアルに疑問をぶつけた。
ドレアル:「まあ、待て。順を追って話す。」
ドレアルが言うには、
先ほどの男女は、ローザとリサの両親だった。
2人は、クライムでのペンダント探索を終え、
そのペンダントをローザに託すと、
次のペンダントの探索の為、カルラドでペンダントの
捜索を行っていた。
そして、無事ペンダントを見つけ、帰路についたが、
途中で魔獣の襲撃を受けた。
そこで、2人は別々に逃げることになってしまったそうだ。
待ち合わせ場所を天馬の尻尾亭にして、、、。
男は、不眠不休で逃げた。
そして先に店に着いた。
もうろうとする意識の中でアリスをローザと間違えて、
ペンダントを渡そうとした。
ドレアルは、ペンダントに描かれた魔法陣が異質なものだと、
直感した。
警備兵に男を医療所に運ぶように指示して店にもどった。
3人が観光にいっている間に、ローザの母親がやってきた。
それで、2人で男のところへ行った。
その間に母親に事情を聴いた上で、
明日、ペンダントをジェイルに渡すことを約束して借り受けた。
転移の玉をつけた上で、アリスの手に渡った。
転移の玉をつけたのは、魔導士としての好奇心だったらしい。
朝、ジェイルが現れなかったら、アリスと一緒にジェイルに
会いに行くつもりだった。
パイン:「行き倒れで処理するとかいってませんでしたか?」
ドレアル:「別に、死んだとはいっておらんがのー。」
アリス:「私の癒しの祈りを止めましたよね?」
ドレアル:「癒し系は、傷を治すが睡眠不足は直せんよ。」
サール:「んー、我々の勘違いということですか、、、。」
アリス:「でも、何はともあれ、無事でよかった。」
パイン:「ああ、そうだな。」
サール:「そうですね。」
パイン:「ところで、あの玉はなんだったんですか??」
サール:「あれは、転移の玉ですね。
転移の玉のあるところに移動できるというものです。
それで、あの玉を持っていてもらったのですよ。」
パイン:「サールは、知っていたってことか、、、。」
サール:「何も聞かれなかったので、知っているのかと、、、。」
そこに、ローザとリナが現れた。
後ろには、両親が立っていた。
両親:「皆さん、ありがとうございました。」
ローザ:「ありがとうございました。」
リナ:「ありがと。」
パイン:「いえいえ、あまり役には立ってませんが、、、。
本当に皆さん無事でよかったです。」
アリス:「お体はもう大丈夫なんですね?」
父親:「はい、ぐっすり寝たら回復しました。」
サール:「それは、なにより。」
その後しばらく雑談が続いた。
彼等が故郷のコーラル村に帰ることを聞かされた。
そして、天馬の尻尾亭の入り口に皆が集まる。
父親:「本当にありがとうございました。
村に立ち寄ることがあったら、ぜひ尋ねて下さい。」
パイン:「こちらこそ、ありがとうございました。」
そして、天馬の尻尾亭から離れていく。
4人は、それを名残惜しそうに眺めていた。
突然、リナが振り返る。
リナ:「アリスお姉ちゃーん、バイバーイ!!」
アリス:「バイバーイ!!」
そう言って、手をぶんぶん振るアリスが印象的だった。
このとき、パイン達を監視する男達がいることに、
誰も気がついていなかった。