初めての豪邸訪問2
これまでのあらすじ)
パインは、カイン王国で知り合ったアリスと傭兵試験に合格する。
傭兵協会会長のバーバラは、試験中に起きた不可解な出来事を調査する為、
試験官サールを2人に同行させる。
カルラド王国に拠点を移す3人。
姉を探す少女と出会った。
ジェイルと名乗るヒーロー(?)に助けられるも
彼もリナの持っていたペンダントを狙っていた者の一人だった。
ペンダントにどんな秘密があるというのか?
ジェイルとポール、そして3人は会議室のような場所にいた。
ジェイル:「ポール、こいつらに説明してやってくれ。」
ポール:「はい。かしこまりました。」
ポールの横の移動式の小さな机の上には、複数の巻物と共に
例のペンダントが2つ置かれていた。
そして、見たことも無いリング状の物もあった。
ポールは巻物をテーブルの上に広げる。
3人は巻物に目を向けた。
そこには、文字がびっしりと書き込まれていた。
そして、最後の方には地図と思われるものが描かれていた。
ポールが話し始めた。
ポール:「この巻物は1年程前に当家の倉庫から
発見されたものです。
そこに書かれている内容は簡単に言いますと、
幻獣を召喚する為の遺跡を発見したということです。」
パイン:「えっ。」
サール:「幻獣だって!!」
アリス:「幻獣、、、。」
幻獣は、六界の1つである幻獣界に存在しているといわれる
魔物である。
遠い昔、神と会話が出来ていた頃に、
神によって幻獣界の存在を教えられたと言われている。
その頃は、幻獣を従えた人間もいたようで、
彼等を召喚士と呼んでいたらしい。
長い時間の中で、その呼び名以外は闇の中へと消えて行った。
今では、幻獣を従えているかを別にしたとしても、
召喚士と名乗る者は存在しなかった。
ポール:「そうです。幻獣です。
そして、この巻物には、その幻獣の召喚方法と
契約方法が書かれています。」
そう言うと、2巻目の巻物をテーブルの上に広げた。
3人はその巻物に目を奪われた。
その巻物には、文字と共に
2つの勾玉状の絵とリング状の絵、
3つを組み合わせたときの絵、
祭壇のような絵、
そして、羽衣のような物を纏った女性のような絵が
描かれていた。
サール:(これは、すごい。大発見じゃないか。)
ポール:「そして、その幻獣と戦い、屈服させる事によって
契約ができると書かれていました。」
ポールは2つのペンダントと1つのリングを机に置いた。
ポール:「このペンダントの1つはご存知ですね?」
パイン:「はい。」
ポール:「この3つの部品を組み合わせて、月食の日に供えると
幻獣が現れるそうです。
その月食の日が今晩なのです。」
パイン:(今晩だって、、、。)
サール:(なんと、月食の晩のみなのか、、、。)
アリス:(今日って、月食だったんだ。んー。見て見たいな。)
そして、3巻目の巻物をテーブルの上に広げた。
ポール:「この巻物には、
当時の者達も、これを使って幻獣を呼び出したことが
書かれています。
しかし、その強大なる力の前に敗れさったとも、、、。
その力を得る者を恐れ、この3つの部品を
クライム、カルラド、ルシードの3国の近くに
封印したと記されていました。
我々は、1年の歳月をかけ、幾多の困難を乗り越えて、
それらを発見しました。
そして、今日これから幻獣討伐に向かうことになった
と言う次第で御座います。」
サール:「まさか、それに付き合えといっていますか?」
ポール:「はい、その通りで御座います。」
パイン:((幻獣と戦闘になるんだろ、危険すぎないか?))
サール:((えぇ、かなり危険だと思われますが、
幻獣召喚の場に立ち会えるなど、
今回を逃すと二度とありえないでしょう。
絶対について行くべきです。))
パイン:((サールは、賛成か、、、。
俺は、まだジェイルの事を信じていない。))
サール:((確かに、まだ何か裏があるのかもしれませんね。))
パイン:((アリスはどうなんだ?))
アリス:((んー。私はどっちでもいいかな。
それより、ローザさんの事が気になる。))
パイン:((そうだな、まずはローザさんについて
聞いてみよう。))
サール:((そうですね。))
アリス:((賛成ー。))
パイン:「ところで、ローザさんは何に関係しているのですか?」
ポール:「ローザ様のご両親に、カルラド近辺の部品の捜索を
依頼したのです。
ペンダントを入手したとの連絡があった後に、
それを持ったまま行方が分からなくなったのです。
原因は分かりません。
一昨日にローザ様が両親に会いに来られるという
連絡があり、
両親が行方不明になったことを告げました。
ローザ様はそのまま、この屋敷に向かいました。
リナ様は我々が別途連れてくるという手はずでした。
ところが、リナ様が行方不明になり、捜索していた
というわけです。」
パイン:「あの襲撃は?」
ポール:「あれは、お坊ちゃまが発案いたしました。
リナ様に味方であると印象付けるためのお芝居です。」
アリス:「えーっ、あれって、お芝居だったのー、、、。」
パイン、サール:(えっ、信じてたのか、、、。)
後に分かったことだが、ジェイル以外この件に猛反対したが、
ジェイルがそれを強行したということが多数の証言から
判明した。
パイン:「それで、ここにいたるということか、、、。
で、鉄格子で、拘束したのは何故ですか?」
ポール:「幻獣召喚に来てもらっては困ると考えたからです。」
パイン:「じゃあ、なぜ解放したのですか?」
ポール:「それは、、、。」
ポールがジェイルの方を見る。
ジェイル:「気が変わっただけだ。」
パイン:((一応つじつまは、合っているよな。))
サール:((えぇ。))
アリス:((たぶん。))
パイン:((信じてもいいのだろうか?))
サール:((信じるしか無いような気がします。))
パイン:((そうだな、嘘と疑っても出来る事は無いし、
信じるという方向で行くしかないと言う事か。))
サール:((そうですね。))
アリス:((はーい。))
パイン:「分かりました。信じます。」
ポール:「信じていただけますか。それはよかった。」
パイン:「ローザさんの両親はどうなったのでしょうか?」
ポール:「全力で捜索しているのですが、
いまだに見つかっていません。
そのペンダントを持っているということは、
あなた方のほうが知っているのではないですか?」
パインは、昨日の出来事を話した。
ポール:「なんと、そんな事が、、、。
分かりました。その件は、すぐに調べさせます。」
パイン:「ところで、ローザさんに会うことはできますか?」
ポール:「はい。いま連れて参ります。」
ポールが部屋をあとにすると、
しばらくして、1人の女性と共に現れた。
現れた女性は確かにアリスに良く似ていた。
パイン:「ローザさん?」
ローザ:「はい。」
パインはアリスとローザを見比べる。
パイン:(なるほど、良く似ているな。
これなら、姉妹と言ってもばれないだろうな。)
アリス:「はじめまして、アリスです。」
アリスはそう言うと右手を差し出した。
ローザがそれに答える。
ローザ:「はじめまして。ローザです。」
2人が握手をした瞬間、サールが横に移動する。
そして、ローザの右手の甲を見た。
サール:((あっ、ありました。蝶の形のアザ。))
3人は、胸を撫で下ろした。
3人はポールが部屋を後にしたときに、
ローザの蝶の形のアザを確認する事を話し合っていた。
もし、アザがあったら、ジェイルを信じようと、、、。
パイン:「よかった。
リナちゃんと一緒に探し回っていたんですよ。」
ローザ:「リナは無事なのですね?」
パイン:「安心して下さい。無事ですよ。」
突然、ジェイルが割って入った。
ジェイル:「感動の対面もいいのだが、
そろそろ出発しないと間に合わなくなる。
約束通り、お前達3人には、
召喚に付き合ってもらう。」
3人がお互いを確認する。
そして、代表してパインが答える。
パイン:「ああ、分かっている。」
ポールがペンダントから勾玉を外し始めた。
サールがポールに声をかける。
サール:「あのー、ポールさん。」
ポール:「なんでしょうか?」
サール:「我々が持っていたペンダントなのですが。」
ポール:「これですね。」
そう言って、ペンダントを持ち上げる。
サール:「その丸い玉と鎖の部分が要らないのなら、
返していただけませんか?」
ポールがペンダントを見る。
ポール:「これは、後から付けた物のようですね。
不要ですので、お返し致します。」
ポールが勾玉のみを外すと、丸い玉の付いたペンダントが
出来上がった。
そして、サールに渡す。
サールはそれを受け取るとアリスの方を向いて言った。
サール:「アリスさん、これを持っていてください。」
そう言って、アリスの首にかける。
アリス:「はーい。」
ポールが3つの部品を豪華な装飾の付いた箱に収める。
ポールがその箱を持ち、ジェイルの横に立った。
ジェイルが言った。
ジェイル:「よし、出発する。」
こうして、幻獣召喚の地へと向かうこととなった。